米国、貿易相手国の通貨政策を分析した半期為替報告書を公表、日本は再度「監視リスト」に

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米財務省は6月20日、貿易相手国の通貨政策を分析した半期為替報告書を公表した。2023年12月までの4四半期の外国為替動向を対象としている。
     https://home.treasury.gov/system/files/136/June-2024-FX-Report.pdf

「為替操作国」基準にかかった貿易相手国・地域はなかった。

2019年8月に中国が、2020年12月にスイスとベトナムが「為替操作国」となった。それ以降、2022年11月までの間は、基準では対象となる国があったが、米財務省の判断で実際は非認定となった。
今回は基準でも対象となる国はなかった。

米財務省は為替操作国に指定する条件として(1) 対米貿易黒字の規模 (2) 経常黒字の規模 (3) 継続的な通貨売り介入――を掲げている。

  従来の基準 2019/5より改正
①重大な対米貿易黒字 対米貿易黒字が200億ドル(米国GDPの約0.1%) 以上 同左
②実質的な経常黒字 経常黒字がその国のGDPの3.0%以上 GDPの2.0%以上
③外為市場に対する介入 GDPの2%以上(ネットで)の額の外貨を繰り返し購入
(12カ月のうち、8カ月
同左
(12カ月のうち、6カ月


3基準全てに該当すれば「為替操作国」となる。

次の場合、「監視リスト」に入る。
  2基準に該当 & 1基準だが、前年「監視リスト」の場合
  なお、中国は常時、「監視リスト」

日本は永く2項目でひっかかり、「監視リスト」に入っていた。2022年11月から1項目だけとなり、2023年6月と2023年11月は「監視リスト」から外れた。しかし今回、①対米貿易黒字に加え、②実質的な経常黒字で該当し、再度、『監視リスト」に入った。

日本の経常黒字は、下図 (報告書に記載)の通り、2015年以降、GDPの3%(2019/5より2.0%)を超え、対米黒字と合わせ2基準でかかっていた。2022年は2%を下回り、(時期のずれで)2022/11~2023/11の3期が1項目だけ該当となった。しかし、2023年には経常黒字は再び2%を上回り、今回、2項目で該当することとなった。日本の経常黒字は最近はGDPの2~4%の範囲で動いており、米国が基準を2%としたために、基準に該当したり、しなかったりするだけである。

今回、操作国に戻ったことについて、鈴木財務相は、「米国が日本の為替政策を問題視していることを意味するものではない」としている。

日本は2023年12月までの4四半期には外為市場への介入していない。(本年4~5月の介入は、通貨安誘導ではなく、為替操作国の基準にも該当しない。)

ーーー

今回は、日本に加え、前回に続き2項目の台湾、ドイツ、ベトナム、シンガポールと、今回1項目となったが前年監視リストに入っていたマレーシア、1項目だが常時「監視リスト」の中国の合計7カ国が「監視リスト」に載った。

昨年の監視リスト入りの6カ国に、新しく日本が加わる形となった。なお、③「外為市場に対する介入」でひっかかったのはシンガポールだけであった。 

操作国
3基準  
監視国
2基準  
監視国
1つで前年監視対象 &中国 丸数字は問題となった項目

                 
  日本 中国 韓国 台湾 ドイツ スイス インド アイルランド ベトナム イタリア マレーシア シンガポール タイ メキシコ
2016/4
2016/10
2017/4
2017/10
2018/4
2018/10
2019/5
 

①②



①②

 

 

①②

①②

①②

①②

2019/8   操作国  
2020/1
①②


①②

①②

①②

 



①②

①②

2020/12
①②


①②

①②

①②
操作国
①③
操作国
①②

①②


①②
2021/4
①②


①②
操作国
非認定

①②
操作国
非認定

①③

①②
操作国
非認定

①②

①②


①②

①②
2021/12
①②

①②

①②
操作国
非認定

①②

①③

①③

操作国
非認定

①②

①②


①②

①②
2022/6
①②


①②

①②

①②
操作国
非認定




①②



2022/11


①②

①②

①②
操作国
非認定







2023/6



①②

①②






①②



2023/11



①②

①②




①②


①②



2024/6
①②



①②

①②




①②





 赤字が為替操作国基準にひっかかった項目

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