原子力発電所の運転期間の60年超への延長を盛り込んだGX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法は2023年5月31日の参院本会議で可決、成立した。既存の原発を可能な限り活用し、電力の安定供給と温暖化ガスの排出削減を目指す。
原子力規制委員会は2022年12月21日、原子力発電所の運転開始から30年以降、10年以内ごとに繰り返し運転を認可する新ルール案を了承した。現行ルールを上回る「60年超」運転が可能になる。
法改正前のルールでは、運転開始から40年を迎える原発は、規制委の運転延長の審査に合格した場合に限り1回のみ最長20年の延長が認可される。また、これとは別に、運転開始から30年以降の原発は、10年ごとに「高経年化対策」も実施されている。
新ルールはこれらを一本化する内容で、規制委は電力会社に対し、施設の劣化を管理する長期計画の作成を義務づけ、安全性を確認すれば運転延長を繰り返し認可する。福島原発事故以前の規制に戻すこととなる。
電力会社は運転開始30年を起点に最長10年ごとの管理計画をつくり、規制委の審査を受ける必要がある。
下図は2023年5月31日の法改正時点のもので、「現行」は法改正前のもの。「規制委検討案」が現在のもの。
2023/6/1 GX脱炭素電源法が成立、原発運転「60年超」可能に
法の成立を受け、関西電力が2023年12月に規制委に申請した。
3号機は運転開始から今年で33年目、4号機は31年を超えている。
2基とも旧制度で設備の劣化点検の結果などを踏まえて40年までの運転が認められていたが、新制度ではさらに、安全確保に必要な部品や設備が製造中止になった場合に備えて、情報収集の仕組みや代替品の活用といった対応方針も審査した。
今回の認可で、大飯3号機は2031年12月、4号機は33年2月まで運転できるようになった。
今後も運転を延長する場合、10年以内ごとに同様の認可を受ける必要がある。
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なお、原子力規制委員会は5月29日、来年で運転開始40年を迎える関西電力高浜原発3号機、4号機について、60年までの運転を認可した。同原発の1号機、2号機はすでに延長の認可を得ており、4基全てが60年稼働となる。
日本全体で8基が60年稼働となる。
これが適用されたこれまでのルールでは、運転開始から40年を迎える原発は、規制委の運転延長の審査に合格した場合に限り1回のみ最長20年の延長が認可された。また、これとは別に、運転開始から30年以降の原発は、10年ごとに「高経年化対策」も実施されていた。(上図の「現行」参照)
2024/6/1 関西電力高浜原発3、4号機、60年稼働へ
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