敦賀原発2号機、新基準不適合 規制委「活断層否定できず」

| コメント(0)

原子力規制委員会は7月26日、日本原子力発電(原電)の敦賀原発2号機(福井県)を巡り原子炉の真下に活断層がある可能性を否定できないとの結論を出した。

同日の審査会合で規制委の審査チームが見解をまとめた。山中伸介委員長も出席する7月31日の定例会合に結果を報告し、規制委としての正式判断を出す。

同原発は2011年の東京電力福島第1原発事故後にできた新規制基準に適合できず、再稼働ができない。規制委発足以降、審査で事実上の不合格となった場合、全国初となる。

日本原電は26日の会合でも「活断層ではない」との主張を繰り返したが、規制委側は認めなかった。

同社は追加の調査を行う意向で、再度修正した資料に基づく議論の継続を求めた。規制委の石渡明委員は「1年審査をしてきて、結論を出せる段階だ」として追加調査を退けた。規制委の定例会合に原電の意向を伝え、議論する。


敦賀原発の敷地内にある断層を巡っては2つの争点で議論が進められてきた。

1つ目は原発300メートルほど北側の「K断層」が活断層かどうかで、規制委は5月末の審査会合で「活動性を否定することは困難」との見解をまとめた。

2点目が断層から2号機の原子炉建屋の真下にまで延びる地層の割れ目(D-1断層)も、同様に活断層と判断するかどうかだった。

原電は原子炉直下に活断層があることを否定してきたが、規制委は「科学的妥当性を判断することが困難」などとし、活断層の疑いを否定できないとの結論を出した。

規制委の主張:

K 断層は活断層である。K 断層と2号機の下を通るD-1 断層はつながっており、D-1も活断層の可能性がある。

原電の主張:

D-1 断層とつながるのはk断層ではなく、G 断層であり、G 断層は活断層でないため、D-1 断層も活断層でない。

規制委が審査チームの結論を追認した場合、「新規制基準に適合しない」として不合格の審査書案を作成することになる。

正式に了承されれば、敦賀原発2号機は再稼働を認められないことになる。原電は再び稼働の申請をするか、廃炉するかなどの判断を迫られる。

これまでの経緯は以下の通り。

2012年12月10日、 原発敷地内の断層を調査した原子力規制委員会が、外部の専門家4人を交えた評価会合で、2号炉建屋直下の断層(D-1断層)を活断層の可能性が高いと判断した。

2012年12月1 & 2日の現地調査では、2号機直下を通る断層「D-1」と浦底断層の合流地点付近を重点調査 し、D-1の近くに新たな断層(K断層)が確認され、断層ができた原因は浦底断層の活動とほぼ同じ力が加わったためとの見方で専門家らが一致。力のかかり方は現在も変わらないとみられ、評価会合では、この断層は将来も動く可能性が否定できないと結論づけた。

島崎邦彦・原子力規制委員長代理は会合後、2号機の直下を通る断層(D-1断層)について「活断層といって差し支えない。浦底断層の動きによって一緒に動いた、そういう活動だろう」と述べ、活断層の可能性が高いとの見方を示した。

専門家の意見を受け、規制委の田中俊一委員長は「今のままでは再稼働の(前提となる)安全審査はとてもできない」と述べ、再稼働を認めない考えを示した。

原子力規制委員会は2013年5月22日、定例会議を開き、敦賀原発2号機の原子炉建屋直下を走る断層を「活断層」と断定した有識者会合の報告書を了承した。

日本原電はこれまで強く反論してきたが、規制委は、得られたデータから十分判断できると、主張を受け付けなかった。

一方、原電はK 断層の横にあるG 断層がD-1 断層の延長部だと主張、G 断層には最近動いた痕跡がないため活断層ではなく、G 断層につながるD-1 断層も活断層ではないと主張した。


原電の依頼を受けて第三者の立場から同断層について調査した海外の専門家などによる検討チームの中間報告が2013年5月21日に発表された。

中間報告では断層は活断層ではないとした原電の見解を「支持する」としながら、確定的な結論には「より広い範囲を調査する必要がある」とし ている。

メンバーの地質学者 Dr. Kelvin Berryman は「非常に限られたデータしかないが、現時点では活断層はないと考えられる。活断層であることを示すデータは一切なかった」と述べた。

