米国商務省、CHIPS法に基づく半導体メーカーへの最初の補助金支給

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バイデン大統領は2022年8月9日、国内半導体産業支援法「CHIPS法」案に署名し、同法が成立した。

法案の総額は約5年で約2,800億ドルとなり、その多くはエネルギー省や商務省、国立科学財団(NSF)、国立標準技術研究所(NIST)といった連邦政府機関の研究開発プログラムなどへの予算の充当となる。

産業界向けのCHIPSに関する5年間で527億ドルの予算の内訳は次のとおり。

  1. 商務省製造インセンティブ(390億ドル):半導体の設計、組み立て、試験、先端パッケージング、研究開発のための国内施設・装置の建設、拡張または現代化に対する資金援助。
       うち、60億ドルは直接融資または融資保証に使用可能。
     
  2. 商務省研究開発(110億ドル):商務省管轄の半導体関連の研究開発プログラムへの予算充当。
  3. その他下記(27億ドル)

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商務省はこの390億ドルのインセンティブの実質第1号として、2月にGlobalFoundriesに15億ドルを支給する。

2023年12月にNew HampshireのBAE Systems の施設に35百万ドル、2024年1月にMicrochip Technologyに162百万ドル支給を発表したが、本格的な支給はこれが最初。

GlobalFoundriesは米国の半導体製造企業で、ファウンドリとしてはTSMC、Samsungに次いで世界第3位グループ。

半導体受託製造シェア(2022/10~12、台湾トレンドフォース情報)

TSMC 台湾 58.5%
サムスン電子 韓国 15.8%
UMC (聯華電子) 台湾 6.3%
GlobalFoundries 米国 6.2%
その他 13.2%

2008年にAdvanced Micro Devices(AMD)が半導体製造部門を分社化し、The Foundry Companyが発足した。

2009年3月にアブダビ政府傘下の投資会社 Advanced Technology Investment Co. (ATIC)が65.8%、AMDが34.2%出資して、これをGlobalFoundries とした。

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GlobalFoundriesは商務省との合意に基づいて、ニューヨーク州Maltaに新しい半導体生産施設を建設し、同地およびバーモント州Burlingtonの既存施設を拡張する。

この15億ドルのGlobalFoundries助成金には、16億ドルの融資が付随し、これにより2つの州全体で125億ドルの全体的な投資が生み出される見込みという。

商務長官は報道陣に対し、「GlobalFoundriesがこれらの新しい施設で生産するチップは、われわれの国家安全保障にとって不可欠なチップです」と述べた。

商務長官は今月、多数の応募者と積極的に協議中であり、3月末までに複数の発表を行う予定だと語った。ロイターに対し、「これらの企業とは非常に複雑で困難な交渉をしている。これらは非常に複雑で、この国でこれまでになかった規模と複雑さの施設だ。TSMC、サムスン、インテルなどが提案している施設だ。これらは新世代の投資であり、これまでにこの国で行われたことのない規模、複雑さだ」と述べた。

GlobalFoundriesのチップは、衛星や宇宙通信、防衛産業、車両の盲点検知や衝突警告、Wi-Fiや携帯電話などに使用されている。GlobalFoundriesのCEOは声明で、「産業全体として、今後は米国製チップの需要を増やし、優れた米国の半導体技術労働力を育成することに注力する必要がある」と述べている。

GlobalFoundriesは、大規模なグローバルな製造拡張の一環として、2022年9月にシンガポールに半導体製造工場を開設した。40億米ドルを投じた同工場は2万3000m2のクリーンルームを備え、年間45万枚(300mmウエハー換算)の生産能力を有する。

今回のニューヨーク州Maltaの新施設拡張により、GMを含む自動車部品メーカーや製造業者にチップの安定供給が確保される。
GlobalFoundriesとGMは2月9日に、GMが米国製プロセッサを確保するための長期契約を発表した。GMのマーク・ロイス社長は、「GlobalFoundriesのニューヨークへの投資は、GMが需要に対応し、米国の自動車革新を支援するための堅実な半導体供給を確保する」と述べている。

Maltaの新施設では、現在米国内で製造されていない高付加価値のチップが生産される予定。

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