TOPPAN、JOLED能美事業所の土地・工場を購入、次世代半導体パッケージの開発・量産ラインを構築

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TOPPANは11月28日、有機ELディスプレイ開発・製造のJOLEDから能美事業所の土地・建屋を購入する契約を締結した。


今後、購入した能美事業所で、主にデータセンターのサーバー向けや生成AI向けの需要増などでさらに伸長が期待できる高密度半導体パッケージであるFC-BGA(Flip Chip-Ball Grid Array)のさらなる高速伝送やチップレットに対応する次世代技術開発および量産ラインの構築を行い、2027年以降の稼働を予定している。TOPPANの手掛ける既存のエレクトロニクス製品の生産も検討している。

FC-BGA(Flip Chip-Ball Grid Array) サブストレートは、LSIチップの高速化、多機能化を可能にする高密度半導体パッケージ基板で、TOPPANは、微細加工技術とビルドアップ配線板技術を独自に発展させた超高密度配線構造のサブストレートを開発、半導体プロセスの微細化に対応した製品を提供している。

PCやゲーム機向けのマイクロプロセッサやグラフィックプロセッサをはじめ、サーバー、AI、ネットワーク機器向けのハイエンドプロセッサ、高品質の車載用SoCなど、幅広い用途向けLSIの多彩な要求に対し、サブストレートの設計から製造まで顧客のニーズをトータルにサポートしている。

チップレットは、大規模な回路を複数の小さなチップに個片化して1つのパッケージに収める技術。

TOPPANは現在、新潟工場でFC-BGAの生産能力拡大を進めているが、旺盛な需要に対して将来的には新潟工場のみでは拡張余地がなく、新たな生産拠点の確保を検討していた。JOLED能美事業所は、次世代半導体パッケージの製造工程に求められる条件を満たしており、売買契約の締結となった。

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JOLEDは有機 EL ディスプレイの量産開発加速及び早期事業化を目的として、ソニー及びパナソニックの有機EL ディスプレイの開発部門を統合して、2015 年1 月に事業を開始した。


ジャパンディスプレイはJOLEDの設立時に株式15%を取得したが、2020年3月に全株式を譲渡し、現在は資本関係がない。

JOLEDは2019 年11月には、能美事業所において、世界初の印刷方式有機 EL ディスプレイ量産ラインの稼働を開始し、高性能・高品質な有機 ELディスプレイを、ハイエンドモニター、医療用モニター、車載向け等に生産するとともに、フレキシブルディスプレイやフォルダブルディスプレイの実用化に向けた研究開発も進めてきた。

しかしながら、安定した生産に想定以上のコスト・時間を要したほか、世界的な半導体不足による影響に加え、高性能・高品質ディスプレイ需要の伸び悩みや価格競争の激化により同社を取り巻く状況は厳しさを増した。

2020年6月、中国ハイテク企業TCL Tech傘下のディスプレイパネルメーカー、TCL華星光電技術(TCL CSOT)と資本業務提携契約を締結したが、収益が伸び悩むとともに、資金流出が続いた。

JOLEDの業績推移
売上高営業利益純利益利益剰余金
2018/3 5600万円 -149.19億円 -147.84億円
2019/3 14.42億円 -247.53億円 -259.04億円
2020/3 18.57億円 -284.07億円 -372.53億円
2021/3 59.08億円 -310.65億円 -877.85億円
2022/3 56.55億円 -211.18億円 -239.26億円 -1197.87億円

このまま自力で事業継続した場合、能美事業所や千葉事業所の撤退費用を捻出することも困難となるため、裁判所の関与の下で事業の再生を図ることがもっとも適切であると判断し、2023年3月27日、東京地方裁判所に民事再生手続き開始の申し立てを行ったと発表した。負債総額は約337億円。

JOLEDが培った有機発光ダイオード(OLED)ディスプレーの技術や知的財産権はジャパンディスプレイが継承することなどで合意 、7月18日、10億円で取得した。

技術開発ビジネス事業については、ジャパンディスプレイの支援の下、再建を図る。

他方、製品ビジネス事業(製造・販売部門)についてはこれ以上継続することは困難であることから、能美事業所(石川県能美市)、千葉事業所(千葉県茂原市)は閉鎖し、同事業から撤退することとした。

2023/3/29 有機EL事業のJOLED、民事再生手続き

能美事業所は元々、ジャパンディスプレイ(JDI)の工場であったが、2017年2月に停止、2018年6月に産業革新機構が200億円で買収し、7月1日付でJOLEDに売却されたもの。

2018/4/3  ジャパンディスプレイ、550億円を調達 

今回、TOPPANがこれを購入した。買収額やその後の設備投資額は明らかにされていない。

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なお、JOLEDから有機EL事業を引き継いだジャパンディスプレイ(JDI)は、元々液晶パネルメーカーで、AppleのiPhone向けが中心だが、液晶パネルの販売不振で稼働が低迷し、債務超過となったが、独立系投資顧問のいちごアセットマネジメントの救済で累損を一掃した。

2022/1/14 JDI、減資で累損一掃

2023/4/13 ジャパンディスプレイ、世界第3位のディスプレイメーカー惠科股份(HKC)との戦略提携覚書締結 

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