米国の天然ガス価格が暴落している。
米国の天然ガス価格の相場であるHenry Hub spot price の推移は下図のとおりだが、Shale革命で価格が下がり、長期間、高くて6ドル、2~4ドルの間で推移していた。(単位は100万BTU当たりドル)
2021/2月 Henry Hub 大寒波で急騰、3月に元に戻るが、その後、 エネルギー価格高騰で上昇が続いた。BTUはBritish thermal unitの略語で、日本では英熱量ともいう。 1常用ポンドの水の温度を1°Fだけ上げるのに要する熱量である。
Henry Hub は米国南部ルイジアナ州にある天然ガスの集積地名で、ここで売買される天然ガスの価格がNew York Mercantile Exchangeの先物価格の指標値(基準値)となっている。
2022年4月以降、ウクライナ問題で急騰し、8月には8.81ドルに達した。(8月23日には一時10ドルを超えた。)
その後の動きは下図の通り。
リグ(新規油田開発のための掘削装置)の稼働数は、2010年代と比較して増加していないものの、掘削技術の向上、AI(人工知能)の活用、坑井仕上げの改善等により、1井戸当たりの生産性が向上し、投資額を抑制しつつ、シェール・オイルとシェール・ガスの生産量を増加させている。
さらに、ウクライナ危機によるガソリン価格の高騰を受けて、バイデン政権もシェール・オイル、シェール・ガスの開発規制を緩和し、石油企業も風力発電をはじめとした再生可能エネルギーよりも、石油・天然ガス事業のほうが利益率も高く、株式市場における評価も好ましいことから、再びシェール・オイル、シェール・ガスの開発に力を入れ、シェール・オイル、シェール・ガスの権益に係わるM&A(合併・買収)が活況を呈している。
米金融大手ゴールドマン・サックスは2023年1月末の調査リポートで、気温上昇や輸出能力の停滞を背景に、米天然ガス相場は2023年から2024年にかけて弱気サイクルに入るとの見方を明らかにした。
米国では暖冬で暖房需要が伸び悩み、ガスの需給が緩んだ。
これらの結果、Henry Hub価格は、2023年の月平均は2.54ドルにとどまり、2024年1月が3.18ドルであったのに対し、2月は1.72ドル、3月は1.49ドルと急落した。上の月別グラフでは3月の1.49ドルは過去最低である。
ExxonMobilが4月26日に発表した2024/1-3月の純利益は前年同期比28%減となった。天然ガス価格の下落が響いた。
コメントする