東北電力は10月25日、女川原発2号機の再稼働について、原子炉を10月29日午後に起動すると正式に発表した。
付記
東北電力は、11月3日開始予定の女川原発2号機の発電と送電を延期した。発電機の試験中に原子炉内の中性子を計測する機器を入れる際、途中で動かなくなり作業を中断 した。
5月27日に安全対策工事が完了、9月に原子炉に核燃料560体を装填する作業を実施した。10月29日の原子炉起動を経て11月上旬に発電を再開し、12月の営業運転開始を予定している。
女川2号機は2011年の東日本大震災で被災し、運転を停止していた。震災では約13メートルの津波が押し寄せ、かろうじて津波はかぶらなかったものの、地下から浸水して冷却ポンプが故障するなどした。
再稼働すれば、2011年の東日本大震災の被災地に立地する原発として初めてで、事故を起こした東京電力福島第1原発と同じ沸騰水型軽水炉(BWR)としても初の再稼働となる。 末尾の「原子発電所の現状」参照
電力各社が原発を動かすには福島第1原発の事故後にできた新たな規制基準を満たす必要がある。これまでに国内12基が再稼働し、女川2号機が13基目となる。
原子力規制委員会は2013年6月19日、福島第1原発事故の教訓を踏まえた新しい規制基準を決定した。7月8日に施行した。
テロ対策などを盛り込んだ「過酷事故対策編」、既存設備の安全対策を強化する「設計基準編」、活断層調査の強化や津波防護策を定めた「地震・津波編」の三つに大別される。
基準には、最新の安全対策を義務付ける「パックフィット制度」が導入され、既設原発も対象になる。
2013/6/21 原子力規制委員会、原発新基準を決定
2013年12月 東北電力が設置変更許可申請書、工事計画及び保安規定の変更申請書を提出した。
女川原発は2011年3月の東日本大震災のときには1、3号機が運転中で、2号機は定期検査中だった。
東北電力は、3基ある原発のうち、安全対策の進みが早い2号機を優先させる方針で、2013年12月に再稼働申請を行った。被災した原発としては初の申請となった。原発の耐震設計の基準となる基準地震動を580ガルから1000ガルに、津波の想定も13.6mから23.1mに引き上げた。
(東日本大震災で、607ガルの揺れが観測された。)
2014年1月から審査が行われた。
審査は難航した。176回の審査会号と8回の現地調査等を実施、598回のヒアリングが行われた。
原子力規制委員会の更田委員長代理は2017年3月8日の定例会合で、東日本大震災の影響で原子炉建屋に多数のひびが見つかった東北電力女川原発2号機について「前例がなく、審査は技術的に極めて難しい」と指摘した。
東北電力は2018年度後半以降に2号機を再稼働する計画だったが、審査に合格できるかが不透明になった。
2017/3/17 東北電力女川原発の審査、難航
建屋のひびは震災の揺れとコンクリートの乾燥収縮が原因とみられ、建屋の機能に影響はないが、補修するなどの計画を東北電力が示し、規制委が妥当と判断するまで約2年かかった。
原子力規制委員会は2019年11月27日、安全対策の基本方針が新規制基準を満たすと認める審査書案を了承した。審査は2013年12月の申請以来、約6年を要し、これまでに適合した原発では最長。事故対策費は当初想定を超える3400億円程度に膨らんだ。
地震の想定を約2倍に引き上げ、全国の原発で最も高い標高29メートル、総延長800メートルの防潮堤をつくるなどの対策を妥当と判断した。
事実上、新規制基準に適合したこととなり、東日本大震災の被災原発としては日本原子力発電の東海第二原発(茨城県)に続き2基目。
規制委員会は2020年2月26日に審査書を了承し、設置変更を許可した。
地元宮城県内の市町村長会議は2020年11月9日、立地自治体である女川町、石巻市、宮城県の3者会談に判断を委ねることを決めた。
宮城県の村井嘉浩知事は11月11日、原発がある女川町と石巻市の市町長と会談し、再稼働に同意することで一致、知事は再稼働に同意すると表明した。「稼働することにより、地元企業の受注に伴う雇用の創出や経済波及効果が見込まれる」と説明した。
2月に規制委の安全審査に合格し、6月には国の原子力防災会議が地元自治体による避難計画を了承した。8月には再稼働に向けた全7回の住民説明会を終えている。
東北電力女川原発2号機の再稼働を巡り、石巻市の住民が2021年5月28日、東北電の再稼働の差し止めを求める訴えを仙台地裁に起こした。重大事故を想定した広域避難計画の実効性を問う。
