公正取引委員会は昨年5月以降、11万社余りを対象に、賃上げに伴う人件費の増加や原材料価格などの上昇分を適切に価格転嫁できているか、書面や立ち入りなどによる調査を実施した。
その結果、多くの取引先と協議をせずに取引価格を据え置いたことなどが確認されたとして、下記の10社の企業名を公表した。
・ イオンディライト(イオングループの施設管理会社)
・ SBSフレック(物流サービス)
・ 京セラ
・ 西濃運輸
・ ソーシン(輸送機器メーカー)
・ ダイハツ工業
・ 東邦薬品(医薬品卸)
・ 日本梱包運輸倉庫(物流サービス)
・ PALTAC(医薬品や日用品などの卸売り)
・ 三菱ふそうトラック・バス
なお、社名公表は独占禁止法又は下請法に違反すること又はそのおそれを認定したものではない。
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(2022年度)
公正取引委員会は2022年に、適正な価格転嫁の実現に向けて、事業者間取引において、下記の①又は②に該当する「協議を経ない取引価格の据置き等」が疑われる事案に関する実態を把握するため「緊急調査」を実施した。
① 労務費、原材料価格、エネルギーコスト等のコストの上昇分の取引価格への反映の必要性について、価格の交渉の場において明示的に協議することなく、従来どおりに取引価格を据え置くこと
② 労務費、原材料価格、エネルギーコスト等のコストが上昇したため、取引の相手方が取引価格の引上げを求めたにもかかわらず、価格転嫁をしない理由を相手方に回答することなく、従来どおりに取引価格を据え置くこと
この緊急調査では、受注者から申入れがないこと等を理由として、発注者からは積極的な協議の場を設けず取引価格が据え置かれているケースが多数みられた。
公取委は発注者4,030社に対して注意喚起文書を送付した。また、個別調査の結果、多数の取引先に対する協議を経ない取引価格の据置き等が認められた佐川急便やJA全農、デンソーなど13社について、価格転嫁の円滑な推進を強く後押しする観点から、その事業者名を公表した。
2022/12/28 公取委、価格転嫁拒否で企業名公表
(2023年度)
公正取引委員会は、上記の緊急調査等を踏まえ、また、注意喚起対象4,030社及び事業者名公表13社名の価格転嫁円滑化に関する取組に関するフォローアップのため、2023年度「独占禁止法上の「優越的地位の濫用」に係るコスト上昇分の価格転嫁円滑化の取組に関する特別調査」を実施し、2023年12月にその結果を発表した。
https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2023/dec/231227_tokubetucyosakekka.html
個別調査の結果、相当数の取引先について協議を経ない取引価格の据置き等が確認された事業者については、価格転嫁の円滑な推進を強く後押しする観点から、発注者に価格転嫁に向けた積極的な協議を促し、また、受注者にとっての協議を求める機会の拡大につながる有益な情報であること等を踏まえ、事業者名を公表することとし、上記の10社を公表した。
なお、2022年の事業者名公表13社は、全体としては価格転嫁円滑化を相当程度進めていた。
いずれも、「コスト上昇による価格転嫁の要望があれば価格交渉に応じるので申し出るように」などといった呼び掛けを行っていた。 交渉の内容を記録して保管することとしており、受注者から価格転嫁の要請があったものの取引価格を据え置く場合は、据置きの理由を記録の残る方法で受注者に回答することをルール化していた。
別途、経済産業省は2023年2月7日、下請け企業との価格交渉でコスト上昇による転嫁に後ろ向きな企業を実名で公表した。
2023/2/9 経産省、価格転嫁に後ろ向きな企業の実名公開
なお、これとは別に、公正取引委員会は3月7日、日産自動車に対し「割戻金」の名目で一部下請け業者への支払いを減額していたことが下請法違反に当たるとして、再発防止などを勧告した。
2021年1月から2023年4月の間、コスト削減目標を達成するため、両社間で一度決めた支払い代金から数%を減額していた。1社当たりの最高額は約11億円だった。
日産は減額分をすでに下請け業者へ支払い、割戻金の運用も廃止したとしている。
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