住友化学は8月7日、持分法適用会社PetroRabigh株式の一部を売却するとともに、同社向け貸付金の債権放棄をすると発表した。
Petro Rabighについては下記を参照
2006/3/25 ペトロラービグ起工式 2009/4/10 Petro-Rabigh スタート・アップ 2009/4/21 住友化学とアラムコ、「ラービグ第2期計画」の共同FS実施 2009/11/9 ペトロラービグ竣工式 2012/5/28 住友化学、サウジ・アラムコとの「ラービグ第2期計画」実施へ 2018/1/10 PetroRabigh 第2期の完工間近
Saudi Aramcoが西海岸に建設したRabigh製油所は重油中心で採算が悪かった。Aramcoは採算向上と地域振興のため、同社としては国内で初めての石油化学に乗り出すことを決めたもので、住友化学が参加してJV PetroRabigh とした。
2018年に2期計画が完成し、すでに稼働している。
しかし、石油化学市況の低迷と、同社の精製装置の問題から赤字が続いている。
2024/5/2 住友化学、過去最大の最終赤字に
住友化学とアラムコは、本年5月に共同タスクフォースを結成し、短期集中で議論、今回、合意に達した。
住友化学とアラムコはラービグの収益改善に向けて議論してきたが、住友化学は精製装置の高度化などの追加投資はしない方針を貫いていた。(日経)
今回の出資分を現金化しRabighに還流する仕組みは「できうるほとんど唯一の解だった。現時点で取り得るベストな選択だと考えている」(岩田社長)。
具体的な方策は下記の通り。
発表にはないが、2023年末の累損は17億ドルだが、2024年の損失を12億ドルと予想し、累損29億ドルを一掃しようというものと思われる。
これに伴い、ペトロ・ラービグ社に対する持分比率は売却前のサウジ・アラムコ社37.5%、 住化37.5%、一般株主25%から、サウジ・アラムコ社60%、住化15%、一般株主25%に再編され る。
② 上記再編の完了を前提として、後日ペトロ・ラービグ社と合意し、公表される予定の方法によって、住化の株式売却対価約702百万米ドルと、それに加えてサウジ・アラムコ社から同額をペトロ・ラービグ社へ拠出 する。
これで、累損のうち14億ドルが消える。
③ ペトロ・ラービグ社の財務改善策として住化およびサウジ・アラムコ社の両社は、それぞれ 750 百万米ドル、合計 1,500 百万米ドルの貸付金の債権放棄を実施する(実施予定時期は、2024 年8月に1,000 百万米ドル、2025 年1月に 500 百万米ドル)。
これで累損合計29億ドルが一掃される。
2023/12/末累損 17億ドル 対策 累損が29億ドルを超えると、一掃できず、赤字が残る |
親会社貸付契約は、当初にはなく、恐らく赤字が増えたため、本格的な対策(追加銀行借入等)ができるまでのつなぎとして結んだものと思われる。限度額は各750百万ドルとなっており、2023年末の貸付は各470百万ドルであり、今回の計画では2024暦年に限度一杯(各280百万ドル)を貸し付けたうえで、これを一掃するもの。
2024年の赤字が想定を超える場合、限度以上の親会社貸付はせず、累積損失を残すと思われる。
赤字が想定以下の場合、必要以上の貸付は必要がないため、赤字を消すだけの貸付とし、債権放棄も減ることになると思われる。債権放棄を2回に分けたのはそのためであろう。(以上筆者推測)
累損を一掃したあとは、住友化学は、石油化学を生んだ責任上、株主には残るが、マイナー株主として、今後の損益の責任を負わず、経営をアラムコに任せることになると思われる。
上記の再編は規制当局および第三者の承認を含む条件を前提としており、また、ペトロ・ラービグ社に対する支援策の実施に際しては、規制当局およびペトロ・ラービグ社の借入銀行による承認等、必要な手続きを行った上で進めることになる。
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