原告は原発から16~25キロの緊急防護措置区域に住む男女17人。住民らは「女川地域原子力防災協議会は避難計画の実効性を調査、確認していない」と主張し、「交通渋滞で30キロ圏内を脱出できない」「病院や高齢者・障害者施設の入院患者や入所者は避難困難」と計画の問題点を列挙。計画の実行可能性や実施体制を疑問視し「住民らの生命や身体を侵害する具体的危険性がある」「無用な被曝を強いられ、人格権が侵害される具体的な危険性がある」と訴えた。
一方、東北電力側は、合理性があると了承を得られた避難計画であり、改善点があるとしても、ただちに実効性がないとはいえないと反論。避難が必要になるような重大事故が起こる具体的な危険性について原告側は主張・立証していないとし、避難計画を巡る判断にかかわらず、請求を棄却すべきだとした。
仙台地裁は2023年5月24日、原告側の請求を棄却する判決を言い渡した。
裁判長は「放射性物質が異常に放出される事故が起きる具体的危険を認めるに足りる証拠がない」として請求を退けた。「避難の前提となる放射性物質が異常に放出される事故の発生を立証すべき」とした。
避難計画の内容については判断しなかった。
住民側は仙台地裁の判決を不服として控訴した。
2024年4月の弁論で裁判長は、広域避難計画で原発5~30キロ圏の緊急防護措置区域の住民らに求める「段階的避難」の是非に関し「具体的な議論がかみ合っていない」と指摘。原告側が提出した意見書の一部に対する反論を東北電側に求め「さらに議論を深めたい」と述べた。
7月の弁論で、住民側は「事故発生時は渋滞が想定され検査場所が開設できず、住民は被ばくを強いられる」「避難に使うバスは、必要な台数を把握していない」など避難計画に実効性は無いと指摘した。東北電力側は、事故が発生する具体的危険について原告が立証していないなどとして、請求棄却を求めた。
これで結審し、判決期日は11月27日に指定された。
原告団長は「再稼働前に判決を得られなかったのは極めて残念だが、裁判官の良識に期待して11月27日を勝利判決をもって迎えらるように頑張りたい」と述べた。
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中国電力は10月28日、島根原発2号機の安全対策工事が完了したと発表した。
新規制基準への対応として設置や改造を行った設備に対して、使用前事業者検査を進めるとともに、原子力規制委員会による使用前確認に対応してきた。
10月28日に燃料装荷までに行う使用前事業者検査および使用前確認が終了したことをもって、安全対策工事を「完了」とした。
10月28日13時に燃料装荷を開始した。燃料装荷の終了までは、1週間程度を見込んでいる。
2号機に核燃料が入るのは、2012年2月以来、約12年8カ月ぶり。12月上旬にも、原子炉を起動し、再稼働させる方針で、営業運転は来年1月上旬を見込む。
付記
中国電力は11月3日、島根原発2号機の原子炉に核燃料を入れる作業を完了した。12月上旬に原子炉起動。
なお、東京電力柏崎刈羽 6、7号機は2022年7月に特定重大事故等対策が完了したが、地元の理解が得られていない。
原電東海原発は、2024年9月に特定重大事故等対策が完了する予定であったが、防潮堤工事のうち鋼製防護壁において確認された不具合への対応やその他工事の進捗状況等を踏まえ、特定重大事故等対処施設を含めた安全性向上対策工事の終了時期を2026年12月に変更した。
東海原発も地元の理解が得られていない。
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再稼働原発の現状 12基 2024/10
関電 美浜 | 3号 | 停止中 | 10/15 機器冷却用の配管から海水漏れで運転停止 |
関電 大飯 | 3号 | 運転中 | |
4号 | |||
関電 高浜 | 1号 | 運転中 | |
2号 | |||
3号 | |||
4号 | |||
九電 玄海 | 3号 | 運転中 | |
4号 | |||
九電 川内 | 1号 | 運転中 | |
2号 | 停止中 | 9/14~12/25の予定で第27回定期検査 | |
四電 伊方 | 3号 | 運転中 |
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