新潟水俣病第5次訴訟 新潟地裁判決

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水俣病の被害を訴える新潟市などの男女が、国と原因企業の昭和電工(現レゾナック・ホールディングス)に1人当たり880万円の損害賠償などを求めた新潟水俣病第5次訴訟の判決が4月18日 に新潟地裁であった。

新潟水俣病は、1965年5月に新潟県の阿賀野川流域で公式確認されたメチル水銀による中毒症 で、阿賀野川上流で操業していた旧昭和電工(現レゾナック・ホールディングス)鹿瀬工場の排水にメチル水銀が含まれ、汚染された川魚を食べた人が発症した。 熊本県の水俣病公式確認から9年後、1965年に公式確認され、行政の認定や水俣病被害者救済特別措置法などで救済された患者は計3696人(2024年3月末時点)に上る。

新潟県 新潟水俣病のあらまし


「ノーモア・ミナマタ」第2次訴訟と呼ばれる同種の訴訟は、新潟と大阪、熊本、東京の4地裁で起こされ、判決は3件目。昨年9月の大阪判決は原告128人全員を水俣病と認定したうえで国などに賠償を命じ、今年3月の熊本判決は請求を棄却した。

2023/9/28 大阪地裁、水俣病救済巡る訴訟で国側に賠償命じる 及び付記(熊本判決)

今回の訴訟は新潟県の住民らが2013年に集団提訴し、その後も原告が追加されていた。


原告149人のうち先行して審理を終えた50〜90代の原告47人について判決があり、

うち26人を水俣病と認め、1人当たり400万円、総額1億400万円を支払うよう昭電側に命じた。
19人については罹患している「高度の蓋然性があるとは認められない」とし、請求を棄却した。
国の責任は認めなかった。

問題点は下記の通り。

① 原告を水俣病と認めるかどうか。

原告側は、原告がメチル水銀に汚染された阿賀野川の魚を食べるなどして手足の感覚障害などを発症しており、長年診療に当たってきた民間医師が策定した「共通診断書」の所見に基づいて水俣病だと主張した。

判決では、共通診断書のみで罹患を判断するのは困難であり、主に公的検診の結果に依拠すべきだと指摘した。

水銀暴露から長期間が過ぎた後に発症する遅発性水俣病についても暴露後 6、7年以内に発症することがあり得るとした。

その上で、メチル水銀への暴露状況や症状などを個別に判断した。
公害健康被害補償法(公健法)上の患者認定を既に受けている2人を除く45人のうち26人を水俣病と認め、19人については罹患している「高度の蓋然性があるとは認められない」とし、請求を棄却した。

② 除斥期間

被告側は、20年の除斥期間が過ぎたと主張。

判決は除斥期間を経過していても原告が罹患を認識していなかったり、差別や偏見を懸念して請求をためらったりするケースもあったとし、除斥期間の適用は「著しく正義・公平の理念に反する」と断じた。

2023/9 大阪地裁判決

慢性水俣病の場合、損害の性質上、加害行為が終了してから相当の期間が経過した後に損害が発生する。当該損害の全部または一部が発生した時が除斥期間の起算点となる。
医師らの検査で水俣病と確認できた時期が除斥期間のスタート地点。

2024年3月 熊本地裁判決

不法行為から20年で損害賠償請求権が失われる「除斥期間」を適用して退けた。

③ 国の責任

原告側は、熊本県で水俣病の発生源となったチッソ水俣工場と同様に水銀を使う全国6工場で国が実施した排水調査に着目。水銀が検出された1961年までに国は新潟水俣病の発生を予見でき、排水規制をしていれば発生や被害拡大を防げたと主張した。

国は「公式発見以前に発生を具体的に認識していなかった」と反論した。

判決は、被害発生・拡大を防げなかった国の責任があるとする原告側の主張は「具体的に認識・予見できたといえず、国家賠償法上の違法があるとはいえない」と退けた。

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新潟日報 [新潟水俣病・公害と裁判の歴史] 上

[新潟水俣病・公害と裁判の歴史] 下

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