米Eli Lilly、肥満症薬を増産

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米製薬大手Eli Lillyは5月24日、Lebanon, Indianaの新工場に53億ドルを追加投資すると発表した。欧米を中心に需要が高まる肥満症治療薬Zepbound® (tirzepatide) injection や、糖尿病薬Mounjaro® (tirzepatide) injectionの原薬を増産する。同拠点への投資総額は37億ドルから90億ドルに増える。

2023年に着工し、2026年末に医薬品製造を始める予定。

同社は2023年12月に米国で肥満症治療薬 Zepbound®を発売した。Zepbound®の有効成分tirzepatideは、2型糖尿病の成人患者の血糖値改善を助ける効能をもつMounjaro®としてすでに承認されており、肥満症治療薬として広く適応外処方されてきたが、FDAが新薬として2023年11月8日に承認した。

tirzepatideはグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)とグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)の二つの受容体に単一分子として作用する世界初の持続性GIP/GLP-1受容体作動薬で、本剤の構造は、天然GIPペプチド配列をベースとした単一分子だが、GLP-1受容体にも結合するように改変されており、選択的に長時間作用する。

Zepbound®の需要が拡大する一方で生産が追いつかず、Mounjaro®とともに品薄状態が続いている。


なお、日本では、日本イーライリリーと田辺三菱製薬が先日、肥満症に対するチルゼパチド(tirzepatide)について、日本イーライリリーが当局に承認申請済みであること、および両社で日本における販売提携を行うことを発表した。

両社の販売提携契約に基づき、同一化合物で2023年から両社にて販売提携を行っている「マンジャロ®皮下注」と同様に、本剤の製造販売承認は日本イーライリリーが取得し、承認取得後の流通・販売を田辺三菱製薬が行う。

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新タイプの肥満症治療薬の利用者が、米国を中心に世界で急増している。

先駆けとなったのが、デンマーク製薬大手Novo Nordisk Wegovy(ウゴービ )で、2021年に米国で承認された。もともと糖尿病(内臓脂肪の蓄積が主な原因)のために開発した薬(GLP-1受容体作動薬)を肥満症治療に応用したもので、食欲を抑制することでやせる効果があるとされる。日本では「セマグルチド(遺伝子組換え)」として2023年3月に承認された。

食事をとると小腸から分泌され、インスリンの分泌を促進する働きをもつホルモンをインクレチンといい、GIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド )とGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)がある。
2型糖尿病に対する治療薬として注目されるのがGLP-1である。

GLP-1は、食事をとって血糖値が上がると、小腸にあるL細胞から分泌され、すい臓のβ 細胞表面にあるGLP-1の鍵穴 (受容体) にくっつき、β 細胞内からインスリンを分泌させる。GLP-1は、血糖値が高い場合にのみインスリンを分泌させる特徴がある。摂取した食物の胃からの排出を遅らせる作用や食欲を抑える作用などもある。

GIPも食欲を抑制するだけでなく、体内での糖分や脂肪の分解を改善する可能性がある。

Eli Lillyは昨年12月、同様の働きを持つ肥満症治療薬Zepboundを米市場に投入した。Amgen や Pfizerなど多くのメーカーが開発を急ぐ。

2024/4/15 新タイプの肥満症治療薬が急増

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