米、対中制裁関税 9月27日に引き上げ

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米政府は9月13日、米通商法301条に基づく対中制裁関税の大幅な引き上げについて最終決定を下した。2024年分について、9月27日に引き上げる。

電気自動車の関税率を100%に引き上げるなどし、中国で過剰生産された廉価品に対し米国の戦略産業分野の保護を強化する狙いがある。


米国は5月14日、中国製EV関税などを大幅に引き上げると発表した。

5/29の一覧表発表時に、改正時期の2024年は2024年8月1日、2025年は2025年8月1日とされた。

2024/5/15 米国、中国製EV関税など大幅引き上げ 

その後、8月1日に予定していた中国の電気自動車などに対する制裁関税の引き上げを2週間以上、延期すると発表。

更に8月30日に最終決定を9月上旬に再延期すると発表していた。


2024年5月に発表された改正案は、一般からの1,100件を超えるコメントを検討した結果、中国の不公正な貿易慣行からアメリカの企業と労働者を保護する措置を強化するためのいくつかの更新を加えて、ほぼ採用された。

全リスト 
https://ustr.gov/sites/default/files/Section%20301%20Modifications%20Determination%20FRN%20(Sept%2012%202024)%20(FINAL).pdf


引き上げの主なものは下記の通り。

現行レート 改正レート 改正年
Battery Parts (Non-lithium-ion Batteries) 7.5% 25% 2024
Electric Vehicles 25% 100% 2024
Facemasks 0~7.5% 25% 2024
50% 2026
Lithium-ion EV Batteries 7.5% 25% 2024
Lithium-ion non-EV Batteries 7.5% 50% 2025
100% 2026
Medical Gloves 7.5% 50% 2025
100% 2026
天然黒鉛 0% 25% 2026
その他重要鉱物 25% 2024
永久磁石 0% 25% 2026
Semiconductors 25% 50% 2025
Ship-to-Shore Cranes 0% 25% 2024
Solar Cells (組み立て有無に関係なく) 25% 50% 2024
鉄鋼・アルミ製品 0~7.5% 25% 2024
注射器,注射針 0% 100% 2024
改正時期 9/27 1/1 1/1


医療用マスクと手術用手袋への関税を当初案の25%から50%に引き上げたが、中国以外の供給元への切り替えを可能にするため開始を遅らせた。
中国製注射器の関税率は当初予定の50%から100%に引き上げ、即時発効とする。乳児の経腸栄養注入器については1年間の除外を認める。

半導体は2025年、重要鉱物の天然黒鉛は2026年の、それぞれ1月1日に税率を引き上げる。 
半導体に対する50%の関税は2025年に導入する予定で、新たに太陽光パネルに使用されるポリシリコンとシリコンウエハーが追加された。

一方、コメントを受けた見直しにより、最初に関税強化が発表された今年5月14日までに契約した港湾用クレーンについては、2026年5月14日まで適用を除外することを決めた。米港湾当局協会は国内で大型クレーンを製造できる企業がなく、多額の追加費用が発生するとして撤回を要望していた。


中国商務部の報道官は9月14日、これについて「断固として反対する」との談話を発表した。「必要な措置を取り、中国企業の利益を守る」とも述べ、対抗策の発動を示唆した。報道官は「典型的な一国主義や保護主義のやり方だ」と強く批判した。

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米国では800ドル以下の個人向け貨物は、関税や複雑な輸入手続きが免除されている。米国人旅行者が持ち帰る土産物や贈答品などへの適用が想定されている。

しかし、中国の衣料ネット通販大手シーイン(SHEIN)やテム(Temu) などの利用が急拡大。海外拠点から米国の個人宛て小口貨物で商品を輸送するため、関税の適用対象外となってきた。
米政府によると、適用除外の輸入品は過去10年間で7倍超に膨らんだ。

今回、商法301条などに基づいて制裁関税を課された製品は、個人向け小口貨物を対象にした関税免除措置を適用しないと発表した。インターネット通販の急拡大で、衣類など安価な製品が無税で流入し、制裁関税の「抜け穴」になっていることを受けた措置で、さらに議会に対し、同措置の抜本的な見直しに取り組むよう要請した。

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EVの関税を100%に引き上げるが、現在はほとんど輸入はない。将来の流入に備えた予防措置と思われる。

ただし、比亜迪(BYD)のEVの最安値は1万2000ドルで、米国のTeslaのEVは安くても3万ドル超である。関税を100%に引き上げてもBYD品は2万4000ドルで、Tesla品よりはるかに安い。

米国のコストが高いのが問題だが、米国の理屈は、中国の低コストは過剰生産の結果であり、それを低価格で輸出するのは不公正な貿易慣行であるというものである。

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