台湾高雄市の爆発事故で、死者は28人、負傷者287人となった。消防士2人が依然行方不明となっている。
付記 不明の2人は発見されず、家族の同意の下、8月5日に死亡証明書が発行された。 死者30人となった。
既報 2014/8/1 速報 台湾・高雄で大規模爆発 原因はプロピレンか?
6キロの範囲にわたって爆発が起き、道路が陥没するなど大きな被害が出ている。
雨で爆発現場に水がたまり、川のようになっている。
事故の原因については既報の通り、李長栄化学向けのプロピレンのパイプとの見方が強い。
高雄市環境局によると、ガス爆発が起こった地点には3本のパイプラインが走っている。
① 中国石油(CPC)のパイプライン
② 李長栄のパイプライン
③ 華運倉儲(China General Terminal & Distribution
Corp)から李長栄へのパイプライン
華運倉儲は台湾のポリエチレンメーカーのUSI Group(台湾聚合化学)の連結子会社で、エチレン、プロピレン、ブタジエン、スチレンなどの石油化学原料の倉庫保管及び輸送を手掛けている。
このうち、①と②は爆発当時は使用されていない。
高雄市政府は「7月31日夜に華運倉儲が李長栄向けにプロピレンの加圧処理と輸送を行ったが、プロピレンが李長栄化学にうまくパイプライン輸送されなかった。プロピレンが漏出して爆発した恐れがあり、李長栄化学の過失ではないかという見方が強い」としている。
31日夜8時から9時の間に1時間当たり最高で4トンのガスがパイプラインを通っていたことが分かっており、毎時これだけのガスが漏出していたことになる。
爆発の3時間前にガス漏れの通報を受けていながら、速やかにガス漏れを止められなかった高雄市当局を批判する声が出ている。
林園区の林園 No.3, No.4と前鎮區の高雄 No.5ナフサクラッカー のエチレンやプロピレンなどは、大社区や仁武区の誘導品プラントに市街地に埋設されたパイプラインで送られている。多くの人が暮らしている地下を多数のパイプラインが走っている。(設置された時点では、住民は少なかったという。)
1997年にCPCの作業チームが道路工事のため一部区間のガス管を掘り出そうとした際に爆発が起き、5人が死亡、約20人が負傷した事故が起きている。
事故を受け、地下に通された工業用パイプラインの移設を求める声が住民から上がっている。
8月2日に現場を訪れた馬英九総統は原因の究明を急ぐとしたうえで、街中のパイプラインの監視を強化するとの考えを示した。「原因の救命に全力で取り組み同様の事故が起きないよう対策を進める」と述べた。
大社区や仁武区の誘導品プラント(既報に明細記載)は長期間停止せざるを得ないと思われる。
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江蘇省昆山市の金属工場で8月2日朝、大規模な爆発が発生し、71人が死亡し、186人が負傷した。
爆発の際、264人が工場内にいて、爆発現場で45人が死亡、残りは病院に運ばれた後、亡くなった。
工場は昆山市経済技術開発区にある「中栄金属製品有限公司」で、車のアルミホイールを研磨する作業場で、可燃性の粉じんに引火して「粉じん爆発」が起きた可能性が高いとみられている。
同社は1998年設立の台湾系企業で、米のGeneral Motors指定のサプライヤー。
事態を重くみた習近平指導部は陣頭指揮のため、王勇・国務委員を現地に派遣した。当局は同社の責任者2人を拘束して調査を開始した。
付記
8月2日の記者会見で現地政府は、粉じんが飛散したエリアでの引火が原因との見方を示し、安全基準の違反があったと指摘した。
香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストによると、現地の当局者が粉じんが爆発を引き起こすリスクを繰り返し警告していたが、同社はこの警告を無視していたという。
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可燃性の固体微粒子が空気中に浮遊し、そこに発火源が存在した場合、ある条件下で爆発燃焼する。これを粉塵爆発という。
粉塵爆発は、
1)酸素
2)爆発下限濃度以上の粉塵
3)最小着火エネルギー
の3条件がすべて揃った瞬間に発生する。爆発の恐れがある粉塵には、以下のものが上げられる。
・マグネシウム ・アルミニウム ・アルミ軽合金 ・鉄粉 ・エポキシ樹脂 ・コーンスターチ ・チタン
・微粉炭 その他可燃性粉塵
2007年3月20日、信越化学の直江津工場のメチルセルロース製造プラントで爆発があり、3人がやけどなどで重体、14人が重軽傷を負った。
2007/3/22 「信越化学 爆発事故」
同社では原因を粉塵爆発と推定し、粉塵爆発の対策として以下を実施した。
(1) 窒素置換
(2) 静電気除去対策
(3) 粉塵堆積の防止
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日本精工、シマノ、マキタ、豊田自動織機など、200社以上の日本企業が進出している。
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