元徴用工訴訟、日本企業の賠償命令確定

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戦時中に日本本土で働かされた韓国の元徴用工7人が日本製鉄(旧新日鉄住金)を相手に損害賠償を求めた訴訟の上告審で、韓国大法院(最高裁)は12月21日、同社に賠償を命じた高裁判決を支持し、原告の勝訴が確定した。

女子勤労挺身隊として動員された韓国人3人と遺族1人が三菱重工業へ損害賠償を求めた訴訟も、賠償を命じた判決が確定した。

一、二審では原告が製鉄所や飛行機工場で過酷な労働を強いられたことを認め、元徴用工に対して1人当たり1億ウォン(約1100万円)、元挺身隊員には1人当たり1億~1億5千万ウォン(約1650万円)の賠償を命じ、日本企業側が上告していた。
今回の裁判の元徴用工や元挺身隊員はいずれも故人となり、遺族らが裁判を引き継いでいる。

日本政府は元徴用工の補償問題は1965年の日韓請求権協定で完全かつ最終的に解決したとの立場をとる。しかし、韓国大法院は2012年に「植民地支配に関わる不法行為の損害賠償については請求できる」との解釈を提示した。

韓国大法院は2018年10月、日本製鉄強制徴用の被害者が出した損害賠償訴訟で被害者の勝訴を確定した。日本製鉄(旧新日鉄住金)に対し、戦時中に日本の工場に動員された4人の韓国の元労働者に1人あたり約1000万円の賠償を命じた。

大法院判決(11対2の決定)は、戦時中に行われた日本統治下の朝鮮半島から日本本土の工場などへの動員は「日本政府の不法な植民地支配や、侵略戦争の遂行と結びついた日本企業の反人道的な不法行為」と認定していた。

原告側は2019年1月と3月の2回にわたり、日本製鉄とPOSCOのJVのPOSCO-NIPPON STEEL RHF JV の株式9億7300万ウォン(約8700万円)相当を差し押さえた。

大邱地裁浦項支部は2021年12月30日、日本製鉄が韓国内に所有する資産、POSCOとの合弁会社「PNR」の株式の売却命令を出した。

韓国大法院は2018年11月29日、三菱重工業に対し、第2次世界大戦中に同社の軍需工場で労働を強制された韓国人の元徴用工らに対する賠償支払いを命じる判決を下した。

1件は、元女子勤労挺身隊員の女性4人と親族1人に対し、それぞれ最大で1億5000万ウォン(約1500万円)の賠償を命じた。この女性らは1944年、名古屋市にあった三菱重工の航空機製作工場で、無償労働を強制されたと話している。
もう1件の訴訟では、原告6人(うち生存者2人)にそれぞれ8000万ウォン(約800万円)の賠償支払いが命じられた。

韓国の大田地裁は2019年3月25日、三菱重工業の商標権2件と、三菱重工業が韓国国内に保有中の770件余りの特許権のうち 発電技術特許などの特許権6件の差し押さえを決定した。

韓国大法院は2022年8月にも三菱重工業が韓国国内にもつ資産の売却命令を確定させる予定であったが、(恐らく韓国政府の介入で)最終判断をしないまま、現在に至っている。

元徴用工や元挺身隊員をめぐる大法院判決は2018年以来5年ぶり。  韓国最高裁では元徴用工や元挺身隊員を巡り、今回の2件を含め9件の訴訟が係争中。最高裁は今月28日、三菱重工を訴えた2件、日立造船を訴えた1件についても判決を言い渡す。

元徴用工や元挺身隊員をめぐる大法院判決は2018年以来5年ぶり。  韓国最高裁では元徴用工や元挺身隊員を巡り、今回の2件を含め9件の訴訟が係争中。最高裁は今月28日、三菱重工を訴えた2件、日立造船を訴えた1件についても判決を言い渡す。

付記

戦時中に強制労働させられたとして元徴用工と元挺身隊員が起こした裁判で、韓国の最高裁は12月28日、三菱重工業を訴えた2件、日立造船を訴えた1件についてそれぞれ上告を棄却し、企業に賠償を命じた2審判決が確定した。


