OPECプラスは11月30日、オンライン形式で閣僚級会合を開き、現行の協調減産態勢を維持することで合意した。
半年に1回の閣僚級会合では加盟国の生産枠を引き下げる追加の協調減産に踏み切れるかどうかが焦点だった。事前の折衝でサウジなどが中心となり追加の協調減産を模索していた。
これに対し、アフリカの産油国、ナイジェリアとアンゴラが反発した。
ナイジェリアの2024年の生産枠(138万バレル)は2023年の174万バレルから大幅に削減されることが決まっているが、足元の生産量はすでに枠の上限に迫っており、これ以上の減産には同意できない状況である。
アンゴラも状況は似ており、OPEC脱退も辞さないほど激しく反発していたという。
付記
減産に反発したアンゴラは12月21日にOPEC 脱退を決めた。「OPECにとどまっても何も得られない。自国の利益を守るために脱退を決断した」としている。
アンゴラの脱退によって、OPECの加盟国は12か国となる。
アンゴラの原油生産量は日量およそ110万バレルとOPECの中でのシェアは大きくないため、生産量全体への影響は限定的とみられる。
サウジアラビアの要請を受け、OPECプラス全体の協調減産が議論されたが、各国の足並みが整わず、見送りとなった。「減産で価格下支えを図りたいサウジアラビアなどと、今の価格で多く売りたい一部産油国の思惑のずれが大きい」とされる。
協調減産は見送りになったが、サウジアラビアなど有志国は現状の国際石油市場と原油価格の動向、今後の国際石油需給バランスの展望を踏まえ、2024年1~3月期に日量計約220万バレルの自主減産を行うことを決めた。
220 万B/D 減産の内訳は次の通りで、減産は来年1月1日から3月末まで実施されることとなっている。
Saudi Arabia:1,000千バレル/日、Iraq:223千バレル/日、UAE:163千バレル/日、Kuwait:135千バレル/日、Kazakhstan:82千バレル/日、Algeria:51千バレル/日、Oman:42千バレル/日、合計 1,696千バレル/日
加えて、ロシアは2023年5~6月の輸出水準から500千バレル/日分の輸出を削減する。内訳は原油が200千バレル、精製油が200千バレルとなっている。
合計で約220万バレル/日となる。
これはOPECプラスとしての発表ではなく、各国の個別の発表で、あくまで加盟国が自主的な取組みとして追加減産を行う意思を表明したものである。
また、4月以降は市場の状況を見据えつつ、徐々に自主減産量を縮小していく方向性も同時に示されている。
なお、OPECプラスは、産油国トップ10入りしているブラジル(生産量は日量約320万バレル)を加盟国として招待することを決めた。OPECプラスの減産をOPECプラスに属していない産油国の増産が打ち消す構図になっていることが背景にある。
ブラジルの鉱業・エネルギー相は、ブラジルが来年1月に協力憲章に参加すると述べた。憲章は全ての産油国に開かれているもので、加盟国に対する拘束力はなく、対話と意見交換のためのプラットフォームを提供するもの 。OPECプラスに参加することになったブラジルが協調減産に応じるかどうかも未知数である。
OPECとロシアなど11の非加盟の主要産油国(ロシア、メキシコ、オマーン、アゼルバイジャン、カザフスタン、バーレーン、ブルネイ、赤道ギニア、マレーシア、スーダン、南スーダン)は2016年12月10日、ウィーンのOPEC本部で閣僚会合を開き、協調減産で合意した。
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「OPECプラス」は2022年10月5日に閣僚級会合を開き、11月の日量200万バレル減産で合意した。
OPECプラスは新型コロナウイルス禍の2020年5月、世界需要の1割に当たる日量970万バレルの協調減産に踏み切った。その後、減産量を減らしてきて、9月には10万バレルの増産としたが、景気減速などで需要が減るとの見方が強まり、前回の9月会合で10月に日量10万バレル減産することを決めた。
当初、100万バレルの減産と噂されたが、一気に200万バレルとした。200万バレル減産は世界需要の2%に当たり、2020年の970万バレル減産以来の規模になる。
2022/10/6 OPECプラス、11月は日量200万バレル減産
OPECプラスは2023年4月2日、5月から日量115万バレルの減産を実施すると発表した。市場の安定を維持するために供給を据え置くとこれまで約束していたため、協調減産は意表を突く格好となった。ロシアが3月から単独で実施している減産を加えると、昨年末比で日量 165万バレルの減産となる。
2023/4/3 サウジ、日量50万バレルの減産を表明、クウェートやUAEも追随、OPECプラスとして昨年末比 165万バレル(計365万バレル)の減産
「OPECプラス」は2023年6月4日、今後の原油の生産量を決める会合を開き、日量200万バレルの協調減産を2024年末まで延長することで合意した。
サウジアラビアは自主的に7月に日量100万バレルを追加で削減すると表明した。5月からの50万バレル減産に追加するもの。
2023/6/6 OPECプラス、協調減産を2024年まで延長
これらにより、現状は下記のとおりとなっている。
2022/11
協調減産2023/5 2023/7 2024/1-3
自主減産
自主減産
サウジアラビア OPEC+ 全体 500 +1,000 1,000 イラク 211 223 UAE 144 163 クウェート 128 135 カザフスタン 78 82 アルジェリア 48 51 オマーン 40 42 ガボン 8 小計 1,157 ロシア (輸出削減) 500 500 合計 2,000 1,657 2,657 2,196 総計 2,000 3,657 4,657
2022 年11 月から実施されている 200 万B/D の協調減産は市場の状況に鑑み、2024 年末まで延長することが定まっていた。今回、それを確認した。
原油価格をさらに下支えするものとして、追加の自主減産が行われているが、自主減産の期間は 2023 年末までとなっており、その行方が市場関係者の注目するところとなっていた。
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