古い断層の評価は技術的に極めて困難で、両者とも直接的な証拠は示してない。
規制委が最終的にD-1は活断層と判断したのは、原発の耐震設計指針に「可能性を否定できなければ耐震設計上考慮する活断層とみなす」との規定があるため。

島崎邦彦委員長代理は5月22日の規制委で「否定できないものは安全側の判断をする」と明言した。

2013/5/27 原子力規制委員会、敦賀2号機直下の断層を活断層と断定

原子力規制委員会は2015年11月19日、原子炉建屋直下に「活断層」があると指摘されている敦賀原発2号機について、初めての審査会合を開き、まずは直下断層の活動性と、これに連なる活断層を震源とする地震動の2点に議論を絞り、施設面の審査は保留する方針を示した。


日本原子力発電の敦賀原発2号機の再稼働に向けた審査について、原子力規制委員会は2023年4月5日、日本原電が審査資料の誤記を繰り返し、改善がみられなかったとして、審査を一時中断することを決めた。

2020年2月にデータの無断書き換えが発覚、審査が約2年中断したが、2022年12月に再発防止の社内態勢が整ったとして審査を再開した。しかし、審査が再開した後も、 前年12月に157件、3月には更に8件の誤りを報告した。資料の誤りは累計で約1300件に上り、実質的な審査ができていない。

今後の方針として、
①申請書をいったん取り下げさせ、内容を精査した上で再申請させる
②申請書のうち、誤りが多数見つかっている原子炉直下の断層に関する部分を修正し、8月末までに補正を提出させる――の2案が示された。  

規制委はこの日の議論で、②案を採用することを決定した。

2023/4/7 敦賀原発2号機の安全審査を再中断


相次ぐ資料の不備で中断が続いていた敦賀2号機の再稼働に必要な審査が、2023年9月22日、半年ぶりに再開された。

日本原電が2023年8月に改めて申請書を提出し、内容に明らかな不備は認められなかったことから、規制委員会は審査の再開を決め、22日、半年ぶりに審査会合が開かれた。

会合では、日本原電が、提出した資料は社内のチェック体制を強化して作成したことや、断層の活動性を否定するために新たな手法でデータを拡充したことなどを説明した。

これに対し規制委員会側は提出された資料の内容に誤りや不足はないか改めて確認し、日本原電は正確で十分なものだと答えた。

そのうえで、規制委員会側は2023年12月上旬にも現地調査を行い、焦点となっている断層の活動性を否定するため日本原電が提出したボーリング調査の結果などを確認する方針を示した。

原子力規制委員会の石渡明委員や原子力規制庁の審査官たちは、2023年12月14日に敷地内の地面を掘った「トレンチ」と呼ばれる場所を訪れ、断層の広がり方や地層の状況を確認した。

原電側が「活断層ではない」として主張する断層の切れ目近くの上部に「断層のようなものを確認した」と指摘、日本原電に対し、さらに詳しい資料を提出し、審査の中で説明するよう求めた。

石渡委員は「今回、新しく見えてきたものもあり、調査に来た甲斐があった。今後、審査会合で議論したい」と述べた。

規制委は2024年2月9日、2号機の審査会合を約2カ月ぶりに開いた。この日は、現地調査やそれまでの審査で規制委が指摘した項目について、原電が回答を用意してくるはずだった。

しかし原電は「準備ができなかった」としてこの日の回答を見送り、回答の一部を3月、大半を5月に行うと表明した。


2024年5月31日の審査会合では原子炉近くを走る断層が動くかどうか議論され、日本原電が断層の状況を調べるために行った敷地内の地層の観察結果や、地層に含まれる火山灰の分布の解析などから、断層のある地層の年代は古く、将来動く可能性はないと改めて主張した。

これに対して規制委からは、地層の堆積状況が複雑であることや、地層の年代について説明の根拠が不足していることなどが指摘され、現時点での結論として「活動性を否定することは困難」とする評価が示された。

規制委員会は次週に現地調査を行い、ボーリング調査で採取したサンプルや、地層の状況を直接確認することにしていて、その結果などを元に最終的な判断をする とした。

原子力規制委員会の現地調査が6月6日から始まり、焦点となっている敷地内の断層について、日本原電側から説明を聞きながらボーリング調査で採取した地層のサンプルを直接確認したが、事業者側から原子炉建屋の真下につながっていないとする新たな根拠は示されなかった。

コメントする

月別 アーカイブ