米議会の与野党指導部は9月22日、2024会計年度(2023年10月~2024年9月)が期限を迎えた後も、12月20日まで予算執行を続ける「つなぎ予算案」で合意した。
トランプ前大統領が要求し、民主党が反対している米国有権者資格保護法案(下記)の条項を除外した。トランプ氏に対する2回の暗殺未遂事件を踏まえ、シークレット・サービスに2億3100万ドルの追加予算を盛り込んだ。追加資金は「2024年大統領選挙活動を含む警護活動の遂行に必要な業務に充てられる」としている。
9月18日につなぎ予算を下院が否決したが、これには米国有権者資格保護法案条項が入っており、民主党に加え、共和党からも14人が反対にまわった。
与野党指導部は9月22日、「つなぎ予算案」で合意した。法案は近く上下両院で可決する見通し。バイデン大統領の署名で成立する。11月の大統領選前に政府機関が閉鎖されて混乱する事態は回避される見通し。
ーーー
2024会計年度の予算については、上院が2024年3月23日午前2時(つなぎ予算は3月22日までで、期限を2時間過ぎていた)に2024会計年度予算案を可決、下院は可決済みで、バイデン大統領の署名で成立した。2023年10月に2024年度に入ってから半年を経て、ようやく予算案全体が議会を通過した。
2024/3/25 米国の2024会計年度予算 ギリギリで成立、政府機関閉鎖を回避
その後、ウクライナ支援等4つの追加予算案を通している。
2024/4/24 米上院、ウクライナなどを支援する下院の緊急予算案を可決
しかし、新年度(2024/10~2025/9)のスタートを数日後に控えても、新年度の予算の成立の見通しはまったくなく、11月の大統領選挙前に政府機関が閉鎖される可能性が強まった。
ーーー
共和党が過半数を占める下院では、2025年度歳出法案を2024年度内に成立させるべく審議を進めてきた。
しかし、同歳出法案に含まれる12本の法案のうち、人工妊娠中絶や低所得者向け支援などの内容を含む法案を中心に、なお半数程度の法案が採決に至っていない。
また、同歳出法案の下院通過後には、意見の隔たりが大きい上院との協議も必要になることから、年度内の法案成立は極めて困難である。
なお、現在の上院の勢力図は下記の通り。
共和党 民主党系 合計 民主党 民主系
無所属無所属 49 48 2 1 100 民主系無所属はSanders, King 両議員、無所属は元民主党のSinema議員
賛否同数の場合は、上院議長を兼ねる副大統領(現在は民主党)が投票
このため、新年度スタート以降、最終予算が決まるまでのつなぎ予算が必要となる。
今回のつなぎ予算法案は、2025年3月28日までの6カ月間、2024年度歳出法と同規模での予算拠出を行うというもの。
つなぎ予算法案に対しては、共和党内部で、歳出削減を強く求める保守派からの批判や、国防関連の歳出額が不足しているとの批判があったほか、民主党からは同法案とセットで提案されていた米国有権者資格保護法案(注)に対する批判や、つなぎ予算の期間を3カ月間に短縮するべきといった指摘があった。
下院は9月18日、2025会計年度の歳出法案成立までの間、政府閉鎖を回避するためのつなぎ予算案を202対220で否決した。
民主党に加え、共和党からも14人が反対にまわった。
賛成 反対 棄権 合計 欠員 共和党 199 14 7 220 1 民主党 3 206 2 211 3 合計 202 220 9 431 4
付記 つなぎ予算可決
下院は9月25日、341対82で可決した。
賛成 反対 棄権 合計 欠員 共和党 132 82 6 220 1 民主党 209 3 211 3 合計 341 82 9 431 4 上院は賛成78、反対18で可決した。
共和党 民主党系 合計 民主党 民主系
無所属無所属 賛成 28 47 2 1 78 反対 18 18 棄権 3 1 4 49 48 2 1 100
民主系無所属はSanders, King 両議員、無所属は元民主党のSinema議員
賛否同数の場合は、上院議長を兼ねる副大統領(現在は民主党)が投票
ーーー
問題の米国有権者資格保護法案(Safeguard American Voter Eligibility Act:SAVE法案)は下記の通り。
2024年に米国議会で導入された法案で、連邦選挙での投票者登録に際して米国市民であることを証明するための書類提出を義務付けることを主な目的としている。
- 市民権の証明:連邦選挙において投票者として登録するには、米国パスポートやREAL ID準拠のID、または他の政府発行の市民権を確認できる書類を提出する必要がある。
- 非市民の投票禁止の強化: 非市民が投票者として登録されないよう、申請時に市民権の証明が必要とされる。
- 代替プロセスの提供: 標準的な書類を提出できない場合、他の証拠を提出し、米国市民であることを誓約する代替プロセスも用意されている。
- 実施上の課題:法案は州に大きな管理負担を課すにもかかわらず、連邦からの資金提供はない。また、施行の準備期間が非常に短いため、選挙管理の混乱が懸念されている。ます。
この法案は、2024年7月に下院を通過し、現在は上院での審議が待たれている。
賛成 反対 棄権 合計 欠員 共和党 216 0 4 220 1 民主党 5 198 10 213 1 合計 221 198 14 433 2 この投票日の後に民主党議員2名が死亡し、欠員が増えた。
トランプ前大統領が「もし共和党がSAVE法案を成立させず、その全てを手に入れなければ、いかなるかたちであれ、つなぎ予算に同意すべきではない」として、つなぎ予算とセットで審議することを強く求めている。
ホワイトハウスは下記の声明を出し、反対の姿勢を示している。
(1)外国人が連邦選挙で投票することは既に違法なこと、
(2)市民権を偽って主張したり、選挙で違法に投票したりした場合には、米国からの追放や入国の永久禁止の対象となるなど既に厳しい措置を取っていること、
(3)有権者資格の確認は各州で効果的な措置が取られていること
から、選挙の公正性の確保には役立たない。同法案により有権者登録がはるかに困難となり、有権者が有権者名簿から不当に削除されるリスクを高める。
コメントする