アスベスト訴訟でメーカーに初の賠償命令

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建設資材に含まれるアスベスト(石綿)により中皮腫や肺がんになった京都府内の元建設作業員と遺族の27人が建材メーカー32社と国に約10億円の賠償を請求した裁判で、京都地裁は1月29日、国に加えて、建材メーカーに初めて賠償を命じる判決を言い渡した。被害者26名のうち、すでに16名が死亡(提訴後、11名が死亡)している。

裁判官は、国及び建材企業の責任を認め、国に対しては原告15人に総額1億418万円、建材企業9社に対しては原告23人に総額1億1245万円の支払いを命じる原告全面勝訴判決を言い渡した。

同様の集団訴訟は全国6地裁で起こされ、判決は5件目で、国の違法性を認めたのは2012年の東京、2014年の福岡、本年1月22日の大阪地裁判決に続いて4件目。
メーカーの賠償責任はこれまでは認めておらず、今回が初となる。

2016/1/27 建設アスベスト訴訟で国が3度目の敗訴

国については、
・吹付作業者に対する規制については1972年10月1日以降、
・建設屋内での石綿切断等作業については1974年1月1日以降、
・屋外での石綿切断等作業については2002年1月1日以降、
国が、アスベスト建材について防じんマスクの着用や集じん機つき電動工具の使用、さらには警告表示を義務づけることの規制を怠ったことの違法性を認めた。

本判決は、専ら屋外作業に従事していた屋根工に対する関係でも国の責任を認めた。

いわゆる「一人親方」について、労働安全衛生法の保護対象に含まれないとして救済を否定したものの、「(一人親方を)保護する法律を定めなかった立法府の責任を問うことで解決されるべき問題」と付言した。


メーカーについては、
主要なアスベスト建材企業であるエーアンドエーマテリアルやニチアス、ノザワなど9社について、被害者23名との関係で共同不法行為責任を肯定し、同種訴訟で初めて企業の賠償責任を認めた。国の賠償の対象とされてこなかった「一人親方」ら個人事業主も含まれる。

建材の種別により1972年と74年、2002年に石綿の危険性をそれぞれ表示する義務が生じたのに販売を続けたと認定した。
そのうえで、「おおむね10%以上のシェアを有するメーカーの建材であれば、労働者が年1回程度はその建材を使用する現場で従事した確率が高く、被害を与えた蓋然性が高い」と判断し、その基準を満たす9社に責任があると結論付けた。

当時のシェアが約10%以上の9社については、販売の時期や地域が各原告らの働いた時期や場所と合うといった条件を満たせば被害との因果関係を推定できるとし、各社はともに原告の被害をつぐなう責任があると判断、各社の「どの建材が被害原因か明らかでない」との主張を退けた。

原告27人のうち20人への賠償を命じられたニチアスは「主張が認められず遺憾」とのコメントを出し、地裁によると、ニチアスを含むメーカー4社が即日控訴した

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