AstraZeneca、シンガポールに15億ドルの抗体薬物複合体(ADC)製造施設建設

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AstraZeneca は5月20日、シンガポールに15億ドル規模の抗体薬物複合体(ADC)製造施設を建設する計画を発表した。

AstraZenecaがシンガポールで医薬品を生産するのは初めて。

同社にとって初めてのADC製造の全プロセスをカバーする施設となる。抗体の生産、化学療法薬とリンカーの合成、薬・リンカーの抗体への結合、完成したADC物質の充填といった多段階の製造プロセスを完全に統合する。

2024年末までに製造施設の設計と建設を開始し、2029年までに運用開始を目指す。


同社は第一三共 及び中国系企業とADCの共同開発・商業化で戦略提携している。

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第一三共は2019年3月29日、抗がん剤でAstraZenecaと戦略的提携すると発表した。

同社が保有する抗体薬物複合体(antibody drug conjugate: ADC)のエンハーツ / トラスツズマブ デルクステカン(DS-8201)について、乳がん、胃がん、非小細胞肺がん及び大腸がんを含むHER2発現がんを対象としたグローバルな開発及び商業化契約を締結した。

抗体薬物複合体(ADC)は、抗体と薬物(低分子化合物)を適切なリンカーを介して結合させた薬剤で、がん細胞に発現している標的因子に結合する抗体を介して薬物をがん細胞へ直接届けることで、薬物の全身曝露を抑えつつがん細胞への攻撃力を高める。

本剤は、独自のリンカーを介して新規のトポイソメラーゼI 阻害剤(薬物)を抗HER2抗体に結合させた薬剤。抗HER2抗体とリンカー、ペイロード(トポイソメラーゼI 阻害剤)のすべてを自社技術で構築した。

トポイソメラーゼI 阻害剤は、癌細胞のDNAの2重らせん構造のうち1本を切断し、異常な細胞増殖を抑えることでがん細胞を殺す。

乳がんなどには、細胞の表面に、がん細胞に「増殖しろ」という指令を出す「HER2タンパク」をもっているものがあるが、トラスツズマブは、HER2タンパクの働きをブロックし,がん細胞の増殖を抑える。

2019/4/1 第一三共、抗がん剤でAstraZenecaと戦略的提携、最大で69億ドル受領  


第一三共は2020年7月27日、同社が保有するTROP2に対する抗体薬物複合体のDS-1062について、グローバルな開発及び商業化契約をAstraZenecaと締結したと発表した。

今回の提携で、第一三共とAstraZenecaは全世界(日本では第一三共が独占的権利)において、本剤の単剤療法及び併用療法を共同で開発し、商業化する。第一三共は本剤の製造及び供給を担う。

前回はエンハーツ/DS-8201、今回はDS-1062である。

2020/7/29 第一三共、抗体薬物複合体の開発・商業化で AstraZeneca と2件目の提携   

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なお、第一三共は2023年10月20日、開発中の3つのADCの開発・販売で米Merck と提携したと発表した。

提携の対象は▽抗HER3ADCパトリツマブ デルクステカン▽抗B7-H3ADC「DS-7300」▽抗CDH6ADC「DS-6000」。

日本を除く全世界でメルクと共同で開発・商業化し、製造と供給は第一三共が担う。

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KYM Biosciences(中国のKeymed Biosciences:康諾亞生物醫藥科技成都有限公司と 同じく中国のLepu Biopharma:樂普生物科技股份有限公司の関連会社によって設立されたJV)との間で胃がんの有望な治療ターゲットであるClaudin 18.2を標的とするファースト・イン・クラスの抗体薬物複合体(ADC)のCMG901について、独占的なグローバルライセンス契約を締結したことを発表した。

本ライセンス契約に基づき、AstraZenecaはグローバル規模でCMG901に関する研究、開発、製造および商業化を展開していく。

現在、胃がんを含むClaudin 18.2陽性固形がんの治療薬として、第I相臨床試験で評価を行っており、第I相試験の予備結果では、すべての用量で抗腫瘍活性の早期徴候が認められ、CMG901の有望な臨床プロファイルが示された。

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AstraZenecaは、様々な腫瘍タイプや病期における消化器がんの治療に対して、複数の医薬品による広範な開発プログラムを展開している。胃がん、肝がん、胆道がん、食道がん、膵がんおよび結腸直腸がんの転帰の改善にコミットしている。

イミフィンジ(一般名:デュルバルマブ)は、化学療法(ゲムシタビンおよびシスプラチン)との併用療法が進行胆道がんの治療薬として、イジュドとの併用療法が切除不能な肝細胞癌の治療薬として、米国で承認されている。

イミフィンジは、イジュドなどとの併用療法で、現在、早期から後期がんまでを対象とした広範な開発プログラムにおいて、肝がん、食道がんおよび胃がんの治療薬として評価が行われている。

第一三共との提携によるエンハーツ(一般名:トラスツズマブ デルクステカン)はHER2を標的とした抗体薬物複合体で、HER2陽性の進行胃がんの治療薬として承認されており、現在、結腸直腸がんで試験を実施している。

リムパーザ(一般名:オラパリブ)はファースト・イン・クラスのPARP阻害剤であり、BRCA遺伝子変異陽性転移性膵がんの治療薬として承認されています。リムパーザは、アストラゼネカとMSD(米国およびカナダではMerck&Co., Inc.)が共同開発と商業化を行っている。

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