カナダのデジタルサービス税、米が見直し要求 

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米通商代表部(USTR)は8月30日、カナダが施行したデジタルサービス税(DST)が米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に違反しているとして、カナダ政府に同協定に基づく協議を要請した。

協議が75日以内にまとまらなければ、USMCAの紛争解決制度に従って正式にカナダ政府を提訴する見通し。

カナダは6月にデジタルサービス税(DST)を発効した。全世界の売上高が7億5千万ユーロ(約1200億円)を超す企業の収入の一部に3%の税金をかける。

課税対象はSNSやオンラインのマーケットプレイス事業、デジタル広告で、主にグーグルやメタといった米テック企業が徴税の対象になる。2022年1月以降の収入に遡って適用され、年間およそ8億7500万ドル(約1280億円)の税収が見込まれている。


米国は、カナダのDSTは
グーグル、アップル、アマゾン・ドット・コム、メタなどのアメリカのハイテク大手を不当にターゲットにしているとし、米国企業をカナダ企業と同等に扱うよう定めたUSMCAの規定に違反していると主張している。USTRのキャサリン・タイ代表は「米企業を差別する一方的な措置に反対する」とした。

米連邦議会上院財政委員会のロン・ワイデン委員長も「米国のイノベーターを標的にした差別的な税金で良質な雇用を危険にさらす」と述べてUSTRを支持した。

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デジタル課税は、恒久的施設を持たない外国企業への課税が可能になる仕組みで、世界的な多国籍企業について、各国間の利益と課税権をより公平に再配分することを目的としている。

各国がバラバラに導入を検討したため、大きな問題となった。

2020/1/29 デジタル課税を巡る問題

2020/7/14 米国、フランスのデジタル課税に報復関税 

2019/3/12 EU、デジタル課税合意見送り、仏英など独自課税へ

2019/12/30 イタリア、デジタル課税を導入、 フランスに追随

2020/2/18 OECD、多国籍企業課税新ルールの影響の試算発表   

「第1の柱」について、利益率10%以上の部分を超過利益とみなし、その20%を市場各国に分配するとした。「第2の柱」については最低税率を12.5%と仮定した。

2020/6/4 米、10カ国・地域にデジタル税の対抗措置検討

2020/6/23 米、デジタル税を巡る国際協議からの撤退を示唆

2020/10/23 フランス、デジタル税を再開

OECD/G20の「BEPS(税源浸食と利益移転:Base Erosion and Profit Shifting)包摂的枠組み」において、2021年10月8日に大枠合意に至った。詳細を巡って米国やインドなどの意見調整が進まず、制度の根拠となる多国間条約の署名が実現していない。

国際課税ルールの抜本的な改革であり、2023年前半に多国間条約の署名、2024年に条約発効を目標としている。カナダ政府は交渉に参加している。

経済協力開発機構(OECD)は2021年5月に米国の新提案を採用する調整に入った。関係国の交渉担当者に新たなルールに基づく複数の試算を示した。

多国籍企業の利益に対する課税権を、事業活動で利益を上げている国に再配分することを第一の柱とし、世界的に15%の最低法人税率を導入することを第二の柱とする。

米国案は、売上高と利益率の規模で機械的に対象を決める。米企業の狙い撃ちになるのを避け、対象を世界で100社ほどに絞り込む。
企業の国別売上高に応じて税収を各国に配分するという現行案の仕組みは変えない。

OECDは関係国の交渉担当者に新たなルールに基づく複数の試算を示した。いずれも米国が4月に提案した案に沿っており、利益率と売上高の組み合わせで一定の基準を超えるグローバル企業に課税する。

具体的には売上高を100億ドル(約1兆1000億円)以上とする案や、利益率の水準を15~20%以上とする案などがある。


OECD公表による合意内容および第1の柱・第2の柱の概要   詳細 別紙


2021/5/25 OECD、デジタル課税で米提案を採用へ

2021/10/12 国際課税の新ルール、136カ国・地域が合意

経済協力開発機構(OECD)は2023年7月12日、デジタルサービス税を導入している国がカナダ 等を除き、同税の適用を少なくともあと1年間見送ることで合意したと明らかにした。

OECDはアップルやアマゾンといった巨大IT企業への課税を見直した新たな国際課税ルールを2021年にとりまとめた が、この合意に参加した143カ国が2024年から合意内容を実施することになっていた。

デジタルサービス税凍結に不支持だったのは、143カ国中、ベラルーシ、カナダ、パキスタン、ロシア、スリランカの5カ国。この中でデジタルサービス税構想を持つのはカナダのみ。

デジタル課税発効の見通しが立たないため、カナダは独自ルールの施行に踏み切った。デジタル課税の交渉中はDSTを凍結するという案も拒否した。

カナダの財務大臣は2024年4月16日、政府の予算案を公表した。

国際税務関連では、以下の改正項目が含まれる。

第1の柱・第2の柱

本予算案において、OECD・第1の柱についてのコミットメントを再確認する一方、デジタルサービス税(DST)の制定計画を進めており、その実施法案が議会に提出されている(初年度は2022年1月1日以後の収入が課税対象見込み)。
第2の柱の実施法案は、近く議会に提出見込みである。


2024年2月の下院財務常任委員会の報告書では、必要があれば、多国籍企業に対して25%以上の実効税率を適用し、デジタルサービスに係る独自の課税の導入を進めるよう(また、デジタルサービスに係る税が引き続き国際先例との整合性を確保するよう)提言している。

なお、カナダの一般的な連邦法人所得税(CIT)税率は15%(基本税率38%-10%(州・準州レベルのCIT課税の可能性を考慮。外国法域に係る課税所得には適用なし)-13%(一般税率控除/製造・加工業に係る控除))であり、州・準州のCIT(連邦CIT上、損金不算入)税率はかなり異なっている。

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