中国、台湾からの輸入製品134品目に対する関税優遇措置を停止へ

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中国政府は 、台湾から輸入する潤滑油など134品目に対 し、6月15日から追加で海峡両岸経済協力枠組み協定(ECFA)に基づく関税の優遇措置を停止すると発表した。

国務院関税委員会は2023年12月21日に、台湾が一方的に中国大陸の産品に対して差別的な輸入禁止や制限などを行っており、ECFAの規定に違反しているとして一部品目の関税譲歩を停止したが、台湾は未だに有効な措置を講じていないためとしている。

5月20日に就任した台湾の頼清徳総統は中国側が主張する「1つの中国」の原則を認めておらず、これに反発した中国軍が23日と24日に台湾周辺で軍事演習を行ったばかりで、中国は軍事だけでなく経済の分野でも頼政権への圧力を一層強めているとみられている。

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中国国務院関税税則委員会は2023年12月21日、海峡両岸経済協力枠組み協定(ECFA)に基づいて台湾に対して実施している関税引き下げ措置を一部の品目につき停止すると発表した。2024年1月1日から実施される。


関税引き下げ停止措置の対象となる品目は、パラ-キシレン、プロピレン、塩化ビニルなどの12品目の石油化学品。ECFAに基づき、いずれもゼロ関税が適用されているが、措置の実施後は、品目ごとに規定された関税率(1%~10%)が付加される。

同委員会は措置の実施理由について、台湾が一方的に中国大陸の産品に対して差別的な輸入禁止や制限などを行っており、ECFAの規定に違反しているためと説明した。

台湾側は「国家安全」、「産業発展」上の理由から、他のWTOメンバーに対するよりも厳しい経済交流規制を中国に適用してきた。

その典型例が品目別の対中輸入規制である。2024年2月19日現在 2,513品目の中国製品が輸入禁止扱いとされている。その数は全品目の20.0%に相当する。主たる輸入禁止品目は、農水産品、卑金属・同製品、紡織原料・同製品、機械・電機、輸送機器・同部品である。

中国商務部は2023年12月15日、中国に対する台湾の貿易制限措置について貿易障壁調査を行った結果、台湾が実施している措置は「貿易障壁」と認定していた。

商務部は調査によって明らかになった事項として、次の5点を挙げた。

  1. 台湾は関係法規により中国大陸産の製品に対し輸入禁止制度を実施している。
  2. 台湾が輸入禁止としている中国大陸産の製品の数量は膨大で、かつ近年その範囲が拡大傾向にある。
  3. 台湾が中国大陸産の製品を輸入禁止とする具体的なプロセスが公開されておらず不透明だ。また、輸入禁止により影響を受ける企業が、そのプロセスに参与する機会がなく、救済措置もない。
  4. WTO事務局は台湾の関連措置に対し、注視すると複数回述べているが、台湾は措置の改善をしておらず、WTOへの通報義務も履行していない。
  5. 海峡両岸経済協力枠組み協定(ECFA)により、中国は、台湾に対し優遇措置を長期にわたり実施しているが、台湾は中国に対する貿易制限を実質的に減少させていない。

中国の対外貿易障壁調査規則第33条では、貿易障壁調査の対象となる措置や慣行が同規則第3条に定義する「貿易障壁」に該当すると認定された場合、商務部は状況に応じて2者協議の実施やマルチの紛争解決メカニズムの開始、その他適当な措置を取ることができるとしていた。

商務部の束珏婷報道官は12月12日の定例記者会見で、商務部が台湾に対して実施した貿易障壁調査の結果、台湾がECFAの規定に違反していると判断したことに触れた上で、「(台湾与党の)民進党当局が断続的に、さまざまな口実や手段を用い、両岸の交流と協力を妨害している」とコメントした。

これに対し台湾側は、中国側による対台湾貿易障壁調査プロセスにおける透明性の欠如、台湾側との協議の意図的排除、一方的な結果の認定とECFAの部分的停止がWTOやECFAの規範・規定に反しており、当該調査に基づくECFAの部分的停止は「経済的威圧」の一環だと批判している。短期的には選挙への介入、長期的には統一促進、台湾経済の弱体化と「中国大陸へのロックイン」などを狙ったものだと、台湾で対中政策の企画・執行を担っている大陸委員会は指摘している。

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両岸経済協力枠組協議(海峡兩岸經濟合作架構協議、Economic Cooperation Framework Agreement=ECFA)は、台湾と中国が締結した実質的な自由貿易協定(FTA)である。

台湾立法院が2010年6月に承認し、2011年初から実施された。

協定締結時に優先実施項目として

・中国側が539品目、台湾側が267品目の関税を段階的に削減し、3年目からゼロにする、
・中国は金融、病院の設立、会計士など11のサービス分野の参入条件を緩和する、
・台湾の銀行支店開設申請要件を事務所開設後2年から事務所開設後1年に緩和する、

などがおもな内容。

中台関係は、台湾に馬英九政権が発足した2008年以降、急速に改善し、「三通(直接の通航、通商、通信)」、中国人観光客の受け入れ、台湾の対中投資規制の緩和や中国からの直接投資の受け入れ解禁などの規制緩和が実現した。

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