帝人と大阪市立大学発ベンチャー、漢方薬原料による認知機能改善効果発見

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帝人は9月19日、セレブロファーマと共同研究で、漢方薬原料による認知機能改善効果を発見したと発表した。

帝人は、医薬品事業および在宅医療事業で培った研究開発力や臨床評価技術を活用し、「ニュートラシューティカル製品」 (健康の維持を目的として、明確な科学的根拠に基づいて開発された日常的に摂取可能な食品) の研究開発・製造販売を行っており、NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)や、本わさび由来の 6-MSITC(6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート)を含有したサプリメントなどの研究開発・製造販売を行っている。

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セレブロファーマは、大阪市立大学大学院医学研究科認知症病態学研究室の研究成果を元に、認知症の予防薬・治療薬を世に出すことを目的として、2017年11月に大学発ベンチャーとして設立された。

漢方薬原料の「酸棗仁(サンソウニン)」はクロウメモドキ科サネブトナツメの種子で、抽出エキスが漢方薬の原料として使用されており、鎮静・鎮痛・血圧上昇作用を有する。

セレブロファーマは、この酸棗仁がモデルマウスを使った実験でアミロイドβオリゴマーやタウオリゴマーを減少させ、脳由来神経栄養因子の発現を上昇させることで、認知症の予防に有効であることを見出した。

参考 アルツハイマー病の脳  

    アミロイドβ やタウは認知症の原因といわれるタンパク質

この天然物は摂食可能で安全性も高く、脳への直接作用に加え、腸内細菌に働きかけて間接的に脳の機能を改善する作用も合わせ持つことが示唆されている。

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セレブロファーマはこれをセルフ・メディケーションのための認知症予防食品として開発すべく、現在、帝人と共同で医療用食品として発売するためのプロジェクトを進めている。

帝人とセレブロファーマは共同研究を実施し、酸棗仁(サンソウニン)の全粒粉の投与により、認知症モデルマウスの認知機能が健常マウスと同程度に改善することを新たに発見した。

(1)前頭側頭型認知症モデルマウス(Tau784 マウス)、アルツハイマー病モデルマウス(APP23マウス)、パーキンソン病モデルマウス(αSyn マウス)を、酸棗仁の全粒粉を摂取させる群(全粒粉摂取群)、酸棗仁の抽出エキスを摂取させる群(抽出エキス摂取群)および酸棗仁を摂取しない群(コントロール群)にそれぞれ分け、1か月後にモリス水迷路行動試験法(*)を4 日間行い、認知機能の変化を健常モデルマウスと比較し、評価した。

(*)空間学習能力と記憶力を測定するための行動試験。水を張ったプールにラットを浮かべ、プール内に設置された透明の足場に退避するまでにかかる時間を計測して評価する。

(2)その結果、Tau784 マウス、APP23 マウス、αSyn マウスのすべてにおいて、全粒粉摂取群と抽出エキス摂取群のいずれも、退避行動にかかった時間が短縮され、認知機能の改善が見られた。

ただし、抽出エキス摂取群は、退避行動にかかる時間は短縮されたが、その程度は健常マウスには及ばなかった。
一方で、全粒粉摂取群は、退避行動にかかる時間が健常マウスと同程度に短縮されており、認知機能が改善されることが分かった。

(3)さらに、このような認知機能の改善と脳の関係を生化学的に解析したところ、全粒粉摂取群の脳では認知症病原タンパク質であるタウの集合体などの蓄積が除去されていた。

(4)これらの結果により、酸棗仁の全粒粉は認知症病原体タンパク質の除去を介して、幅広い認知症の治療や予防に有効である可能性が示唆された。

本研究成果は 2024年9月1日に学術誌「eLife」において掲載された。

「Simply crushed Zizyphi spinosi semen prevents neurodegenerative diseases and reverses age-related cognitive decline in mice 」
掲載 URL: https://doi.org/10.7554/eLife.100737.1


帝人は、今回の試験での結果を踏まえ、今後、酸棗仁の全粒粉についてヒトでの安全性や有効性の確認を進めながら、認知機能改善へのソリューションとして社会実装することを目指し、セレブロファーマと健康食品の開発などを進めていく。

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