住友商事孫会社 Presperse Corporation によるChapter 11手続開始の申立て

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住友商事は9月10日、米州住友商事会社の 100%子会社で、米国において化粧品原料の販売を行うPresperse Corporation がニュージャージー州連邦破産裁判所に Chapter 11に基づく企業再生手続開始の申立てを行ったと発表した。 

住友商事は1990年に日本産化粧品素材の欧州・米国・中国への輸出を開始、2007年に北米の化粧品素材販売事業会社Presperseに20%出資、2010年に出資比率を100%に引き上げた。

当時の発表によると、化粧品業界は、市場規模約32兆円(グローバルベース)、今後新興国を中心に年率3~4パーセントの成長が見込まれる有望な市場で、Presperse は、エスティローダー、ロレアル、エイボン、P&G、レブロン、ジョンソン・エンド・ジョンソン等の大手化粧品メーカーを主要顧客とし、約300社の化粧品メーカーとの取引実績を有する米国の大手化粧品原料フォーミュレーターである。

米国市場を軸としビジネスを行っているが、今後は欧日市場に展開すると同時に、飛躍的な伸びが見込まれるBRICSをはじめとする新興国にも拠点を配置しながら拡大し、一気に世界展開を進める予定であった。


今回、Presperse Corporationは米国内におけるタルク(滑石)関連訴訟を受け、これまで真摯に訴訟対応を進めてきたが、同対応に係る費用が大きく、同社の事業継続が困難な見通しとなった。

しかし、同社が活動を行う化粧品業界においては、多くのステークホルダーに同社の事業価値を認めてもらっているため、同社の事業を継続したい。

このため、Chapter11 524(g)による再建手段を検討することで原告側と合意に至り、裁判所に Chapter11に基づく企業再生手続申請することとした。

Chapter 11 524(g) とは、アスベスト被害に対応するために制定された連邦倒産法の事業再生手続の一類型。

通常の事業運営を継続しつつ、アスベスト関連責任について切り出して解決を行う際に利用される。同手続の申請者は、アスベスト関連責任の解決のために一定額の救済基金を設立し、アスベスト関連責任の債権者は当該救済基金から返済を受けることで、申請者のアスベスト関連責任が免責される仕組みとなっている。

2024年3月時点での負債総額は5920万ドル(約83億円)。同社が販売するタルク(滑石)を原料に含む化粧品を使用した消費者から訴訟が相次ぎ、関連費用が膨らみ、事業継続が困難になった。

商品の競争力は維持できているものの、数百件に上る訴訟にかかる弁護士費用や和解金の積み立てが生じ、24年3月期の最終損益は4057万ドルの赤字(前期は317万ドルの黒字)だった。

住友商事は24年3月期の連結決算で、訴訟関連費用約50億円を計上し、Presperse の株式評価額を0円にする評価の見直しも実行済みのため、25年3月期の連結業績予想に与える影響は軽微としている。

Presperseは原料の安全性の問題について認めていない。

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米国ではタルクについての裁判が相次いでいる。このうち最大のものはJohnson & Johnsonのもので、これにはPresperse Corporation は関与していない。

Johnson & Johnsonはベビーパウダーのタルクにアスベストが含まれ、中皮腫や卵巣がんが発症したとして訴訟が相次いでいる。

Johnson & Johnson向けのタルクのサプライヤーはCyprus Mines(キプロスに拠点)とフランスのImerys である。

ヘルスケア製品最大手のJohnson & Johnson(J&J) は2018年4月5日、同社製ベビーパウダーのタルクにアスベストが含まれており、中皮細胞から発生するガンの一種、中皮腫を誘発したとする告訴を巡る米ニュージャージー州ミドルセックス郡の上級裁判で敗訴した。

原告に3,000万米ドル、配偶者に700万米ドル、合計3,700万米ドル(約40億円)の補償的損害賠償金の支払いを命じる評決を陪審員が下した。

これに対し、J&Jは原告側の主張を否定し、同社のベビーパウダーにはアスベストは含まれておらず、ガンを引き起こすはずはないと反論している。

同様の訴訟が相次いだが、2024年5月の時点で約95%のケースで和解に至った。また米各州が提起した消費者保護訴訟でも暫定合意に達したと発表した。

J&Jは2024年5月1日、タルクを使った同社のベビーパウダーが原因で卵巣がんを発症したとして集団訴訟を起こされている問題で110億ドル(約1兆7400億円)での一括和解案を提示。昨年の提示額に21億ドル上乗せし、数千人もの原告に支持を求めた。

5月1日の発表によれば、J&Jは既存および将来の法的請求をすべて決着することを目指して子会社に破産法適用を申請させることに原告の承諾を求めた。同社の子会社は過去に2度、連邦破産法11条の適用申請を試みたが、原告側は補償額が少なすぎるとして受け入れなかった。


J&Jが今回進めようとしているのは「プレパッケージ」破産と呼ばれる手法で、債権者から事前に十分な支持を取り付ければ破産法11条の適用プロセスをスピードアップできるもの。破産裁判所では集団訴訟の原告は無担保債権者とみなされる。J&Jが破産法裁判所の判事から承認を得るには、原告の75%から支持を取り付ける必要があると破産法11条は定めている。

2月に提出された有価証券報告書によるとJ&J は現在、ベビーパウダーや類似製品に使用されたタルクがさまざまな種類のがんを発症させたとして、6万件近くの訴訟を抱えている。この多くはニュージャージー州にある連邦裁判所判事の判断で集約され、公判前の情報交換が行われている。その他の訴訟は州裁判所で審理される。

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米国では陪審員制度であり、J&Jのような大企業が訴えられると賠償額は膨大なものになる。これが報道されると、同種の製品メーカーとそこに原料を供給するメーカーが相次いで訴えられるのが米国の慣行である。

Presperse Corporation についても、同社が販売するタルク(滑石)を原料に含む化粧品を使用した消費者から訴訟が相次ぎ、タルクを供給したPresperseも訴えられたものである。

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J&Jは2022年8月、タルク(滑石)を原料とするベビーパウダーの製造と販売を、来年から世界中で停止すると発表した。コーンスターチを原料として使っていくという。

J&Jのベビーパウダーは130年近く販売されており、おむつかぶれの予防や化粧に使われている。家庭にやさしい同社のイメージを象徴する製品となっている。しかし、タルクを使ったパウダーをめぐっては、含有されているアスベスト(石綿)が原因で卵巣がんを発症したとして、女性や遺族らがJ&Jを相手に数万件に上る訴訟を起こしている。

J&Jは製造・販売の停止の方針を明らかにしたが、安全性については、数十年にわたる独自の研究ですでに示されているとする、これまでの見解を繰り返した。「タルクを使用したJohnsonのベビーパウダーは安全で、アスベストを含んでおらず、がんを引き起こさないことが、世界中の医学専門家による数十年にわたる独立した科学的分析で確認されている。当社はそれを強く支持している」とした。

製造・販売の停止については、「世界的な製品ラインアップの評価の一環として、コーンスターチを原料とするベビーパウダーのラインアップに移行するという商業的な決断をした」と説明した。

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