日本産業パートナーズは2023年3月23日、東芝を株式公開買い付け(TOB)で非公開化することを目指すと発表、8月8日から買付を行い、9月20日に応募が成立に必要な 3分の2を上回り(78.65%)、TOBが成立した。
この結果、東芝は2023年12月20日をもって上場廃止となり、TOBに応募しなかった株主には、スクイーズアウト手続きにより公開買付け価格と同額の1株あたり4,620円の金銭が交付される。
11月22日に臨時株主総会を開き、株式併合を決めた。普通株93,000,000 株を1株に併合するもので、併合後の発行済株式はたった4株になった。
2023/8/8 東芝、国内連合が8月8日からTOB 付記
他方、東芝の過去の不適切会計問題を巡り、株主が旧経営陣の経営責任を追及する株主代表訴訟が多数、進展している。
2015年に発覚した不正会計問題で、東芝は旧経営陣に責任があるとして佐々木則夫元社長ら5人を提訴、別途、個人株主が他の歴代幹部10人に株主代表訴訟を起こした。 東京地裁はこれを統合した裁判で2023年3月に、東芝が訴えた3人と株主が訴えた2人の計5人の賠償責任を認め、総額3億860万円の賠償を命じた。
会社提訴は5人のうち2人が請求却下、3人が連帯で合計2億円、株主代表訴訟での2人が1億860万円となる。
2023/3/30 東芝粉飾事件で元役員に対する損害賠償請求訴訟の判決
上記の控訴審や、別の訴訟の判決が順次、出つつある。
ここで、「株式併合」が問題となった。
上記の裁判の控訴審で東京高裁 は2024年3月6日、株主代表訴訟分について、株式併合で原告株主の保有株が1株未満になったため「原告適格を失った」と判断し、内容は何も判断せずに、この分の一審判決を取り消し、株主の訴えを却下した。
東京地裁で審理が続いていた監査法人への訴訟も2024年3月28日、同様の理由で却下された。
株式併合で原告株主の保有株が1株未満になったため「原告適格を失う」だけでなく、TOBに応募しなかった株主は上場廃止後ににはスクイーズアウト手続きにより新株主に強制的に買い上げられるため、原告としての法的な立場を失う。
TOBがからむ限り、「会社役員の意思決定や行動等により会社に対して損害を与えたにもかかわらず、会社がその責任を追及しない場合、株主が所定の手続を経たうえで会社に代わってその会社役員の責任を追及する訴訟を提起できる」という会社法 第847条の規定が意味がないこととなる。
弁護団は、TOBで株主の地位を引き継いだ日本産業パートナーズ陣営に株主側の訴えを引き継いでもらう必要があるとして、質問状を送り、訴訟の経緯とともに、一部の賠償請求権が失われることを説明したが、現在も回答はないという。
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株主代表訴訟ではなく、旧株主として損害を受けたとして訴えた場合は、TOBで株主の地位を失っても原告としての資格は失わない。
東芝の不正会計問題で株価が下落し損失が生じたとして、個人株主244人が同社と旧経営陣に計約7億2200万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は2024年3月22日、東芝に対し、そのうちの174人へ計約4805万円を支払うよう命じた。
旧経営陣に対する賠償請求は棄却した。
原告側は、2008~14年度の有価証券報告書などで不正会計による報告書の虚偽記載があり、不正を知っていれば株を購入しなかったと主張。東芝側は請求額の一部は虚偽記載と因果関係がないなどと主張していた。
判決では、2009、11、12年度の報告書で重要事項の虚偽記載があったと認定。一方、旧経営陣は虚偽記載への責任を負わないとした。
大阪、高松、福岡などで起こされた同種訴訟では、各地裁や高裁が東芝に請求額の一部の賠償を命じ、旧経営陣への賠償請求は棄却する判断が続いている。
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