TAVI方式が無理との判断で、心臓血管外科に引き継がれた。
当初は80歳以上ということで前向きでなかったが、面談し、身体の様子をみて、引き受けてくれた。
事前にいろいろの検査をして、当日を迎えた。
全身麻酔ですぐに意識を失った。以下はいろいろの資料で調べたもの。実際の処置と異なっている可能性はある。
1.経食道心臓超音波
口からカメラを飲み込ませ、食道(心臓の裏側)から撮影してチェックする。
2.胸骨正中切開
胸骨を縦割し、開胸器で大きく広げて、心臓の全てがよく見える状態にする。
→ 後述の通り、今回は吸収糸での埋没縫合のため、傷跡はしばらくすると消えた。 但し、胸骨を留めたステンレスワイヤーの 端が皮膚の下に点々と見える。
3.人工心肺を設置
汚れた血(静脈)の心臓への入り口を遮断し、血を人工心肺に流す。
きれいな血(動脈)の出口を遮断し、人工心肺から全身にきれいな血を流す。
これにより、手術の間は心臓には血が流れないようにする。
なお、心臓を 長期間止めていると、心筋が傷むため、心筋保護液を注入する。
今回の心臓停止は約1時間とのことであった。
4.大動脈弁交換
大動脈遮断による心停止のもとに大動脈を切開し、狭窄している大動脈弁を切り取って、新しい弁(ウシの心膜)を縫い付ける。
グルタルアルデヒド緩衝溶液中で保存されたウシの心のう膜を柔軟性のあるステントに取り付けた三葉の生体弁
5. 切断した大動脈の縫合
6.追加処置(大動脈瘤の処理)
通常、大動脈は直径が20~25mmだが、手術付近で、直径が40mm、長さ80mmの筒状になっている。
厳密な意味での動脈瘤ではないが、やはりリスクがあるとして、対策をとってくれた。人工血管で太い部分をラッピングした。
人工血管/オープンステントグラフトJ GRAFT (グラフト素材:ポリエステル。ステント素材:ニッケルチタン合金)
7.人工心肺を外し、心臓を動かす。
流速は1.9m に向上、正常値である。
8.最終措置
胸骨を戻し、ステンレスワイヤーで締める。
皮膚の縫い付け。
吸収糸で埋没縫合(糸が外に出てこず、抜糸が不要な縫い方)する。
皮膚は、表皮、真皮、皮下組織の3層になっている。従来は表皮も含めて縫い付けたが、埋没縫合では表皮と皮下組織だけを縫い付ける。表皮は分かれたままで、しばらくは創保護剤でカバーする。暫くすると自然に切り目がくっつく。内部の糸も溶けて排出される。
糸は「ポリグリコール酸」などの「高分子生分解性熱可塑プラスチック」で作られている。
水に触れるとつながっている分子がバラバラになり分解されていく「加水分解」という性質を持っているため、吸収糸は手術で縫い合わされた後、体内の水分によって次第に分解され、最後には二酸化炭素と水になり、体外に排泄される。
縫い目がまったく見えない。
皮膚表面に「カラヤヘッシブ」という名称の創保護剤(ハイドロコロイド創傷被覆材)でカバーしている。
手術3週間後に保護剤を外した。
1年半経過で、傷跡はほとんど見えない。ただし 胸骨を留めたステンレスワイヤーの 端が皮膚の下に点々と見える。
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手術の翌々日に一般病棟に移り、トイレは歩いていった。
一般病棟に移って1 時間後に執刀医が病室に見に来た。前夜もほとんど寝ていないのを知っていたため、バテていると思ったが、ベッドに座り、パソコンでグラフを作成していたので、驚愕していた。
翌日にはシャワー、翌々日には病院のジムでリハビリを開始。ストレッチのあと、自転車5分、またストレッチを行った。
手術11日後に退院した。退院翌日からジム通いを続けている。
半年に1回の検査を続けている。
その後、病院の要請で心肺機能のテスト(多くの機器をつけて自転車をこぐもの)を行ったが、優秀な結果と言われた。
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これで、身体の上(喉)から、下(尻)から、前(へそ)から、後(背中)からの内視鏡手術と、手首の血管からのカテーテル手術と続き、最後は(足の血管からのカテーテル手術の予定であったが、検査の結果実施不能で、)開胸手術となった。
なお、この開胸手術で身体障害者1級となった。
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最初にも書いたが、それぞれについての経験と、 好奇心から調べたもののまとめである。
あくまで素人の知識・理解であり、間違っているところもあると思われる。
参考にされるのはよいが、最終的には医師に相談してほしい。
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