心臓・血管修復パッチ「シンフォリウム」発売

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福井県の衣料素材メーカー、福井経編興業(福井市)が開発した心臓・血管修復パッチ「シンフォリウム」が6月12日、発売される。

患者の成長に合わせて伸びる機能で手術回数を減らす効果が期待できる。

本件の開発については、6月8日のNHKの新プロジェクトXで、「技術よ 小さき命を救え 〜町工場 夢の心臓・血管パッチ開発〜」として詳しく取り上げられた。(NHKオンデマンドでみられる。)

年間売り上げ目標は2億円ほど。販売は、共同開発した帝人のグループ会社「帝人メディカルテクノロジー」が担う。同社が取り扱う先天性心疾患向けの既存パッチの売り上げは年間9~10億円で、うち2割をシンフォリウムに置き換えたいという。今後は欧米など海外での販売も目指す。


ドラマ「下町ロケット ガウディ計画」のモデルとなり、医療分野への挑戦という同社の希望も託された心臓パッチが10年の時を経てついに市場へ挑む。

(「下町ロケット」では心臓手術などが取り上げられているが、本筋は下請けが大手メーカーと争う話で、心臓・血管修復パッチの話は取り上げられていない。)

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日本では約100人に1人の割合で「先天性心疾患」の赤ちゃんが生まれている。

「先天性心疾患」は、生まれつき心臓の中のしきりに穴があったり、出入りする血管が狭くなったりしている病気で、手術では「パッチ」を使って穴を塞いだり血管を広げたりする。

既製品のパッチは動物由来の素材が多く、人体に使用すると異物反応による劣化が起こりやすい。

患者の成長に伴い再手術によるパッチの交換はほぼ不可欠で、患者や家族にとって身体面や精神面、金銭面の負担が重い。

心臓病の子どもにとって負担の大きな再手術のリスクを減らすため、心臓外科医・根本慎太郎氏(大阪医科薬科大学病院・小児心臓血管外科診療科長)のアイデアをきっかけに、福井経編興業が伝統的な繊維産業の高度な経編の技術によって、「患者の自己組織に置き換わり、身体の成長に合わせて伸張可能な特殊素材のパッチ」の試作品を考案した。

福井経編興業では、まず子供の成長に合わせ、拡がるパッチを検討したが、失敗した。

拡がるのではなく、まず大きなパッチをつくり、溶ける繊維を使って縮小するというアイディアを考えた。同社の持つ経編み技術を生かし、吸収性糸が溶けると非吸収性糸の編み目がほどけ、血管の成長とともにパッチが伸びるしかけを施した。

吸収性糸が解けた後は約2倍まで伸長し、小児時点で手術した場合も再手術の必要性は少なくなる


しかし、血が漏れるという問題が発生、福井経編では解決できず、取引先の帝人に持ち込んだ。

帝人では長期の研究の結果、ゼラチンとグリセリンの組み合わせで、編地に対して血液漏れを防ぎかつ自己の組織に置き換わる機能を持つゼラチンを一体化する技術を開発、問題を解決した。帝人は製品化に向けた設計開発や薬事申請などを担う役割として本計画に参画した。

大阪医科薬科大学病院、福井経編興業、帝人の3者の共同研究の結果、生分解性合成高分子糸(ポリ-L-乳酸:PLLA 糸)と非生分解性合成高分子糸(ポリエチレンテレフタレート:PET 糸)から構成される編物に架橋ゼラチン膜を複合化した合成心血管パッチ「シンフォリウム」を完成、20195月に開始された臨床試験においては、本製品によると考えられる不具合や再手術は、現在まで発生していない。



2023/7/11付で厚生労働省より製造販売承認を取得した。

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