柏崎刈羽原発の運転禁止解除

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原子力規制委員会は12月27日、テロ対策の不備による東京電力柏崎刈羽原発への是正措置命令を解除した。事実上の運転禁止命令が解除された。

2年8か月ぶりに再稼働に向けた準備が再開されることになり、今後は、新潟県など地元自治体の同意が焦点となるが、地元では、失態を繰り返す東電への不信感が根強く、再稼働は全く見通せない。

新潟県は約11年をかけて福島事故の独自検証を続けてきたが、花角知事は「現時点で結論はない」と慎重な姿勢を崩していない。 知事は、県民の意思を確認するとして、知事選挙を行うことも選択肢の一つだという認識を示していて、最終的な判断が注目される。

柏崎刈羽原発の周辺住民らが東電を相手取り、原発の運転差し止めを求めた訴訟の第42回口頭弁論が12月25日、新潟地裁であったが、原告側は、東電が2002年のトラブル隠しの発覚以降、福島第1原発事故を経ても不正や不祥事を繰り返しているとし、「東電に原発を運転する適格性はない」と訴えた。

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東電は2013年9月に柏崎刈羽原発の6号機と7号機の審査を規制委に申請し、2017年12月に安全審査に合格した。 (1~5号機は未申請)

しかし、2020年以降、大きな問題が相次いで発生した。

2020年9月に社員が中央制御室に不正に入室する問題が発生した。

東電は7号機の新規制基準に基づく安全対策工事が2021年1月12日に完了したと発表したが、その後、施行ミスや未完のものが次々と見つかり、2月26日に検査日程を「未完」と変更した。他の箇所でも 問題がないか点検する。

さらに、2020年3月以降、テロリストなどの侵入を検知する複数の設備が壊れ、その後の対策も十分機能していなかったことが明らかになった。

原子力規制委員会は2021年3月16日、柏崎刈羽原発の核物質防護設備の機能一部喪失について、安全重要度評価 を「赤」とし、3月23日に「対応区分:第4区分」として扱うことを伝えた。

核セキュリティー分野で「赤」という判定は、日本で初めてというだけでなく、同種の検査制度を20年にわたって運用しているアメリカでも近年例がない という。
東電の核セキュリティーは最低レベルであり、原子力発電事業者としての適格性が問われる。

原子力規制委員会は4月14日、柏崎刈羽原発のテロ対策の不備を問題視し、原発再稼働に必要な核燃料の移動や装塡を禁じる行政処分の是正措置命令を決定した。規制委は27項目の是正を東電に要請した。

2021/3/29 柏崎刈羽原発の再稼働、見通しつかず

東京電力は2021年12月24日、7号機の消火設備の配管でずさんな溶接が74カ所見つかったと発表した。1000カ所以上の溶接を本来の仕様通りに再施工する。再施工の進捗をみながら、すでに30カ所の不適切溶接を確認している6号機の追加調査も検討する。

2022/1/5 東京電力柏崎刈羽原発でまたトラブル

その後、事務局の原子力規制庁が東京電力による再発防止の取り組みなどを検査してきた結果、12月に提出された報告書案では「自律的に改善できる仕組みが定着しつつある」と評価され、これを受けて規制委員会は、現地調査や東京電力の社長との面談を行い改善状況を確認してきた。

その結果、命令解除を判断する条件はそろったとして、27日の定例会合で、最終的に判断する方針を決めた。

テロ対策については、規制委が指摘した27項目の課題が是正され、劣化の兆候を自ら発見して改善する仕組みが新たに整備されたとした。規制委は今後も通常の検査で監視を続ける。

適格性については、東電が柏崎刈羽の保安規定で約束した「7項目」にのっとって活動していると判断した。

1)福島第一原発の廃炉をやりきる覚悟と実績を示す
2)柏崎刈羽原発の安全対策に必要な投資を行い、安全性向上を実現
3) いかなる経済的要因があっても安全性の確保を前提とする
4) 安全を最優先した経営上の判断を行い、内容を速やかに発信
5) 規制基準の順守にとどまらず、自主的に発電所の安全性を向上する
6) 社長をトップとして原子力安全の責任を担う
7) 関係部門の異なる意見や知見を一元的に把握し、発電所の安全性を向上する

12月27日に開かれた会合で、規制委員会は報告書案を了承し、自律的な改善が見込める状態であることが確認できたとして命令を解除することを全会一致で決めた。

「対応区分を「第4区分」から「第1区分」に変更することが決定された。
 また、原子炉設置者としての適格性について再度確認した。

しかし、規制委は12月20日の会合で、「条件付き」の判断であることを強調した。テロ対策の不備は一定程度改善したとする一方、委員からは今後も厳しく監視していく必要があるとの声が相次いだ。トラブルが続いた東電の体質に、不信感を拭いきれていないことをにじませた。

新たな課題が生じても自律的に対処できるようになったと判断したものの、「普通の状態になっただけ。これがスタート」(山中伸介委員長)など継続に向けた努力を求める意見も相次いだ。

「規制委の判断は、東電にお墨付きを与えたことにはならない」、「東電が生まれ変わったとか、非の打ち所のない組織になったと認定することではない」との発言もあった。

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