米食品医薬品局(FDA)は7月2日、米医薬品大手 Eli Lillyのアルツハイマー病薬「Donanemab AZBT(製品名 Kisunla™)」を承認した。
エーザイとBiogenの認知症薬「LECANEMAB」に続く認知症治療となる。
2023年1月19日にはFDAが迅速承認(Fast track)を認めなかったが、今回承認された。
Aβペプチドは脳内に沈着し、過剰になると互いに結合してタンパク質プラークを形成する。
ドナネマブは、このタンパク質プラークを標的とし、脳内で負担となる余分なタンパク質を除去する。
単に新しいプラークの沈着または既存のプラークの成長を防ぐのではなく、沈着したプラーク自体を標的にすることが、脳から既存のアミロイド負荷を取り除くために必要である。
以前のプラーク結合抗体のいくつかは、脳に微小出血を引き起こしたために放棄されたが、ドナネマブは微小出血を引き起こすことなくマウスのプラークを除去することが報告されている。
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Eli Lillyは1瓶695.65ドル(約11万円)でDonanemabを販売する。30分間の点滴を13回実施する年間の治療費は3万2000ドル。レカネマブが米国で2023年に発売した際の価格は年2万6500ドルだった。
外部の専門家によるFDAの諮問委員会は6月、Donanemabの承認推奨を全会一致で決めた。Donanemabはレカネマブと同じく、病気の原因物質の一つとされるアミロイドに結合して除去する。
イーライ・リリーはDonanemabをめぐって、日本の厚生労働省にも承認を申請中。
エーザイとBiogenの認知症薬「LECANEMAB」と今回の Eli Lillyの「Donanemab AZBT」との違いは下記の通り。
レカネマブは「プロトフィブリル」というアミロイドβの中くらいのかたまりと、より大きなかたまりのアミロイド斑の両方に結合すると考えられている。
脳に沈着が始まる段階のアミロイド斑に効率よく結合して除去する。
一方ドナネマブは、脳に沈着してからしばらく時間が経ち、「ピログルタミル化」という目印のついたアミロイド斑に選択的に結合する。
脳に沈着したアミロイド斑を効率よく除去する。(国立長寿医療研究センターの解説より)
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アルツハイマー型認知症の原因は未だ解明されていないが、進行に伴っていくつかの特有の病変が見られる。例えば、神経細胞の外側では「アミロイドβ」が蓄積して老人班を形成し、神経細胞の中では「タウタンパク」が蓄積してタンパク質が糸くず状に変化したようなもの(神経原繊維変化)が見られるようになる。
新薬開発(アミロイドβ仮説)
注) 一般名の末尾の「マブ」はモノクローナル抗体医薬の意味。
末尾の「ビル」は抗ウイルス薬、「ニブ」は キナーゼ阻害薬
米食品医薬品局(FDA)は6月7日、エーザイと米バイオジェンが共同で開発するアルツハイマー型認知症治療薬候補 ADUHELM(一般名:アデュカヌマブ)について、脳内のアミロイドβプラークを減少させることにより、アルツハイマー病の病理に作用する初めてかつ唯一の治療薬として、迅速承認(accelerated approval)したと発表した。2023年7月にフル承認。
アミロイド斑(プラーク)は、アミロイドβ蛋白が蓄積したもので、アルツハイマー病患者の脳にみられる。新薬はこのレベルを下げるもの。
2021/6/8 エーザイとバイオジェンのアルツハイマー新薬、米で承認
エーザイとBiogenは2023年1月7日、米国FDAがアルツハイマー病の新薬の抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体LECANEMAB(開発コード:BAN2401、米国ブランド名:LEQEMBI™ 注射 100 mg/mL 溶液)について、アルツハイマー病の治療薬として、迅速承認したと発表した。2023年7月6日に本承認した。
日本では2023年9月25日に「アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症の進行抑制」の効能・効果で製造販売承認を取得した。
LECANEMAB(BAN2401)は、アルツハイマー病に対する免疫療法剤創製を目的としたヒト化モノクローナル抗体で、ベータ・アミロイド(Aβ)を分解除去する。
2023/1/9 エーザイのアルツハイマー治療薬、FDAから迅速承認を取得
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