EUは、中国から輸入される電気自動車(EV)が、中国政府からの補助金を受け、EU市場での競争をゆがめているとして、2023年10月から調査を行っていた。
その結果、中国のバッテリー電気自動車(BEV)のバリューチェーンが不当な補助金を受けており、これがEUのBEV生産者に経済的な損害の脅威をもたらしていると暫定的に結論づけた。また、調査では輸入業者、ユーザー、およびEUのBEV消費者への影響や結果も検討された。
そのため、委員会はこれらの調査結果を中国当局と協議し、WTOに準拠した形で問題を解決する方法を模索している。
欧州委員会は中国から輸入されるBEVに対して暫定的な相殺関税を課すレベルを事前に公表している。中国当局との協議が効果的な解決策に至らない場合、これらの暫定的な相殺関税は7月4日から保証金として導入され、最終的な関税が課される場合に徴収される。
欧州委員会がサンプルとして選定した3つの中国の生産者に対して適用する関税率は以下の通り。
- BYD:17.4%
- 吉利汽車(Geely):20%
- 上海汽車(SAI):38.1%
- その他、調査に協力したがサンプルに選ばれなかったその他の中国のBEV生産者には21%
- 調査に協力しなかった他のすべての中国のBEV生産者には38.1%
現在の関税率は10%で、これに上記が加算される。 上海汽車の場合、48.1%となる。
対象となるのは、中国メーカーに加えて、中国で製造する欧米その他のメーカーも含まれる。
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付記
EUは10月29日、中国から輸入した電気自動車(EV)に最大35.3%の追加関税を課すことを正式に決めた。10月30日から5年間、従来の関税率である10%に上乗せする。
欧州委員会によると、中国勢のEVは欧州勢より2割ほど安く、低価格を武器にシェアを2020年の1.9%から2024年4~6月には14.1%まで急伸させている。
一方で、減税や好条件での融資などの間接的な形も含めた過剰な補助金に支えられているとも指摘されている。EU加盟27カ国は10月4日に投票を実施。賛成10、反対5、棄権12となり、欧州委は課税に必要な支持を得た。その後も中国側と最低価格の設定などの解決策について協議したが、溝は埋まらなかった。
- 賛成 10 : Bulgaria, Denmark, Estonia, France, Ireland, Italy, Lithuania, Latvia, the Netherlands and Poland. (45.99% of the EU population)
- 反対 5 :Germany, Hungary, Malta, Slovenia and Slovakia. (22.65%)
- 棄権 12 : Belgium, the Czech Republic, Greece, Spain, Croatia, Cyprus, Luxembourg, Austria, Portugal, Romania, Sweden and Finland. (31.36%)
追加関税率は、上海汽車(SAIC)の35.3%が最高で、吉利汽車(Geely)は18.8%、比亜迪(BYD)は17.0% 、中国で生産する米国のTeslaは7.8%。
他のメーカーで調査に協力したメーカーは20.7%、協力しなかった他のメーカーは35.3%。
各社との交渉などの結果、7月に示した暫定税率から0~2%ほど下げた。
中国商務省は30日、「中国は引き続き、中国企業の正当な利益を断固として守るために、あらゆる必要な措置を講じる」との報道官談話を発表し、さらなる対抗措置の発動を示唆した。中国政府は、中国製電気自動車への追加関税を支持する欧州諸国への大型投資を一時停止するよう国内自動車メーカーに指示した。
追加関税案を巡る投票で棄権した国への投資は慎重にし、反対した国には積極的に投資するよう通達したと明らかにした。加盟国による投票ではフランスやポーランド、イタリアなどが追加関税適用に賛成した一方、ドイツなど5カ国は反対票を投じ、12カ国は棄権した。
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中国から輸入されるEVの6割は米Tesla や仏ルノーといった欧米メーカーの製品である。
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そのうえで「われわれはEUに対し、自由貿易を支持し、保護主義に反対するという約束を厳守するよう求める。中国は、あらゆる必要な措置をとってみずからの合法的な権益を断固として守る」と述べ、対抗措置をとることを示唆した。
ドイツ政府の報道官は12日の記者会見で「われわれにはさらなる貿易の障壁は必要ない」と述べ、中国のEVに対する関税の上乗せに慎重な姿勢を示した。来月4日までには「まだ時間はある。友好的な解決にたどり着くことが望ましい」として、協議を通じて上乗せが回避されることに期待をにじませた。
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