中国、ペルーに「一帯一路」要港 中南米貿易を効率化

| コメント(0)

ペルーの首都リマ北方約70キロで中国遠洋海運集団(COSCO)が60%出資するチャンカイ(Chancay)港が11月14日に開港する。

リマの外港のCallao 港の船舶の渋滞と港湾周辺の交通渋滞の深刻化などを背景に、新たなハブ港として始まった。プロジェクトの全4段階の第1段階で、4つのバース、パンアメリカンハイウェイに接続するインターチェンジ、船舶の海上進入路、防波堤、隣接するチャンカイ市を迂回できるトンネルなどが建設されている。総事業費は34億ドル以上と見込まれており、そのうち第1段階で13億ドル以上が投じられる。

チャンカイ港では、最大1万8,000TEUのコンテナ船を受け入れる。水深も18メートルに達する見込み。現状、ペルー国内で最大の港であるカジャオ港で受け入れ可能なコンテナ船の大きさは1万5,000TEU、水深は15メートルであるため、カジャオ港よりも大きな船舶の受け入れが可能となる。

これだけの規模の船舶を受け入れ可能な港となるため、これまで行われていたメキシコのマンサニージョ港や米国カリフォルニア州のロングビーチ港などに寄港しての貨物の積み替えの必要がなくなり、太平洋を横断して東アジアまで直行できるようになる。

チャンカイ港の最も注目すべき特徴の1つは最先端の自動化であり、コンテナの積み下ろし時間を大幅に短縮する。「COSCOが行った投資のおかげで、この港は上海で使用されているのと同様の技術を使用するため、以前は3時間かかっていた船からの荷下ろしが1時間未満でできる。」

さらに、ポストパナマックス(パナマ運河を通れない大型船)として知られる大型船を扱えるキャパシティがあり、より多くの貨物を輸送することができる。これは、青果物や加工品などの傷みやすい産品や、市場価値を維持するために目的地に迅速に到着する必要がある鉱物に関して大きな違いを生む。

東アジアまでの所要日数が23日と12~17日程度短縮される。

遠隔自動操作システムの稼働に際し、中国の通信機器大手の華為技術(Huawei)とメキシコ系通信会社Claro が5G(第5世代移動通信システム)回線を導入する基地局を設置している。

また、チャンカイ港では当初140万~160万TEUの貨物の取り扱いを予定しているが、これが実現すれば、当初から中南米の港の貨物取扱量ランキングでトップ10に迫り、南米の太平洋側の港の中では4番目の規模となる。

首都リマとチャンカイの間にある国内最大のCallao港と合わせると540万TEUで、パナマのコロン港、ブラジルのサントス港を上回る規模になる見込みという。

中国にとってはチリ、ボリビアなど他の南米諸国や中米各国へのさらなる進出のハブ港にすることができる利点があるとされる。

ーーー

2019年にCOSCO傘下で港湾運営の中遠海運港口が、ペルーの鉱山会社Volcanからチャンカイ港を開発中のコンテナターミナル運営会社TPCのの株式60%を2億2500万ドルで取得した。

2021年にペルーの国立港湾局と新港の独占的運営権に関する協定に調印した。ただ、ペルーが中国に向こう30年間の運営権を与える上、その後も中国が運営権を維持できるといった協定内容にペルー国内で反対論が起きため、国立港湾局が『行政上のミス』として協定をご破算にしようと試みた。中国側は一時、契約違反と非難し、国際裁判に持ち込む動きを見せた。

しかし今年6月、ペルー議会で協定の締結を事実上容認する法案が成立、問題解決への道が開かれた。ボルアルテ大統領は同法案に署名し、訪中の際の手土産にした。習近平主席はペルーの首都リマで行われるAPEC閣僚会議・首脳会議(11月15日~19日)に出席の折、チャンカイ新港の落成式に臨む予定であったが、安全上の観点からリモートで参加する。

在リマ外交筋は「中国の対ペルー投資が習近平主席の唱える『一帯一路』構想の南米戦略の一環として行われている点に注目すべきだ」と強調する。ペルーは2019年に中国との間で「一帯一路」構想への参加を表明する「了解覚書(MOU)」を取り交している。

中国の南米戦略の最重点国はブラジルに次いでペルーという見方が有力になっている。中国企業はペルーの鉱業分野やインフラ部門を中心に積極的に投資しており、今や「ペルー経済の発展は中国の存在を抜きにしては考えられない」(ペルーの有力エコノミスト)といった声が聞かれるほど。

今年6月末のボルアルテ大統領の中国公式訪問時には、大統領と習近平国家主席は2国間の経済・貿易面での強化関係をもう一段格上げすることで合意した。また、この首脳会談で両国間の自由貿易協定(FTA)の拡充を目指す交渉も事実上完了したと伝えられる。習近平主席は鉱業のほか電力・通信・港湾などのインフラ分野でも経済支援を拡大すると述べたという。

ーーー

ペルー民間投資促進庁は2024年3月22日、南部イカ州のサン・ファン・デ・マルコナ(San Juan de Marcona)新港湾ターミナルのデザインと資金調達、建設、運営管理に関する官民連携方式による事業者として、中国の金兆鉱業(JINZHAO MINING)のグループ会社の金兆ペルーを選定すると発表した。同ターミナルは首都リマのカジャオ港、リマ州北部のチャンカイ港(中国COSCO社が60%出資)に次ぐ規模となる予定で、総投資額は4億500万ドルに上る。コンセッション契約期間は契約締結日から30年間とされている。

カジャオ港の取扱貨物量は年間3,570万トン、チャンカイ港は同3,400万トンとされている。サン・ファン・デ・マルコナ港の想定取扱貨物量は1,900万トンだが、最大で4,000万トンの許容があるという。

これまで、運輸通信省(MTC)傘下のペルー国家港湾局に対する金兆ペルーからの事業提案は、政府が求める条件に基づいて幾度か修正が行われ、最終的に2023年12月20日付で国益に資する事業として認定を受けた。新港湾ターミナルは公共施設として位置づけられるが、その運営管理から生じる収益は主として金兆ペルーに属することになる。

関連して金兆ペルーは、イカ州に隣接するアレキパ州のパンパ・デ・ポンゴ鉄鉱石鉱山事業を手掛けているが、同地域ではその他にも同じ中国資本のラス・バンバス銅鉱山などが操業している。サン・ファン・デ・マルコナ港湾の開発は、将来的に多くの南部鉱山ビジネスに寄与することになる。

コメントする

月別 アーカイブ