ソフトバンクグループは10月14日、グローバルにテクノロジー分野へ出資することを目的とした私募ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」(仮称)の設立を決定したと発表した。
ソフトバンクグループは、今後5年間で少なくとも 250億米ドルを本ファンドに出資する。
また、サウジアラビアの公的投資基金(Public Investment Fund :PIF) との間で、主要な資金パートナーとして本ファンドへの出資を検討することについて、覚書を交わした。
さらに、本ファンドへの出資を目的に、複数のグローバルな大手投資家たちと協議中で、1,000億米ドルとなる可能性がある。
ソフトバンクグループ 5年間で少なくとも 250億米ドル PIF 5年間で 最大 450億米ドル 複数の大手投資家 協議中 総額 1,000億米ドルとなる可能性
資金規模が10兆円になれば、主に非上場株式に投資するファンドとしては、世界最大級になる。
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サウジアラビアの公的投資基金 (PIF) は1971年の設立以来、サウジ財務省が管轄し 、石油精製、肥料、石油化学、電力などの大事なプロジェクトのファイナンスを担ってきた。
2015年3月からは、サウジ副皇太子Mohammad bin Salman Al Saud が率いるCouncil of Economic and Development Affairs (CEDA) へ移管された。現在、副皇太子が PIFのチェアマンを務める。
PIFは2015年7月に韓国のPosco Engineering & Construction の株式の38%を取得、2016年6月には米配車サービス大手Uber Technologies Inc.に35億ドルの出資を行い、発行済み株式の約5%を取得している。
2016年3月に、Saudi Aramcoの所有権が政府から PIFに移管された。
CEDA は、2030年までの経済改革計画「ビジョン2030」を作成、サウジ政府は2016年4月25日、国王主宰の閣議でこれを承認した。
石油依存型経済から脱却し、投資収益に基づく国家を建設していく。
公的投資基金(PIF)の資産を6,000億リヤールから7兆リヤール(約 2兆ドル)に増やす。
目標を達成するための手段として、
・ 国営石油会社Saudi Aramcoの5%未満の新規株式公開(IPO)、
・ 民営化による透明性の向上と汚職抑制、
・ 軍事産業の育成による国内調達の軍装備品支出の割合を50%まで拡大、
・ 外国人による長期的な労働・滞在を可能するグリーンカード制度の5年以内の導入
などがあわせて発表された。
Saudi Aramco の5%分の株式公開は2017年までに行われるが、これにより PIF は資産規模が2兆ドルの世界最大のファンドとなる。
米国で9月28日、米同時テロに関与した外国政府への損害賠償請求を可能にする法案「テロ支援者制裁法(Justice Against Sponsors of Terrorism Act (JASTA)」がオバマ大統領の拒否権を覆して成立した。
サウジアラビアは、全面的に同時多発テロへの関与を否定しており、この法案に激しく反発してきた。サウジのジュベイル外相は、裁判で多額の賠償を命じられて在米資産が接収されるのを防ぐためには米国債その他のドル建て資産を売却せざるを得なくなる、と米議会に警告、法案が成立すれば、サウジは最大で7500億ドルのドル建て資産を手放すことを余儀なくされるとしていた。
2016/10/1 米同時テロ遺族のサウジ提訴法案、大統領拒否権を覆し成立
この結果、現状のままでは PIFとして米国に投資するのは難しくなる。
PIFとしては、ソフトバンク主導のファンドに参加し、これを通して米国企業に投資するのは一つの手である。
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「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」は、ソフトバンクのテクノロジー業界における投資運用能力、高度な業務運営知識及び幅広い経験を活用して、投資を実行する。
運用会社は同社の英国子会社となる予定。
「IoT」や人工知能 (AI) などの分野で高い技術力を持つ新興企業などへの投資を想定している。
ソフトバンクは9月に、英半導体開発大手の ARM Holdings plc を、日本企業の海外買収案件としては過去最大の240億英ポンド(約3兆3千億円)で子会社化したばかり。
孫正義社長は、「今後10年でテクノロジー分野において最大級のプレーヤーになる。出資先のテクノロジー企業の発展に寄与することで、情報革命をさらに加速させていく」と述べた。
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