東証は2020年8月27日、キオクシアホールディングス(旧東芝メモリホールディングス)の上場を承認した。上場予定日は10月6日で、東証1部か2部に上場する。想定売り出し価格は1株3,960円で、最終的な売り出し価格は9月28日に決まる。時価総額は2兆円を超え、同年最大の新規株式公開となるとみられた。
しかし、同社は上場を延期した。大口取引先である中国の華為技術(Huawei)に対する米政府の取引規制で 収益性の急激な低下が予想され、先行きへの不透明感が高まっており、上場の時期を慎重に検討するとした。
その後、動きがなかったが、本年8月23日に東京証券取引所に上場を申請したことが分かった。
同日の取締役会で下記の決議を行った。
募集株式:普通株式 21,562,500 株
払込期日:2024 年12 月17 日(火曜日)
発行価格:未定 想定価格は1株当たり1390円
調達金額:諸経費を差し引いて277億円を調達
現在の株主の売出し:下記
国内 海外 BCPE Pangea Cayman, L.P.
(Bain)4,957,200 株 9,490,200 株 東芝 12,329,300 株 23,603,400 株
増資に伴う各株主の出資比率移動は下記の通り。
Bain / SK Hynix連合は4社に分割して出資しているが、このうち韓国のSK Hynix分はBCPE Pangea Cayman 2 Ltd.と思われる。
当初 2020/8/27 現状(議決権) 増資対応 増資後 東芝 40.2%
優先株転換東芝 40.64% 500億円分売出し
32,3% HOYA 9.9% HOYA 3.13% ー
3.0% Bain / SK Hynix 49.9% BCPE Pangea Cayman, L.P. 25.92 56.23% 200億円分売出し
51.3%
BCPE Pangea Cayman 2 Ltd.
(SK Hynix)14.96 BCPE Pangea Cayman 1A, L.P 9.37 BCPE Pangea Cayman 1B, L.P 5.99 一般株主 ー ー 13.4% 合計 100% 100% 資料 2020/8/31 キオクシア、10月に上場 (実際にはこの時点では上場は延期となった。)
優先株を持っていた東芝、Bain、SK Hynixは2020/8/27に全て普通株に転換した。
しかし、SK Hynixのみ他に転換社債(1290億円)を持っており、現在もそのままである。
SK Hynix の扱いが今後、問題となる。
キオクシアはNAND型フラッシュメモリのメーカーで、この事業で米国のWestern Digital と組んでいる。
SK Hynix もNAND型フラッシュメモリ事業を行っており、2020年にはIntel からこの事業を買収している。
2020/10/22 SK Hynix、IntelのNAND事業買収
現在、Sk HynixはBainと組むことで株主となっているが、単なる株主として参加することが同社の目的ではない。
東芝は2017年6月21日に取締役会を開き、SKハイニックスが参加する韓米日連合を半導体メモリー事業の売却に向けた優先交渉対象者に決定した。SKはBain Capitalに融資する形で参画するため、当時の東芝の綱川智社長は「SKには議決権がなく、技術流出は防げる」と指摘していた。
しかし、「東芝メモリ」の買収で優先交渉先となった産業革新機構、Bain、SK Hynix などの「日米韓連合」内での協議の過程で、SKは、将来的にBain Capitalから議決権(33.4%) の一部か全部を取得できる権利などを持つことを求めたという。33.4%の議決権は重要議案への拒否権を発動できる。SKハイニックスが単に融資のためだけに参加することはあり得ず、事業への参加を狙っているのは当然のこと。
東芝メモリの売却に当たり、Western Degital にとっては、メモリ事業での競争相手である韓国のSK Hynix やSamsung が経営に参加したり、技術情報にアクセスするのは全く認められない。
逆にBain Capital にとっては、今回の買収に参加し、企業価値を上げたうえで、高値で転売するのが目的であり、将来の売却先を制限されるのは好ましくない。
SK Hynix にとっては事業参加が目的であり、単なる出資では意味がない。
とりあえず、Western Degital への配慮で、SK Hynixに関しては、2028年までの10年間の機密情報へのアクセス制限と10年間は15%超の議決権は与えられないとの条件を付けた。
今後、Bainが株価の値上がりを待ち、株を売却するのは当然である。
その際にSKが株を買い増ししたり、経営に参加すれば独禁法上も問題になる。
同社にとって厄介な問題である。
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