住友金属鉱山は11月5日、二次電池用正極材料であるニッケル酸リチウムの生産拠点を、福島県双葉郡楢葉町に設置すると発表した。
同社は現在、ニッケル酸リチウムの生産を新居浜市の磯浦工場で行っているが、増強の余地が十分でないこと、複数拠点での生産により供給リスクの分散を図れることなどから、新たに福島県双葉郡楢葉町にある日本化学産業福島第二工場を借用し、生産設備を設置することとした。
進出に当たり、100%の子会社の住鉱エナジーマテリアルを設立した。
また、日本化学産業は二次電池用正極材料の生産技術を有することから、今回のニッケル酸リチウムの増産に当たり、同社の福島第一工場にニッケル酸リチウムの製造工程の一部を委託する。
住友金属鉱山は、パナソニックと共同で二次電池用正極材料の一つである高性能のニッケル酸リチウムの開発に成功し、パナソニックに提供してきた。
このニッケル酸リチウムを使用したパナソニック製の円筒型リチウムイオン二次電池は、現行では世界最高水準のエネルギー密度を有しており、米国の電気自動車メーカーのTesla Mortorsが製造・販売している Model S に採用されている。
パナソニックは10月1日、リチウムイオン電池セルを生産する新会社 Panasonic Energy Corporation of North America をネバダ州スパークスに設立した。
新会社は、同社とTesla Mortorsが連携して設置を検討してきた大規模電池工場ギガファクトリー内で、リチウムイオン電池の生産を行う。
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住友金属鉱山は、今後のニッケル酸リチウムの需要拡大に対応するために、2013年9月に新居浜市の磯浦工場でニッケル酸リチウムの生産設備の増強を行うと発表した。
設備投資額は、約48億円で、生産能力を月産 300 トンから850 トンに増やすもので、2014年6月に完成させた。
同社は本年10月20日、総額約150億円を投じ、能力を月産850トンから1,850トンに増やすと発表した。2015年12月完成を予定している。
福島県双葉郡楢葉町の新工場はこの一部で、総額150億円のうち、約40億円を投じる。
住友金属鉱山は、ニッケル原料鉱石の製錬から加工までを一貫して手掛けている強みを活かし、二次電池用正極材料のさらなる高性能化と安定供給に取り組むとしている。
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ニッケル酸リチウムの生産には、大きく分けて3つの工程がある。
第1は硫酸ニッケルの溶液とコバルトなどを調合し中和して直径十数ミクロンの水酸化物の粒子に変える工程。
第2はその水酸化物をリチウムと混ぜて焼成する工程。
第3は表面処理を施して製品に仕上げる工程である。
住友金属鉱山は ニッケル原料鉱石の製錬から加工までを一貫して手掛けている。
立地 |
フィリピン | 新居浜 | 新居浜 播磨 |
新居浜 楢葉町 |
|
会社 | Nickel Asia | Coral Bay Nickel |
住友金属鉱山 |
||
Taganito HPAL Nickel Corp. | |||||
製品 | ニッケル鉱石 | ニッケル・コバルト混合硫化物 | 電気ニッケル | 硫酸ニッケル | ニッケル酸リチウム |
電気コバルト |
同社は世界有数のニッケル資源国フィリピンの最大規模のニッケル鉱山会社
Nickel Asia に出資するとともに、同社が54%、Nickel Asia が10% 出資するCoral
Bay Nickel では2005年4月から、これまで回収が難しいとされてきた低品位鉱石(Ni=1.26%)を原料としてHPAL法(高圧硫酸浸出法)によりニッケル・コバルト混合硫化物
(Ni=52.7%,Co=3.9%)を生産している。
第一期プラントではニッケル量で年約10,000トン、コバルト量で約700トンのニッケル・コバルト混合硫化物
を生産し、第2工場完成後はニッケル量で22,000トンとなった。
さらに、Taganito HPAL Nickel Corp.(住友金属鉱山 62.5%、Nickel Asia 22.5%、三井物産 15.0%)を設立し、HPAL法でニッケル・コバルト混合硫化物(ニッケル品位約57%)を年間3万トン(ニッケル量換算)を生産している。
HPAL法では大量の硫酸を消費するが、住友金属鉱山東予工場での銅の生産で副生する硫酸を供給する。
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住友金属鉱山は、このニッケル・コバルト混合硫化物を新居浜製錬所に送り、電気ニッケル、コバルトを生産、更に硫酸ニッケルとしている。
同社の高純度硫酸ニッケル「ファインエメラルド」は、電気めっきや無電解めっきをはじめ、すべてのニッケルめっき用に最適であり、めっき以外にもアルミ発色用、触媒用、電池材料用等幅広い用途に使用されている。
同社は新居浜のニッケル工場で硫酸ニッケルを年25,000トンを生産しているが、2014年1月からは更に播磨事業所で年 20,000トンの生産を開始した。
今回のニッケル酸リチウムの増産に伴い、播磨事業所の増産を決定した。
2016年1月完成を目途に能力を45,000トンとする。新居浜と合わせた能力は70,000トンとなる。
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二次電池用正極材料には、マンガン酸リチウム(LMO)、ニッケル酸リチウム系(LNCA)、ニッケル・コバルト・マンガン酸リチウム系(三元系:LNCM)、リン酸鉄リチウム(LFP)などがあるが、既報のとおり、三元系の三菱化学、LFPの三井造船・戸田工業が撤退を決めた。
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撤退企業は、安価な競合製品が増え、エコカーの普及も進まなかったことを理由としている。
住友金属鉱山の場合、コスト競争力の面でも、販売面でも大きな強みを持つ。
これまで利用価値のなかった低品位鉱石を使い、また副生硫酸を使用するなどして、原料をすべて 元から自社で生産しており、コスト競争力は大きいと思われる。
販売面でも共同開発の相手のパナソニックに供給、そのパナソニックは今後電気自動車で大きく成長すると見られているTesla Mortorsと提携し、電池を供給している。
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