経産省、AIスパコン整備に補助金

| コメント(0)

経済産業省は4月19日、AIの開発に必要な計算資源の整備に向け、国内IT 5社に最大725億円を助成を行うと発表した。クラウド事業の基盤を持つさくらインターネット、GMOインターネットグループ、KDDIなどを支援する。

ーーー

社会のデジタル化の進展に伴い、クラウドサービスは、幅広い国民生活・産業活動の情報処理を担う機能として不可欠なものとなっている。

こうした中、基盤的なクラウドサービス(基盤クラウド)の国内市場においては、国内に事業基盤を有する事業者のシェアは約3割であり、海外から提供されるサービスへの依存が高まっている状況にある。

基盤クラウドは、情報処理の根幹を担うものであり、その開発体制を国内で確保できなければ、我が国が自律的に管理すべき重要情報を扱うシステムも含め、完全に他国に依存することになるおそれがある。

また、「クラウドプログラム」の中でも、生成AIは、従来のAIでは不可能だった、様々な創造的な作業を人間に代わって行える可能性があることから、産業活動・国民生活に大きなインパクトを与えると考えられており、そのサービス供給に制約が生じた場合には、我が国に甚大な影響が生じると考えられ、その計算資源を国内に確保することで、我が国における開発基盤の構築・サービス提供体制の強靱化を図ることが重要である。

こうした状況を踏まえ、経済安全保障推進法に基づき、「クラウドプログラム」を特定重要物資に指定し、その安定供給確保に向けて、特に生成AIについて幅広い開発者が利用できる計算資源の国内への整備に関する計画を認定し、国として支援することとした。

経済安全保障推進法(経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律)は2022年5月11日に成立した。

国際情勢の複雑化、社会経済構造の変化等に伴い、安全保障を確保するためには、経済活動に関して行われる国家及び国民の安全を害する行為を未然に防止する重要性が増大していることに鑑み、安全保障の確保に関する経済施策を総合的かつ効果的に推進するため、経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する基本方針を策定するとともに、安全保障の確保に関する経済施策として、所要の制度を創設するもの。

具体的には、法制上の手当てが必要な喫緊の課題に対応するため、(1)重要物資の安定的な供給の確保、(2)基幹インフラ役務の安定的な提供の確保、(3)先端的な重要技術の開発支援、(4)特許出願の非公開に関する4つの制度を創設するもの。

2022年12月、特定重要物資として、抗菌性物質製剤、肥料、永久磁石、工作機械・産業用ロボット、航空機の部品、半導体、蓄電池、クラウドプログラム、天然ガス、重要鉱物及び船舶の部品の11物資を政令で指定した。また、2024年2月に新たに特定重要物資として先端電子部品(コンデンサー及びろ波器)を政令で指定し、既に指定されている重要鉱物の鉱種にウランを追加した。


経済産業省は2023年4月以降、5件を支援しており、今回の分を合わせ、合計10件となる。 (うち、さくらインターネットは3件)

さくらインターネットは2023年以降、NVIDIAなどから2000個の画像処理半導体(GPU)の調達を進めているが、今回、8000個を追加、2027年末までに合計1万個を購入する。

また、KDDIがAIスパコン事業に進出する。

詳細は下記の通り。No.6以降が今回のもの。

No. 設定日 事業者

助成額

供給確保計画 詳細
2023/4/1 東京大学 42億円 量子コンピューターを活用したクラウドサービスの提供 2021年7月、川崎市の研究開発拠点に米IBMの量子コンピューターを導入した。今回83億円をかけて、処理能力が5倍高い最先端品を導入する。創薬や新素材開発などに利用できるクラウドサービスとして、トヨタ自動車や東芝などの企業や学生が共同で利用する。
2 2023/6/16 さくらインターネット 68億円 AIに関わる計算資源としてのGPUクラウドサービスの提供 GPUクラウドサービスの提供に向けて、3年間で130億円規模の投資をし、「NVIDIA H100 Tensor コア GPU」を搭載した、合計2EFLOPSの大規模クラウドインフラを整備
3 2023/7/7 ソフトバンク 53億円 NVIDIA DGX SuperPOD™などを活用して高いデータ処理能力を有する計算環境を構築し、自社で取り組む生成AIの開発およびその他のAI関連事業に活用する他、生成AIを中心とした社外からのさまざまな利用ニーズに応えるため、大学や研究機関、企業などへ幅広く提供していく。この計算環境の構築に関わる設備投資額は約200億円を見込んでおり、そのうち53億円の助成を受ける。
4 2023/11/2 ゼウレカ(三井物産) 11億円 (創薬・ヘルスケア業界で最先端AIサービスを提供)
5 2024/2/20 さくらインターネット 6億円 計算資源の自動拡張/縮小制御技術、ソフトウェアによる共通化・効率化技術等の技術開発 「基盤クラウドプログラムの技術開発支援」の取組種類として、国内で重要情報を扱う事業者等が海外サービスに依存せずクラウドを安定的に利用できる状況を確保。対象となるIaaS型クラウドサービス「さくらのクラウド」の技術開発計画に係る人件費などについて助成を受ける。
6 2024/4/15 GMOインターネットグループ 19.3億円 AIに関わる計算資源としてのGPUクラウドサービスの提供 NVIDIA との協業を加速させ 100 億円規模の GPU サーバーを取得
7 2024/4/15 さくらインターネット 501.0億円 生成AI向けクラウドサービス「高火力」に最新の「NVIDIA HGX B200 システム」をはじめとするGPUが約10,000基が搭載され、合計約18.9EFLOPSの計算能力が整備される。
8 2024/4/19 RUTILEA &
AI福島
25.6億円 第一弾としてNVIDIA H100 GPUを搭載した第4世代DGXシステムである「NVIDIA DGX H100」をInfinibandを用いて複数ノード(最大8ノード)接続した『RUTILEA DGXクラウド(仮称)』サービスの展開を予定
9 2024/4/19 KDDI 102.4億円 生成AI開発のための大規模計算基盤の整備を開始。今後4年間で1,000億円規模の投資を行い、2024年中に本計算基盤の先行稼働開始を目指す。国内最高性能の大規模言語モデル(LLM)や領域特化型LLMの開発を加速する。
2023年11月から開始した「MUGENLABO 生成AI活用支援プログラム」をはじめとするスタートアップ支援プログラムを通じて、世界最高レベルのLLM開発にチャレンジする研究機関やスタートアップなどに対しても本計算基盤を提供。
10 2024/4/19 ハイレゾ&
ハイレゾ香川
77.0億円 香川県綾川町と高松市にある既存施設を利活用したGPUデータセンターを整備し、GPUSOROBANのサービス提供を2024年秋から開始。
業界最安値級のNVIDIA H100の先行予約を受け付け開始。

コメントする

月別 アーカイブ