公取委は3月7日、日産自動車に対し、下請代金支払遅延等防止法第4条第1項第3号(下請代金の減額の禁止)の規定に違反する行為が認められたとし、同社に勧告を行った。
それによると、同社はコスト削減目標を達成するため、2021年1月から2023年4月までの約2年間、部品メーカーなど下請け事業者36社に対し、一度決まった支払い代金から数%を「割戻金」として減額していた。
総額30億2368万円を減額しており、1社当たりの最高額は約11億円だった。
なお、日産は減額分をすでに下請け業者へ支払い、割戻金の運用も廃止したとしている。
減額の幅は下請け事業者の意向も踏まえて両社間で協議して決めており、覚書として書面にも残していた。
下請法では、下請け側に責任がある場合などを除き、両社間の合意があっても発注金額から減額することを禁じている。
第四条 親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。
三 下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請代金の額を減ずること。
今回違反の認定をした期間は約2年間だが、関係者によると、同様の行為は約30年前には行われており、社内で常態化していたとみられる。勧告では、経営責任者が中心となって順法管理体制の整備をはかることも求めた。
公取委によると、自動車・トラック・バス製造業で減額に関する下請法違反の勧告は公表を始めた2004年以降で14件目で、日産と同様に発注代金から「一時金」や「口銭」の名目で不当に支払金額を減額する事例も目立つといい、日本自動車工業会に再発防止を申し入れる。
業界団体に対する周知・啓発活動
自動車製造業においては、近年、本件と類似の違反行為が生じ、公正取引委員会が下請法に基づく勧告を行っている。また、下請法に違反するおそれのある行為についても継続して生じており、指導等の対象ともなっている。
公正取引委員会としては、このような状況を踏まえ、引き続き、自動車製造業における下請法違反行為に対し、厳正に対処していくとともに、改めて業界団体への周知等を通じた啓発活動を行っていくこととしている。
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公取委は2022年12月27日、下請け企業などとの間で原燃料費や人件費といったコスト上昇分を取引価格に反映する協議をしなかったとして佐川急便や全国農業協同組合連合会(JA全農)、デンソーなど13社・団体の名前を公表した。
こうした行為は独占禁止法の「優越的地位の乱用」に該当する恐れがある。
下請け側が価格転嫁を要請していなくても、立場の強い発注側が自発的に協議するよう求め、社名公表に踏み切った。
3社・団体はほかに、三協立山、大和物流、東急コミュニティー、豊田自動織機、トランコム、ドン・キホーテ、日本アクセス、丸和運輸機関、三菱食品、三菱電機ロジスティクスで、公取委は法令違反を認定したわけではないと説明している。
独禁法の運用方針は
①受注企業と発注企業の価格交渉の場で価格転嫁の必要性について協議しない、または
②価格転嫁の要請があったのに拒否し、その理由を回答しない
のいずれかの場合で取引価格を据え置けば「優越的地位の乱用」に該当する恐れがあると明記しており、今回は①に該当すると判断した。
このほか①または②に該当する4030社に対し懸念事項を示した注意喚起文書を送付した。
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