小林製薬の紅麹問題 "工場内の青カビが培養段階で混入"か

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小林製薬の「紅麹」の成分を含むサプリメントを摂取した人が腎臓の病気などを発症した問題で、厚生労働省と国立医薬品食品衛生研究所は5月28日、「工場内の青カビが培養段階で混入して『プベルル酸』と他の2種類の化合物がつくられたと推定される」と公表した。

さらに、これらの化合物を投与する動物実験で、腎臓の組織への毒性が確認された。引き続き原因物質の特定を進める。

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小林製薬の紅麹原料を含む機能性表示食品による健康被害を巡り、厚生労働省は3月29日、腎疾患の原因と推定される成分が「プベルル酸」の可能性があると同社が報告したと発表した。

小林製薬は3月29日、紅麹原料の一部のロットで検出された不明の「成分X」について、分子量150~250の環状構造を有する化合物であり、これまでに、プべルル酸などいくつかの既知の化合物に絞り込んでいることを明らかにした。

プベルル酸puberulic acid)

1932年に Birkinshaw と Raistrick が糸状不完全菌類 Penicillium puberulum Bainier から産生されるC8H6O6の化学式を持つ化合物が存在することを報告し、これをプベルル酸と命名した。

  C8H6O6 (2,5-Dihydroxyterephthalic acid)

細菌の増殖を抑える抗生物質(抗菌薬)の特性を持つが、毒性が非常に高いという。 プベルル酸はマラリア原虫に対する効果も高く、関連物質は抗マラリア薬の候補として研究されている。

感染症の原因となるマラリア原虫に効果があることを突き止めていた北里大のチームは2017年、マウス5匹に注射した実験で4匹が死んだと報告。
しかし今回のサプリで問題となった腎臓への影響はわかっておらず、プベルル酸以外の物質が腎障害を引き起こした可能性も残る。

2024/3/30 紅麹関連情報

これまでに5人が死亡、281人が入院している。

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厚労省の発表によると、小林製薬の大阪工場(昨年12月に閉鎖)と和歌山県紀の川市にある子会社の工場の両方に青カビが存在していたことが確認され、採取して培養したところ、被害が報告された製品からも検出されている「プベルル酸」がつくられた。

健康被害の訴えが集中している昨年6~8月の製造分からは、プベルル酸以外に、二つの化合物も検出された。未知の2種類の化合物はいずれも小林製薬が「悪玉コレステロールの値を下げる効果がある」とうたった「モナコリンK」という成分に基本骨格が似ているという。

既知の天然化合物ではなく、うち一つは、紅こうじサプリの機能性成分「モナコリンK」が工場の青カビにより変化したものと推定されるという。もう一つの物質も、構造が類似していることから同様の仕組みで発生したとみられる。

2つの化合物の健康被害への影響はわかっておらず、今後、動物実験などを行う。


同社のサプリを巡っては摂取後に腎臓病になる人が相次いでいる。日本腎臓学会の調査では、腎臓にある尿細管の機能が低下する「ファンコーニ症候群」の患者も確認されている。

これまでプベルル酸び腎臓への影響はわかっていなかったが、健康被害の訴えがあったサプリと、プベルル酸のみをそれぞれラットに食べさせたところ、腎臓の一部に変性や壊死が見られた。

厚労省は「現時点で断定はできないが、プベルル酸が健康被害の原因の可能性がある」としている。

今回、確認された青カビについて、カビ毒に詳しい東京農業大学応用生物科学部の小西良子教授は次のように述べている。(NHK)

「工場などでよく見つかるものとは違う珍しいカビだ。厚生労働省などの発表内容を聞く限り、このカビが、紅麹が作る『モナコリンK』に対して働く酵素を持っていて、その働きでプベルル酸以外に2種類の化合物が生じたと考えられる。

2つの菌が一緒に培養されることで新しい化合物ができるのはカビの生産物にはよくあることで、それだけに菌を用いた製品を作る際には厳しい製造管理が求められる。

プベルル酸についてもほかの2種類の化合物についてもこれまで毒性に関する知見はなかったが、今後の研究で毒性が明らかになれば、カビ毒と認定されるかもしれない」


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小林製薬は2016年にグンゼから事業譲渡を受けて紅麴原料の製造を大阪工場で始めた。グンゼは主に食品会社に素材を販売してきたが、成長が難しいとみて撤退を決めた。

小林製薬はそれまで麴を扱った経験はなかった。引き継いだ製造設備を大阪工場に移設、グンゼの技術を手順書に落とし込み、グンゼの同事業の従業員6人を引き受けて、紅麹原料の製造を開始した。譲渡に際し、グンゼから健康被害を引き起こすリスクがあるとは聞いていなかったとしている。


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