BHPグループによるAnglo Americanの買収提案

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世界最大級の鉱業会社BHPグループが、107年の歴史を持つ同業のAnglo Americanに買収の可能性を打診した。

Anglo Americanは4月24日遅く、BHPから一方的で拘束力のない株式交換による事業統合の申し出を受け取ったと明らかにした。310億ポンド(388億ドル)の買収提案とされる。Anglo Americanによると、BHPの申し出は、Anglo Americanが南アフリカの白金および鉄鉱石部門をまず分離することが条件になる。

付記

BHPグループは5月29日、英同業のAnglo Americanの買収を断念したと明らかにした。買収に関連して、BHPがアングロに求めた事業分離を巡り、両社の意見が平行線をたどったことが主な理由。

BHPは買収額を引き上げるなど、計3度、法的拘束力のない提案を提示したが、Anglo American はいずれも拒否した。

最後まで折り合えなかったのがAnglo American に求めた事業分離で、BHPの狙いはAngloの銅事業だが、南アの鉄鉱石事業などはAngloに対し分離を求めた。

同日にはBHPが正式提案を示す期限の延長を求めたが、Angloが拒否した。

非公開情報を理由に複数の関係者が匿名で語ったところでは、BHPはロンドン市場に上場するAnglo American買収の可能性について最近評価を行ってきた。検討は初期段階であり、BHPが買収を進めると決めるか確実ではないとしている。

Anglo Americanは南米の大規模な銅事業を傘下に置き、業界の多くが同事業の拡大を目指す中で、鉱業大手の中でも特に買収の標的と長らく考えられてきた。しかし、複雑な構造と商品ミックス、特に南アへのエクスポージャーの大きさが潜在的買い手を遠ざけていた。Anglo Americanは世界のダイヤモンド市場で支配的な地位を築いてきたDe Beers も傘下に置く。

同社は、歴史の古い銅山から産出する低純度鉱石の問題などに直面する。生産する一部主要商品の価格下落を受け、Anglo Americanは 2023年の利益が急減し、配当引き下げを余儀なくされた。

Anglo Americanの株価は過去1年で12%下落し、時価総額は270億ポンド(約5兆2200億円)となった。ロンドンおよびシドニー市場に上場するBHPの時価総額は約1490億ドル(約23兆円)。


両社の歴史、概要は下記の通り。

BHP Group Anglo American
歴史 2001年に豪州のBroken Hill Proprietary (BHP)と、南アで大規模に活動する英国のBilitonが合併し、BHP Billitonとして英、豪での二元上場会社となった。

2007年にRio Tinto買収を計画するが、2008年に断念
   
2008/11/27 BHP Billiton、Rio Tinto 買収を断念 

BHP Billitonは2015年にアルミ、石炭、マンガン、ニッケル、銀などの事業を分離し、South 32とした。      
   2014/12/10 BHP Billiton、分離会社の社名は "South32"

2018年11月にBHP Groupに改称(二元上場のまま)

BHPグループは2021年8月、石油・ガス事業を豪 Woodside Petroleumに売却すると発表した。
   
2021/8/19 BHPが石油・ガス事業から脱却

2022年1月 豪州上場のBHPが英国上場のBHP株を買収し、豪州上場に1本化 

主な鉱山資産には、ピルバラの鉄鉱石、エスコンディーダの銅が含まれる。

より多くのバッテリーグレードのニッケルを供給するためにニッケル事業を拡大中で、カナダのジャンセン鉱山の開発を通じてカリ市場にも参入している。

2023年度には銅鉱山会社Oz Mineralsも買収した。

1917年 南アフリカの金塊を採掘・販売するため、Anglo American Corporation of South Africaとして創業

1926年 ダイヤモンドの供給最大手のデビアス(De Beers)の株式を過半数取得。

1928年 現ザンビアのCopperbelt 地域で銅の採掘を開始、1971年終了

1942年 カナダのHudson Bay Mining and Smelting Co.を買収。

1995年 子会社Johannesburg Consolidated Investment Company をAmplats社(白金とダイヤモンド)、新JCI社(その他の鉱業)、Johnic社(工業部門)の3社に分割し、新JCI社とJohnic社の権益を黒人投資家へ譲渡

 白金とダイヤモンドの事業は、後に資本関係を結んでいるDe Beersへ移管

1998年 様々なグループの改編を機にロンドン証券取引所へ上場、社名をAngro American PLCとする。

両社の売上高と構成 

BHP Group
(2023/6)
Anglo American
(2023/12)
売上高 538億ドル 307億ドル
鉄鉱石 248億ドル 80億ドル
160億ドル 74億ドル
石炭 109億ドル
貴金属 67億ドル

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Anglo Americanの取締役会は4月26日、BHPからの310億ポンド(388億ドル)の買収提案を拒否した。
「提案はAnglo Americanとその将来の見通しを著しく低く評価しているとの結論に至った。また、提案には、提案に固有の不確実性と複雑さ、および実行に伴う重大なリスクを考慮すれば、取締役会が高く魅力的でないと考えている構造が含まれている」としている。

Anglo American は「銅がポートフォリオの最大30%を占めており、銅や他の構造的に魅力的な製品のうまく進展し価値を増加させる成長オプションを有することで、Anglo Americanの株主がこれらのトレンドの全体的な影響が具体化されるにつれて著しい価値の向上に恩恵を受けると信じている」としている。

金属市場においては、ロンドン金属取引所での銅の3か月の終値は4月29日に1メトリックトン当たり10,135.50ドルの歴史的な高値を記録した。2月9日に見られた8,169ドルの安値からほぼ25%増加した。

Anglo Americanの拒否を受け、BHPは買収価額を340億ポンド(426.7億ドル)に引き上げたが、Anglo Americanは5月13日、これを再度拒否した。

Anglo American は5月14日、エネルギー転換の下で需要が高まっている銅事業に集中するため、収益性の低い石炭やニッケル、ダイヤモンド、プラチナなどの事業を売却するか切り離す大胆な合理化計画を発表した。鉄鉱石と銅、つまりエネルギー転換の鍵となる金属に特化したよりシンプルな企業構造を目指す。これらの再編を通じて17億ドルの経費節減が期待できるという。

BHPによる買収提案を拒否し、単独経営を維持するための方針とみられている。

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