米国、パレスチナの国連加盟勧告決議案に拒否権

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米国は4月18日、パレスチナの国連加盟を勧告する安全保障理事会の決議案採決で拒否権を発動した。イスラム組織ハマスがパレスチナ自治区ガザを支配している状態では「時期尚早だ」と主張した 。

パレスチナは2011年に国連加盟を申請したが、米国が拒否権行使を明言したことなどから採決を棚上げし、翌2012年に「非加盟オブザーバー組織」から「非加盟オブザーバー国家」に格上げする決議案を賛成多数で採択した経緯がある。オブザーバーは会合に参加できるが、投票権はない。

国連加盟には、安保理で勧告の決議が採択されたうえで、総会で3分の2以上の賛成を得る必要がある。パレスチナは4月2日、「加盟申請の再検討を望む」と表明した。安保理は下部組織の審査委員会を開いて協議したが、全会一致を意思決定の条件とする同委での議論は決裂し、非常任理事国のアルジェリアがアラブ諸国を代表して安保理に直接、勧告決議案を提出した。

18日の決議案採決では、安保理15カ国中、日韓仏を含む12カ国は賛成、反対は米国のみで、英国とスイスが棄権した。

安保理 15カ国  常任理事国:米、英、仏中、露
           非常任理事国:(2024年まで) エクアドル日本マルタモザンビークスイス
                     (2025年まで) アルジェリアガイアナ韓国シエラレオネスロベニア

     青字はパレスチナを国家承認している国   赤字はパレスチナを国家承認していない国

米国は拒否権行使について、引き続き「2国家解決」(それぞれの国家が隣り合って共存する案)を強く支持しているが、国連におけるパレスチナ国家の地位変更は、イスラエルとの交渉による和解の一環としてのみ実現すべきだと、反対理由を説明した。

反対が米国のみという事態は、なるべく避けたかったもので、投票に先立ち、米国が他の理事国を味方につけようと、水面下で激しいロビー活動を展開してたとの報道もある。イスラエル擁護を続ける米国への批判が一層強まることは避けられない。

日本はパレスチナを国家承認していないが賛成票を投じた。上村・中東担当政府代表は「この重大な局面で、パレスチナ国家樹立を促進する観点も考慮した包括的な決定だ」と説明した。 12カ国が賛成したことは「(パレスチナ国家樹立を前提とした)2国家解決しか『もう道はない』との共通認識が強まったということだ」と分析した。

付記

上記の安保理理事会でのパレスチナの国連加盟勧告決議案が米国の拒否権で否決されたのを受け、UAEがアラブグループを代表し、安保理での再検討を呼びかける決議案を総会に提出した。77カ国が共同提案した。

「パレスチナは国連憲章第4条に従って国連に加盟する資格を有しており、加盟が認められるべきである」と明記した。

第4条:国際連合における加盟国の地位は、この憲章に掲げる義務を受託し、且つ、この機構によってこの義務を履行する能力及び意思があると認められる他のすべての平和愛好国に開放されている。

決議案への反対はアメリカ、イスラエルと、チェコ、ハンガリー、アルゼンチン、ミクロネシア、ナウル、パラウ、パプアニューギニアの9カ国にとどまり、英国など25カ国が棄権したが、143か国の圧倒的多数の賛成で決議は採択された。

しかし、正式加盟には安全保障理事会による勧告が必要で、常任理事国の米国の反対が続く限り、見通しはたたない。

ただ、すべての国連加盟国が参加できる総会で140を超える圧倒的多数の支持を得たことで、イスラエルとそれを擁護してきたアメリカの孤立が際立ったかたちとなった。

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