米財務省は11月7日、貿易相手国の通貨政策を分析した半期為替報告書を公表した。2023年6月までの4四半期の外国為替動向を対象としている。
https://home.treasury.gov/system/files/206/November_2023_FXR.pdf
「為替操作国」基準にかかった貿易相手国・地域はなかった。
2019年8月に中国が、2020年12月にスイスとベトナムが「為替操作国」となった。それ以降、2022年11月までの間は、基準では対象となる国があったが、米財務省の判断で実際は非認定となった。
今回は基準でも対象となる国はなかった。
米財務省は為替操作国に指定する条件として(1)対米貿易黒字の規模(2)経常黒字の規模(3)継続的な通貨売り介入――を掲げている。
従来の基準 | 2019/5より改正 | |
①重大な対米貿易黒字 | 対米貿易黒字が200億ドル(米国GDPの約0.1%) 以上 | 同左 |
②実質的な経常黒字 | 経常黒字がその国のGDPの3.0%以上 | GDPの2.0%以上 |
③外為市場に対する介入 | GDPの2%以上(ネットで)の額の外貨を繰り返し購入 (12カ月のうち、8カ月) |
同左 (12カ月のうち、6カ月) |
3基準全てに該当すれば「為替操作国」となる。次の場合、「監視リスト」に入る。
2基準に該当 & 1基準だが、前年「監視リスト」の場合
なお、中国は常時、「監視リスト」
日本は永く2項目でひっかかり、「監視リスト」に入っていた。2022年11月に1項目だけとなったが上記のルールにより「監視リスト」のままであった。前回から引き続き、「監視リスト」から外れた。
今回は、前回に続き2項目の台湾、ドイツ、マレーシア、シンガポールと、今期2項目となったベトナムと、1項目だが常時「監視リスト」の中国の合計6カ国が「監視リスト」に載った。
前回1項目だが前年に監視リストに入っていた韓国とスイスが、監視リストから外れた。
なお、③「外為市場に対する介入」でひっかかったのはシンガポールだけであった。
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3基準 |
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2基準 |
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1つだが前年に監視対象 | 丸数字は問題となった項目 | |||||
日本 | 中国 | 韓国 | 台湾 | ドイツ | スイス | インド | アイルランド | ベトナム | イタリア | マレーシア | シンガポール | タイ | メキシコ | |
2016/4 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ー | ー | ー | ー | ー | ー | ー | ー | ー |
2016/10 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ー | ー | ー | ー | ー | ー | ー | ー |
2017/4 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ー | ー | ー | ー | ー | ー | ー | ー |
2017/10 | 〇 | 〇 | 〇 | ー | 〇 | 〇 | ー | ー | ー | ー | ー | ー | ー | ー |
2018/4 | 〇 | 〇 | 〇 | ー | 〇 | 〇 | 〇 | ー | ー | ー | ー | ー | ー | ー |
2018/10 | 〇 | 〇 | 〇 | ー | 〇 | 〇 | 〇 | ー | ー | ー | ー | ー | ー | ー |
2019/5 |
〇 ①② |
〇 ① |
〇 ② |
ー | 〇 ①② |
ー |
ー |
〇 ①② |
〇 ①② |
〇 ①② |
〇 ①② |
〇 ②③ |
ー | ー |
2019/8 | 操作国 | |||||||||||||
2020/1 | 〇 ①② |
〇 ① |
〇 ①② |
ー | 〇 ①② |
〇 ①② |
ー |
〇 ① |
〇 ① |
〇 ①② |
〇 ①② |
〇 ②③ |
ー | ー |
2020/12 | 〇 ①② |
〇 ① |
〇 ①② |
〇 ①② |
〇 ①② |
操作国 | 〇 ①③ |
ー | 操作国 | 〇 ①② |
〇 ①② |
〇 ②③ |
〇 ①② |
ー |
2021/4 | 〇 ①② |
〇 ① |
〇 ①② |
操作国 非認定 |
〇 ①② |
操作国 非認定 |
〇 ①③ |
〇 ①② |
操作国 非認定 |
〇 ①② |
〇 ①② |
〇 ②③ |
〇 ①② |
〇 ①② |
2021/12 | 〇 ①② |
〇 ①② |
〇 ①② |
操作国 非認定 |
〇 ①② |
〇 ①③ |
〇 ①③ |
〇 ② |
操作国 非認定 |
〇 ①② |
〇 ①② |
〇 ②③ |
〇 ①② |
〇 ①② |
2022/6 | 〇 ①② |
〇 ① |
〇 ①② |
〇 ①② |
〇 ①② |
操作国 非認定 |
〇 ① |
ー | 〇 ① |
〇 ① |
〇 ①② |
〇 ②③ |
〇 ① |
〇 ① |
2022/11 | 〇 ① |
〇 ① |
〇 ①② |
〇 ①② |
〇 ①② |
操作国 非認定 |
ー ① |
ー | ー ① |
ー ① |
〇 ① |
〇 ②③ |
ー ① |
ー ① |
2023/6 | ー ① |
◯ ① |
◯ ① |
◯ ①② |
〇 ①② |
◯ ② |
ー ① |
ー ② |
ー ① |
ー ① |
〇 ①② |
〇 ②③ |
ー ① |
ー ① |
2023/11 | ー ① |
◯ ① |
◯ ① |
◯ ①② |
〇 ①② |
◯ ② |
ー ① |
ー ② |
◯ ①② |
ー ① |
〇 ①② |
〇 ②③ |
ー ① |
ー ① |
今回「監視国」から外れた韓国の中央日報は下記の通り報じている。
歓迎すべき知らせのようだが必ずしもそうではない。ふたを開けてみれば韓国の輸出が減った上に、ドル防波堤である外貨準備高を減らした結果のためだ。
各国の状況 中国のみ、常時監視。
赤字が基準を超えたもの。
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