太平洋戦争中の「徴用」をめぐる問題で、日立造船に賠償を命じた判決が韓国で確定した裁判の原告側は、日立造船が裁判所に預けた供託金を賠償にあてるために受け取ったと明らかにした。一連の裁判で、原告側に日本企業の資金が渡るのは初めて。
供託金は、日立造船が韓国国内にある資産の差し押さえなどの強制執行を防ぐためのもので、6000万ウォン、日本円にして670万円余りが裁判所に預けられていた。
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韓国最高裁は2023年12月28日、戦時中に朝鮮半島から動員された元徴用工や朝鮮女子勤労挺身隊員らが三菱重工業と日立造船に損害賠償を求めた計3件の訴訟で、企業側の上告をいずれも棄却した。両社に賠償を命じた一、二審判決が確定した。
名古屋の航空機工場で働いた元挺身隊員ら2人と広島に動員された元徴用工14人が三菱重工を訴えた計2件と、大阪に動員された元徴用工1人が日立造船を訴えた1件。原告側の弁護士は、計17人に対する賠償と遅延利息を合わせた総額はおよそ30億ウォン(約3億2800万円)に上るとの見方を示した。
最高裁は一連の訴訟で、戦時中の動員は「日本の不法な植民地支配と直結する反人道的な不法行為」であり、被害者の慰謝料請求権は日韓請求権協定の対象外との判断を踏襲している。12月21日には、2018年の最高裁判決から3年以内に提訴した場合は賠償請求権の消滅時効は成立しないという趣旨の判断も示した。
このうち、日立造船の敗訴が確定した訴訟で、同社が2019年に賠償金相当額を「供託」していたことが判明した。
2019年1月11日にソウル高裁は日立造船の控訴を棄却する判決を言い渡したが、日立造船はこの直後に「強制執行を防ぐため」として、6000万ウォン(約670万円)を韓国の裁判所に供託した。同社の在韓資産が没収されることを避けるためである。
今回の最高裁の判決を受け、原告側はこの供託金を訴訟の賠償金として受け取る手続きを行った。
ソウル中央地裁は2024年1月23日、日立造船被害者のLさん側が供託金を賠償金として受け取るために申し立てていた差押取立命令の申立てを認めた。
今回、原告が実際に供託金を賠償に当てるために受け取ったことが明らかになったわけで、日立造船が賠償金を支払ったことになる。
原告の代理人は「日本企業によって事実上の賠償がなされる点に意味がある」と説明した。
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日本政府は、元徴用工問題は日韓請求権協定によって「請求権問題は完全かつ最終的に解決された」という立場で一貫している。
新日鉄住金(現・日本製鉄)、三菱重工業など日本企業は、日本政府の見解をもとに、支払いに応じていない。
それに対し、大法院判決は「請求権協定は植民地支配の不法性を前提としていないから、不法性を前提とする損害賠償請求権は協定の対象外であり、成立する」という論理を展開している。
韓国の朴振外相は2023年3月6日、元徴用工問題の解決策を正式に発表した。韓国最高裁が日本企業に命じた賠償金の支払いを韓国の財団が肩代わりする。
骨子: ・ 韓国政府傘下の公益法人「日帝強制動員被害者支援財団」が原告に判決金相当の金額を支払う。
・ 係争中の訴訟も、原告の勝訴が確定した場合は財団から支給する。
・ 肩代わりの財源は民間の自発的貢献により調達
・ 原告に判決金の受け取りに理解・同意を求める努力を継続する。 ・ 歴史問題の真の解決に向けた研究と、未来世代に対する教育を強化 |
朴外相は「膠着した日韓関係をこれ以上放置せず、国益の次元で悪循環の輪を断ち切る」と話した
2023/3/9 韓国、元徴用工解決策を発表
日本政府の「元徴用工問題は1965年の協定で最終的に解決済み」との考えに基づき、日本企業はこれに基金を拠出していない。
原告の多くはここから判決金相当の金額を受けたが、それを拒否する原告もいる。原告への支払により、基金の枯渇が懸念されている。
この状況下で、日立造船が実質的に賠償金を支払うという事態が発生した。
日本政府は、韓国政府が示した解決策の枠組みには影響しない例外的なケースとみている。
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