米共和党のジョンソン下院議長は4月15日、イスラエルとウクライナへの支援を今週、別個の法案として審議すると述べた。
上院は約2カ月前に両国への支援を一体化した法案を可決している。
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上院はこれまで与野党の対立で宙に浮いていたウクライナへの軍事支援の予算について、2月13日 に緊急の予算案を可決した。
緊急予算案は953.4億ドル(約14兆円)にのぼる。ウクライナやイスラエル支援に加え、インド太平洋地域向けの予算も計上した。
2月7日に否決された予算案から、トランプ前大統領の介入で政治問題になっている米国の国境不法移民対策の予算を除外し、ほぼ、前回と同じものである。
バイデン案 2/7 上院否決 2/13 上院可決 ウクライナ支援 614億ドル 601億ドル 600.6億ドル 米国国境不法移民対策 136億ドル 202億ドル 除外
イスラエル支援 143億ドル 141億ドル 141億ドル ガザ支援 92億ドル 100億ドル 91.5億ドル インド-太平洋 74億ドル 48.3億ドル 48.3億ドル 紅海対策 24.4億ドル 24.4億ドル その他 63億ドル 47.6億ドル 合計 1060億ドル 1180億ドル 953.4億ドル 2024/2/9 米連邦議会の混迷
野党・共和党の ジョンソン下院議長は、国境の危機的な状況への対応を怠っているとして、この予算案に否定的な考えを示していた。
ジョンソン下院議長は共和党の超保守派議員から、移民政策で譲歩を引き出すことなしにウクライナ支援法案を可決させないよう圧力を受けている。超保守派議員が求めているのは亡命希望者全員を強制的にメキシコにとどまらせること、国境に壁を建設することなど、民主党にとっては受け入れがたい内容である。
なお、トランプ前大統領は2月10日、Social Media PlatformのTruth Socialで、米政府の対外国支援を返済義務が生じる融資又は紐付き融資に限定すべきだと表明した。反対してきた対ウクライナ追加支援の条件に浮上する可能性がある。
2024/2/15 米議会上院 ウクライナ支援の予算案可決 成立は不透明な状況
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ジョンソン下院議長は4月17日、イスラエル、インド太平洋地域、ウクライナの地域別に分割した三つの法案を20日に採決にかけると明らかにした。対外支援法案については米政府や外国から早期の採決を求める声が上がっていた一方で、一部の共和党員が強く反発していた。
下院歳出委員会は計950億ドル超の安全保障支援法案を公表した。ウクライナに608.4億ドル、イスラエルに263.8億ドル、インド太平洋に81.2億ドルを充てる。
ジョンソン議長は20日正午まで法案を精査し修正を提案する期間を設けると述べた。保守派の要求に応じ、国境警備に関する別の法案を公表する方針も示した。
2/13 上院可決 | 今回下院案 | |
ウクライナ支援 | 600.6億ドル | 608.4億ドル |
(うち 融資) | (79.0億ドル) | |
米国国境不法移民対策 |
除外 |
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イスラエル支援 | 141億ドル | 263.8億ドル |
ガザ支援 | 91.5億ドル | |
インド-太平洋 | 48.3億ドル | 81.2億ドル |
紅海対策 | 24.4億ドル | |
その他 | 47.6億ドル | |
合計 | 953.4億ドル | 953.4億ドル |
詳細は別紙
トランプ前大統領の主張を踏まえ、ウクライナ支援法案にはこのうちの経済援助の79億ドルは2025年9月までの融資の形をとる。
政府は法案成立後60日以内にウクライナ政府と返済について合意する必要がある。
なお、議会が認めれば、大統領は2024年11月15日以降にウクライナの債務の50%を、また2026年1月1日以降に残りすべてを、帳消しにできる。(バイデンが大統領選に勝てば、この規定でウクライナの債務を消せるが、トランプが勝てば、ウクライナ支援をローンにすることを主張しているため、これを求めないと思われる。)
下院指導部はその後、安全保障支援パッケージの一環として4番目の法案を提出した。上院案には盛り込まれていない凍結したロシア資産のウクライナへの移転やイスラム組織ハマスとイランに対する制裁が含まれた。
バイトダンスやその他の「外国敵対勢力」の管理下にある企業との関係を断てば適用を免れる。
バイデン米大統領は17日、「イスラエルやウクライナ、パレスチナへの人道支援、インド太平洋の安全保障強化を提供する緊急予算案を強く支持する」と述べ、上下両院に早期可決を求めた。
共和党の保守強硬派は、ジョンソン議長がウクライナ支援と国境管理厳格化をセットにして民主党の譲歩を迫らなかったことに反発し、ジョンソン議長が法案を採決にかければ同氏の解任を求める構えを見せているが、下院民主党ではジョンソン下院議長の解任動議が提出されても同調せず、反対すべきだとの声が強まっている。
2023年10月に米下院共和党保守強硬派が、共和党のマッカーシー下院議長が政府機関閉鎖の回避に向けたつなぎ予算成立を図るため民主党の支持を得たことを問題視し、解任動議を提出したが、民主党議員全員がこれに賛成し、8人の共和党員の造反で、これが通ってしまった。共和党議員の大半の反対にもかかわらず民主党の望む法案を通してくれた議長を放り出すことになり、その後、混乱が続いた。
今回は予算案の成立を優先する。
付記 米下院は4月19日、ウクライナ支援追加予算案等の4法案の審議を進めるための議案を、賛成多数で可決した。20日に採決を行う。
共和党 | 民主党 | 合計 | 欠員 | |
賛成 | 151 | 165 | 316 | |
反対 | 55 | 39 | 94 | |
棄権 | 12 | 9 | 21 | |
合計 | 218 | 213 | 431 | 4 |
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