付記

日立造船の敗訴が確定した訴訟で、同社が2019年に賠償金相当額を「供託」していたことが判明した。

同社は2審で敗訴した直後の2019年1月に「強制執行を防ぐため」として、6000万ウォン(約660万円)を韓国の裁判所に供託した。

原告側は訴訟の賠償金として供託金を受け取る手続きを行う方針。

供託金を原告側が受けとれば、日立造船が賠償金を支払ったことになる。

付記

ソウル中央地裁は2024年1月23日、日立造船被害者のLさん側が供託金を賠償金として受け取るために申し立てていた差押取立命令の申立てを認めた。

韓国最高裁は2024年1月11日、戦時中に八幡製鉄所(現在の北九州市)で強制労働させられたとする元徴用工の遺族らが日本製鉄(旧新日鉄住金)を相手取り損害賠償を求めた訴訟で、日本製鉄の上告を棄却、約1億ウォン(1100万円)の賠償を命じる判決が確定した。2023年12月以降、最高裁の判断が下るのは3回目で、いずれも日本側が敗訴している。

ーーー

韓国の朴振外相は2023年3月6日、元徴用工問題の解決策を正式に発表した。韓国最高裁が日本企業に命じた賠償金の支払いを韓国の財団が肩代わりする。

骨子:

・ 韓国政府傘下の公益法人「日帝強制動員被害者支援財団」が原告に判決金相当の金額を支払う。

新日鉄住金(現・日本製鉄)と三菱重工業を相手取った3件の訴訟で判決が確定している。韓国外務省によると賠償対象となる元徴用工は故人を含め15人いる。

聯合ニュースによると15人分の判決金と利子の総額は40億ウォン(約4億円)規模になる。遺族を含む原告に支給する。

・ 係争中の訴訟も、原告の勝訴が確定した場合は財団から支給する。

韓国の裁判所では、元徴用工らが日本企業に賠償などを求めた同様の訴訟が多数、係争中。

・ 肩代わりの財源は民間の自発的貢献により調達

1965年の日韓請求権・経済協力協定に基づく日本の経済協力で恩恵を受けた韓国鉄鋼大手ポスコなどが想定されている。

付記 韓国鉄鋼大手ポスコは3月15日、元徴用工を支援する韓国政府傘下の財団に40億ウォン(4.1億円)を拠出すると表明した。

被告の日本企業の資金拠出は前提としていない。日本政府は、元徴用工問題は1965年の協定で最終的に解決済みとの立場で一貫し、大法院判決は国家間の約束を覆す「国際法違反」と主張してきた。被告の日本企業の拠出がなければ、日本側も受け入れが可能となる。

別途、経団連と、韓国側のパートナーとなる全国経済人連合会は共同で「未来青年基金」(仮称)を設立する予定で、基金は留学生への奨学金支給など若者世代の交流増進に活用されるという。

・ 原告に判決金の受け取りに理解・同意を求める努力を継続する。

・ 歴史問題の真の解決に向けた研究と、未来世代に対する教育を強化


朴外相は「膠着した日韓関係をこれ以上放置せず、国益の次元で悪循環の輪を断ち切る」と話した。「これが最後の機会だと思う」と強調した。小渕恵三首相と金大中大統領による1998年の日韓共同宣言を「発展的に継承する」と言及した。

日本側には「日本政府の包括的な謝罪、日本企業の自発的な寄与で呼応することを期待する」と求めた。経団連と韓国の全国経済人連合会(全経連)による共同事業を念頭に「両国の経済界の自発的な寄与を検討中と聞いている。日本政府も反対しないという立場と理解している」と明らかにした。

2023/3/9 韓国、元徴用工解決策を発表 (過去の経緯も)

韓国政府は上記に基づき、政府傘下の財団が賠償金相当額を支払う「第三者弁済方式」による手続きを進めている。 但し、一部の原告は政府案を拒否している。

今回勝訴が確定した原告らに対しても適用する方針とされる。


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