がん細胞だけを吸着する独自の特殊ポリマーで癌の根治へ(住友ゴム/ 大阪大学、九州大学)

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住友ゴムは7月19日、大阪大学大学院医学系研究科の山本浩文教授らの研究グループと、がんの新たな治療法の開発を 目指す共同研究を推進すると発表した。

同社が開発した特定のがん細胞を血中から吸着する特殊ポリマー を採用した「がん細胞吸着キット」を活用することによりがん細胞を活性化するメカニズムを明らかにするというもの。


がんに罹患すると血液中に血中循環がん細胞(CTC:Circulating Tumor Cell) が発生する。がん細胞が原発巣(がんが最初に発生した場所)から血流に入り、循環している細胞で、がんの進行状況などの評価や再発リスクの評価に有効である。

ただ、がん細胞は血中にごく僅かしか存在しないため、従来の血液を遠心分離する方法では原因となる特定のがん細胞と 血液細胞を完全に分離することが難しく、より精度の高い治療⽅法の選択に限界があった。

今回、住友ゴムが開発したがん細胞吸着キットに使用する独自の特殊ポリマーは、中間水の働きで特殊ポリマーの硬さを制御することで特定のがん細胞のみを吸着させる事が可能である。

また取り出したがん細胞を長期培養させることも可能となりつつあり、より多くのがん細胞を回収できる。対象疾患もこれまでの 大腸がん、肝細胞がん、膵がんから前立腺がんや乳がんにも拡大していく。

CTCの研究を通じて、がん細胞の増殖や転移を促進する細胞内のメカニズムであるがん活性化シグナルを明らかにし、より多くの患者に、そのシグナルを阻害する 分子標的治療薬 の投与に結びつける。

現在、山本浩文教授らの研究グループと住友ゴムが開発した「がん細胞吸着キット」を活用し、がん細胞を活性化するメカニズムを明らかにする共同研究を進めている。この研究にはがん細胞の活動を規定する分子相関係数と人工知能を駆使した最新の解析モデルを導入している。

培養したがん細胞を利用することで新薬開発の可能性が広がり、山本教授らの研究グループが進める将来的にがん根治を目指す「ムーンショット計画」の共同研究を加速させる。

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住友ゴムの「がん細胞吸着キット」と全く同じ考えが、九州大学先導物質化学研究所の田中賢教授により「血中に含まれるがん細胞の選択的分離回収技術」として発表されている。

問題意識、解決手法など、すべて同じである。

CTC(Circulating Tumor Cell;血液循環腫瘍細胞)を対象とした診断が注目を集めているが、CTCは、血液中の細胞10億個の内1個程度と極めて少ないため、血液中からCTCのみを選択的に分離することが極めて困難である。

このため、人工材料への生体物質の吸着性を制御する中間水コンセプトを設計指針として、全血からCTCを選択的かつ簡便、低コストに分離回収可能な高分子材料を開発した。

田中教授の発表を利用し、詳細を述べる。

 中間水:実験的に存在が示唆されている水の状態の一つで、0℃より低い温度で凍る水。

 吸着キットの特殊ポリマー

中間水ポリマーは、日本触媒が開発し、九州大学・先導物質化学研究所の田中賢教授との共同研究により生体適合性を確認した高い親水性を有するポリマー。

選択的吸着




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