米アリゾナ州のKatie (Kathleen )Hobbs 知事(民主党)は2024年5月2日、人工妊娠中絶をほぼ全面的に禁じる1864年の州法を廃止する法案に署名、同法が成立した。7月までに州議会が閉会した後、90日後に発効する。
州最高裁が1864年の中絶禁止法の有効性を認め、早ければ6月下旬に施行される可能性があるため、 この州法を正式に廃止することにしたもの。
これまでの経緯は下記の通り。
アリゾナ州では、アリゾナ州が州になる前の1864年に人工妊娠中絶禁止法を制定した。(アリゾナ州は1912年に米国で48番目の州に昇格した。)
受精の時点から中絶を禁止するもので、レイプや近親姦の場合でも例外とならない。
母体の生命が危険な場合を除き、中絶に禁錮2~5年の罰を科せる。
1973年1月22日、Roe v. Wade事件に対する最高裁判決が出た。テキサス州の「妊娠中絶を原則禁止」とした中絶法を7対2で違憲とする判決を下した。これにより、アリゾナ州の人工妊娠中絶禁止法は無効とされた。
中絶は憲法に保障された権利との判断を示し、胎児が子宮の外で生きることができるようになるまでなら中絶は認められるとした。
現在は「妊娠22~24週ごろよりも前」がその基準と考えられている。
2022年6月24日、米連邦最高裁は1973年の「Roe v. Wade判決」を覆す判断を下した。
「中絶は深い道徳上の問題だ。中絶の権利は憲法に明記されておらず、歴史や伝統に根ざしているわけでもない。憲法は州が中絶を規制したり、禁止したりすることを禁じていない」と結論づけた。
保守派判事5人が支持、リベラル派判事3人が反対し、ロバーツ長官も中絶が妊娠中期まで認められることに根拠がないとして州法の合憲性を認めた。(但し、中絶を選ぶ権利まで取り消すことには反対した。)
問題となったミシシッピー州法については「胎児の生命を保護することなど州側の正当な利益があり、州法には合理的な根拠がある」と判断。州法を「違憲だ」とした連邦控訴裁(高裁)の判決を破棄し、審理を差し戻した。
中絶の権利に対する憲法の保障がなくなり、全米50州の26州で中絶が事実上禁止または大幅に制限される見込み。
この結果、州ごとに中絶権が決定できるようになった。
アリゾナ州では2022年、母体の生命が危険な場合を除き、妊娠15週以降の中絶を禁止する州法が成立した。ただしこの法律でも、レイプや近親姦の場合は例外とならない。
アリゾナ州最高裁判所は2024年4月9日、人工妊娠中絶をほぼ全面的に禁止する160年前の州法を有効とする判断を示した。
160年前の州法は1973年のRoe vs Wade 判決で死文化していたが、2022年に Roe vs Wade判決が覆されたことを受け、州最高裁は昔の禁止法が再び施行可能になったとの判断を下したもの。
今回の判決により、中絶が可能な州内のすべてのクリニックが閉鎖される可能性がある。影響は女性の健康と、今秋の大統領選挙にも及びうる。
そのため、人工妊娠中絶をほぼ全面的に禁じる同州の1864年の法律を廃止する法案が州議会に提出された。中絶禁止法は強姦や近親相姦による妊娠も含めて中絶を禁じており、バイデン大統領は生殖の自由を制限すると批判。トランプ前大統領も「行き過ぎだ」と指摘していた。
アリゾナ州下院は2024年4月24日、共和党議員3人が法案賛成に回り、賛成32、反対28でこの法案を可決した。
アリゾナ州上院は2024年5月1日、賛成16、反対14の賛成多数で可決された。
7月までに州議会が閉会した後、90日後に発効する。
アリゾナ州では2022年、母体の生命が危険な場合を除き、妊娠15週以降の中絶を禁止する州法が成立しており、今後はこの法律が有効となる。
同州では本年11月に、妊娠24週までの中絶について是非を問う住民投票が行われる予定で、その結果によってはさらに法律が変わる可能性がある。
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