鉄道で超電動送電システム

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鉄道総合技術研究所は、電気を無駄なく電車に送る「超電導送電システム」を伊豆箱根鉄道の一部区間で稼働させる。営業路線への導入は世界で初めて。

伊豆箱根鉄道の駿豆線(三島ー修善寺)の一部区間で、送電ロスを発生せずに電気を電車に届ける超電動送電システムを稼働する。専用の送電ケーブルは冷却すると電気抵抗がゼロになる超伝導素材が用いられる。電力損失を減らせ、ブレーキ時に発生する回生電力も、より効率的に活用でき、冷却代を差し引いても、従来より5%ほど消費電力が抑えられる予定。

鉄道総研は2007頃年から開発に着手し、他の鉄道路線の営業時間外に実証実験を行ってきた。今回は営業時間内の取り組みとしては世界初となる。

付記

鉄道総合技術研究所と伊豆箱根鉄道は3月13日、「超電導送電システム」を同鉄道の一部区間で稼働させたと発表した。営業路線への導入は世界で初めて。

駿豆線の大仁駅そばに鉄道総研が開発した長さ約100メートルの超電導送電ケーブルと冷凍機、ポンプなどを設置し、13日の始発から新システムによる送電を開始した。

新システムによる送電は22日まで続ける。その後一旦停止して点検する。システムの状況を確認しながら常時稼働を目指す。

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都市鉄道をはじめとする直流電化区間では数キロメートルごとに変電所を設けて、「き電線」(饋電線)を通じて電気を送り出している。電線の電気抵抗や電車の走行によって、変電所間には電圧降下が発生する。電圧が著しく低いと電車の走行に影響を及ぶため、運行本数の多い区間では変電所を細かく設置しなければならない。

直流電気鉄道は変電所から架線に電気を送り届ける「き電線」の電気抵抗に起因する回生失効や送電損失、変電所間での電圧降下といった課題がある。


「き電線」は鉄道の架線に電力を供給するために、主に架線と並行して設けられる電力線のことである。

 NR電車線テクノ㈱

超電導材料を「き電線」に適用することで電気抵抗ゼロでの送電を可能にするのが「超電導き電ケーブル」で、その実用化によって上述の課題がなくなり、省エネルギー化、また電圧補償や変電所の負荷平準化といった様々な効果が期待される。

この超電導き電ケーブルの実用化に向けた基礎的な技術検証を主目的に、鉄道総研は2015年3月、静岡県を走る伊豆箱根鉄道の駿豆線で列車走行試験を実施、超電導き電ケーブルを液体窒素で-196度に浸積冷却して、超電導送電を行った。

田京~修善寺間の5.6kmを往復する試験電車(伊豆箱根鉄道3000系、3両編成)に超電導き電ケーブルを通じて電気を供給。国内外で初めて、営業線における超電導送電による列車走行実験に成功した 。

開発のポイント:

1) 超電導ケーブルの開発

超電導材料の評価結果をもとに超電導ケーブルを試作し、通電試験や課電試験などにより鉄道用途に必要な性能を有していることを確認している。特に通電試験においては、最大で16 kAの通電容量を実現した。

2) 接続技術

運搬上の制約から、超電導ケーブルの1本あたりの長さは500 m程度となり、都市部の変電所間隔は数kmであるため、導入の際は現場でこれを接続していく必要がある。

2022年1月、鉄道総合技術研究所が送電時の電力ロスをほとんどゼロにする超電導技術を用いた世界最長級の送電線を開発したと報じられた。この送電線は長さ1.5km、鉄道に必要な電圧1,500V、電流数百アンペアを流すことが可能という実用性の高さからも鉄道業界で注目を集めている。

3) 冷却技術

長距離にわたる超電導ケーブルを安定冷却するための冷却システム、およびその構成機器の開発を行っている。

4) 超電導き電システムを用いた走行試験

超電導き電システムを鉄道に適用するため、同システムを用いた車両の走行試験を実施した。所内の試験線で試験した後、伊豆箱根鉄道駿豆線、東京さくらトラム(都電荒川線)、東京メトロ丸ノ内線、中央線の各路線で行った。


10年後の超電導ケーブルシステム (自然エネルギー利用)

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