米首都ワシントンの連邦地裁は8月5日、米アルファベット傘下のGoogleが検索エンジン市場などで反トラスト法(独占禁止法)に違反したとの判断を下した。グーグルの敗訴となる。
この裁判は、2020年にアメリカ司法省などが提訴したもの。 米司法省が巨大IT企業を相手取って起こした独禁法訴訟で実質的に勝利するのはMicrosoft以来約20年ぶり。ガーランド司法長官は「米国民にとって歴史的な勝利だ」とコメントした。
司法省などは1998年、基本ソフト(OS)とウェブブラウザー(閲覧ソフト)の抱き合わせ販売が反競争的だと主張し、Microsoftを提訴、OSの技術情報を開示することで2004年に最終的な和解にこぎ着けた 。
裁判所はGoogleに制裁を科していないが、巨大ITの商慣習にメスが入ったことで、競争手法の見直しを迫られる可能性が出てきた。
GoogleがAppleなどのスマートフォンメーカーに巨額の資金を支払い、Googleの検索エンジンをスマホに標準搭載させる契約が競合他社を排除する参入障壁となり、独占の維持につながっていると認定した。
判決によると、2020年の段階でGoogleは全検索の約9割を占めた。スマートフォンなどの携帯機器に限ると95%に近かった。英語でも「ググる(Google it!)」は「検索する」と同義語で使われている。
審理の中ではGoogleが自社の検索サービスをスマートフォンの初期設定として使ってもらうために、Appleなどに対し2021年だけで総額263億ドル、日本円でおよそ4兆円を支払っていたことなどが分かってい る。
多くのユーザーが初期設定のままで使うため、Googleの検索に伴う広告収入は2021年には1460億ドル(約21.3兆円)に達した。
一方、ライバルのMicrosoftが開発した検索エンジン Bingのシェアは約5%に過ぎない。MicrosoftはAppleに初期設定のエンジンとして採用してもらうことをもちかけているが、交渉は難航。判決によると、Apple幹部は「Microsoftがどんな金額を提示しても受けない」と述べたという。
判決はMicrosoftのブラウザー EdgeではBingが初期設定され、検索の80%に使われていると指摘。他のブラウザーなどでGoogleが初期設定を独占していることが、新規参入を妨げている証拠の一つとした。
判事はGoogleがこうした契約で、他社製品の参入を阻害し、違法に独占状態を維持していたと認めた。
Appleなどが初期設定の検索エンジンを変えたり、契約条件を変更したりすることも検討しながら、「Googleからの巨額収入を失うことになり、断念している。」
Googleの契約が「他社の競争機会を損ねており、Googleの独占に重要な役割を果たしている」
慎重に証言や証拠を検討した結果、Googleは独占企業であり、独占維持を目的に行動してきた。
これに対しGoogle側は、9割を超える市場シェアについて、「消費者が満足する製品を生み出した結果である」と主張した。
GoogleのKent Walker Global Affairs担当プレジデントは次のように述べた。
この判決は、Googleが最高の検索エンジンを提供していることを認めているが、それを簡単に利用できるようにすることは許さないとしている。
Googleは「業界最高品質の検索エンジンであり、何億人もの毎日のユーザーから信頼を得ている」、「特にモバイル デバイスでは長年最高の検索エンジンであり続けている」、「AppleとMozilla (Firefoxを提供)は、Googleの検索品質を競合他社と比較して評価し、Googleの方が優れていると判断することがある」という裁判所の判断を高く評価する。
しかし、簡単に利用できるようにするべきではないと結論付けた。
人々がさまざまな方法で情報を探していることを考慮し、我々は控訴する。
問題は複雑で、控訴審でどうなるかは不明である。
判事は他社製品の参入を阻害し、違法に独占状態を維持していたと認めたが、Googleの広告ツールがMicrosoftのBingよりも有利になるように不当に設計されているとの主張は退けた。
また、GoogleがSearch Ads 360ツール(市場の絶え間ない変化にリアルタイムで大規模に対応) を通じて競合他社の広告に必要不可欠な機能を提供しなかったという非難については、Googleはライバルを受け入れることで競争を促進する必要はないとし、Googleに同意した。
これは、サードパーティーの開発者に制限を課すことは反競争的ではなく、技術の共有を強制されることはイノベーションを阻害するとして、棄却を求めているAppleにとって重要な意味を持つ可能性がある。
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付記
米司法省が市場の違法な独占を是正するためにグーグルの事業分割の提案を検討している。複数の米メディアが8月14日に報じた。
米メディアの報道によると、下記の案が検討されている。
事業売却:インターネット閲覧ソフト Google Chrome
OS Android
検索データの競合他社への提供の強制
iPhoneにGoogle 検索を標準搭載する巨額の契約(本文参照)の破棄の義務付け
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