米スリーマイル原発1号機、再稼働へ Microsoft にAI用電力供給

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米大手電力Constellation Energy Corporationは9月20日、東部ペンシルベニア州のスリーマイル島原子力発電所1号機を再稼働させると発表した。

Microsoftの人工知能(AI)で使用するデータセンターに20年間にわたり電力を供給する。米国ではデータセンターの電力消費が急増し、温暖化ガスを排出しない原発の見直しが進んでいる。

スリーマイル島原発2号機では1979年に事故が発生した。メルトダウンが発生し、米国で原発の新規建設が数十年にわたり停滞した原因となった。

事故を免れた1号機は運転を続けたが、再生可能エネルギーと天然ガス火力発電の台頭を受けて競争力が低下。運転期間の許認可は2034年までだったが、それを待たずに2019年に廃炉を決めた。

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米電力大手Exelon Corporation は2017年5月29日、ペンシルベニア州のThree Mile Island Generating Station について、 州政府の支援が受けられなければ2019年に閉鎖すると発表した。

1979年3月に2号機が炉心溶融事故を起こし運転を停止した後も1号機は稼働していたが、「シェール革命」でガス火力発電が安価になり、採算が悪化していた。

1974年に運転を開始した1号機は、米原子力規制委員会(NRC)から2034年までの運転認可を得ているが、採算割れが続いている。同社は運転継続を可能にするため、州政府に補助金など再生可能エネルギー並みの支援を要請したが、不調に終わっている。

発表でCEOは、New York 州やIllinois 州のように、Pennsylvania州も クリーンで安定したエネルギーを維持し、また雇用を維持する対策を取るべきだとする。原発が止まれば、大気汚染が増え、電力供給が不安定になり、消費者のエネルギーコストが増加し、雇用が減り、州経済を弱化させるとしている。

Three Mile Island原発の概要は次の通り。
形式 出力 運転開始 事故発生 運転認可
1号機 加圧水型(PWR) 837MW 1974年6月19日 ーーー 2034年まで
2号機 加圧水型(PWR) 959 MW 1978年12月30日 1979年3月28日* ーーー

* 炉心溶融(メルトダウン)で、燃料の45%、62トンが溶融し、うち20トンが原子炉圧力容器の底に溜まった。


     1982/5 筆者撮影



Three Mile Island 原発の所有者の変遷は次の通り。

Owner
建設 General Public Utility →(改称)GPU
1979(2号機爆発) GPU子会社 GPU Nuclear 1998年まで1号機運転
1998年 AmerGen Energy Companyが買収 AmerGen Energyは①Philadelphia Electric Companyと②British Energy GroupのJV
2000年 Exelon Corporation  ①の持ち分買収 Philadelphia Electric CompanyはUnicom Corporationと合併
2003年 ②の持ち分買収し全体買収
2012年 Exelon Corporation  Exelonが Constellation Energyを買収し、統合
2022年 Constellation Energy Exelonが、Constellation Energy (utilities and power generation businesse)を分離
2024/9/20 Constellation Energy Constellation Energy/Microsoft  電力の20年売買契約締結→1号機再開へ

2022年にConstellation Energy がExelonの用役・発電部門全体(Three Mile Island 1号機を含む)を引き継いで分離した。

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再稼働するのは1号機83万5000キロワット。

Constellation Energy は約16億ドル(約2300億円)を投じて安全対策を進め、原子力規制当局の許認可を経て2028年までに再稼働させる。加えて、2054年までの運転の許認可も求める。再稼働のための公的支援額の見通しは明らかにしていない。

米国ではAIの普及でデータセンターの電力需要が急増しており、マイクロソフトは2025年までデータセンターなどの消費電力の排出ゼロを目指している。温暖化ガスを排出しない基幹電源(ベースロード)として原発の電力の調達を増やす。民間企業1社が大型炉1機分の電力をまるごと買い取る契約は珍しい。 マイクロソフトのエネルチー担当ホリス副社長は、「電力網の脱炭素化に取り組むうえでの重要な節目となる」と述べた。

米国のIT大手はこれまで再生エネで排出削減を目指してきたが、最近は原発活用にかじを切っている。アマゾン・ドット・コムも3月、ペンシルベニア州のデータセンターを購入して近くの原発から電力供給を受けることで合意した。

米国テキサス州・ヒューストンに拠点を置く電力会社のTalen Energy Corporationは3月4日、同社が所有するペンシルベニア州北東部にあるCumulus data center campus を米アマゾン傘下のクラウド・サービス・プロバイダーであるAmazon Web Serviceに6億5,000万ドルで売却したと発表した。

Cumulus data center は、Talen Energyが90%を所有、運転する隣接のサスケハナ原子力発電所(BWR, 130.0万kW×2基)から直接電力供給を受ける。Cumulus キャンパス内には、同様に同発電所から電力を調達しているNautilus暗号資産(仮想通貨)施設が現在稼働中であり、Talen Energyはその75%の権益を保持している。

データセンターの急増で先行きは大幅に増加するとの見通しが2023年ごろから台頭した。2028年まで大型原発38機分に相当する3800万キロワット分の追加需要が発生するとの予想もある。再生エネだけでは賄えず、排出削減に向けた課題。

廃炉した原発を復活させる動きはこのほかにもある。ミシガン州と連邦政府は、約20億ドルを投入してパリセーズ原子力発電所を再稼働させる計画で、2025年10月の稼働開始を目指している。

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