米下院委員会、中国通信機器大手2社との取引解消を要請、米中の新たな火種

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米下院情報委員会は10月8日、中国の通信機器大手で世界2位の華為技術(Huawei Technologies)と 世界5位の中興通訊(ZTE Corp )に対する中国当局の影響力が米国の安全保障上の脅威となる恐れがあるとする報告を公表し、両社と取引のある米国企業に他のメーカーを選ぶことを検討するよう呼びかけるとともに、米連邦政府に両社の米国でのM&A活動を阻止するよう要求した。

11カ月にわたり2社に対する調査を実施した。

Rogers委員長(共和党)とRuppersberger下院議員(民主党)が中心となった情報特別委は2011年11月、両社が中国の情報機関のため、重要な通信部品・システムに悪意あるハードウェアやソフトウェアを組み込んだ疑いがあるとして、両社に対する調査の発動を発表した。

中国政府が両社がつくったネットワーク機器に組み込んだソフトウエアで cyber-espionage を行う恐れがあるとしている。

「中国の軍および情報機関は、米軍の技術優位性を認識し、将来の米国との対立時に利用するため、有利となるものを積極的に探している。送電網や金融ネットワーク等の重要なインフラに悪意のある埋め込みを行えば、とてつもない武器となりうる」と述べている。

中国政府は中興の株式を保有し、中国の国有銀行が両社に資金の一部を提供しており、両社は中国の政府や軍と取引があり、両社の内部には中国共産党の基層レベルの組織があることから、両社は党や政府の機関から独立していない企業だとみなし、そのうえで、中国政府からの要求を拒絶することは難しいため、その製品にはリスクが存在し、米国の安全上の利益を損なう可能性があると結論づけた。

華為技術については、1年に及ぶ調査で贈収賄や不正行為、差別行為、著作権違反など米国の法律に違反しているとの確かな情報をつかんでおり、FBIやその他の政府機関に調査を委ねるとしている。

Bloomberg社は、今回の報告書は両社の米国市場での業務展開にとってより大きな障害になると分析している。

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華為は公式サイトで声明を発表し、情報特別委が主導し、11 カ月をかけて完成させたこの報告書が、明確な情報や証拠を提出して同委の懸念を実証できていないと述べた。また同報告書は伝聞が多く、その本質や目的は中国企業の米国市場への参入を阻止し、競争から阻害することであるとの見方を示した。

中興は、同社は米国市場にとっていかなる安全保障上の脅威にもなっていないとし、米国の関連機関や関係者が今すぐやらなければならないことは、視野を広げて電気通信産業の供給チェーン全体をしっかり眺めることだと指摘した。

中国外交部の洪磊報道官は、定例記者会見で、「中国の電気通信企業は市場経済の原則に基づきグローバル経営を行っており、その米国における投資には中米経済貿易関係の互恵・Win-Win という性質が体現されている。米国議会が事実を尊重し、偏見を捨て、中米経済協力に役立つ行動をとる事を望む」と述べた。

人民日報は、「事実の裏付けを欠いたよりどころのない懸念を抱きながら、相手側に対し事実によって無罪を証明するよう求める。こんなロジックはまるでかつての"推定有罪"のように乱暴なものだと批判している。

同委の賢明とはいえない政治的な動きは、中米の経済貿易協力の健全な発展を阻害するものだ。事実に背き、偏見に満ちたこの報告書は、貿易保護主義のたちの悪い拡大であり、疑心暗鬼になっての空騒ぎであると同時に、米国という「法治至上国家」が推定有罪という醜態を演じていることを暴露するものでもある。

今回非難を受けた両社は中国の法律や国際的に通行するルールに基づいて合法的に経営を行い、グローバル市場で立派な業績を上げ、多くの国で受け入れられている。それがどうして米国では安全保障上の脅威になるのだろうか。

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米国は数多くの中国製品に対し、反ダンピング調査や反補助金調査を行い、中国も対抗措置を取っている。

米国は9月17日に、中国が輸出する自動車・自動車部品に大規模な補助金を支給しているとしてWTOに提訴、中国も同日、米国が中国の輸出品に対し不当な相殺関税をかけているとしてWTOに提訴し、米中両国間の貿易摩擦が激化している。

Obama大統領は9月28日、「国の安全保障に関わる」として、中国系企業Ralls Corp. によるオレゴン州の米海軍施設近くの風力発電企業4社の買収と所有を禁止し、本年取得した所有権を放棄することを求めた。

2012/10/4 オバマ大統領、米国内での中国企業の風力発電買収を阻止 

米紙は、これは、Obama大統領が北京に対して弱腰だというRomney大統領候補を含む共和党の批判に対して、最近頻繁に打ち出している強硬ラインの一つであるとしている。

Kissinger元国務長官は10月3日、Obama大統領と共和党のRomney氏が遊説などで争って中国カードを切っていることを批判し、「中国を攻撃する発言は最悪だ」と述べた。

「Obama大統領とRomney氏が選挙キャンペーンで、『中国は貿易分野で米国をだましている』と言っているが、これは最悪の発言だ」と批判した。

また、Romney氏が、「大統領に就任すれば中国を為替操作国に認定する」と述べていることに対し、「ほとんどすべての中国問題専門家が異議を抱いている。中国との貿易摩擦を戦争にしようとするのは、中国を知らない理論家だけだ」と指摘した。

米紙は、中国でテレコム関連の製品を売っている米国企業が報復されかねないと懸念している。
但し、中国はハイテク部品を欧米や日本の企業に頼っており、これを切ることはないだろうとの見方もある。(他の分野での報復はありうる)

 

 


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