オプジーボと競合する米メルクの癌免疫薬承認へ

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厚労省の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会は11月24日、米Merck(海外子会社の社名はMSD)が開発中のがん免疫薬「キイトルーダ」を肺癌の大部分を占める非小細胞肺癌向けに承認して問題ないと判断した。12月にも厚労省が正式承認する見通し。

キイトルーダはオプジーボと作用が同じで、対象疾患も競合する。

オプジーボが使えるのは現時点で、皮膚癌の一種である悪性黒色腫と、非小細胞肺癌、腎細胞癌の3種類。
キイトルーダは本年9月に悪性黒色腫への使用が承認され、今回の非小細胞肺癌で2種類目となる。

このほか、下記のヤーボイが根治切除不能な悪性黒色腫で承認を受けている。

オプジーボによる治療は、放射線や手術による治療が難しく、かつ、抗癌剤による化学療法の経験のある患者が対象になる。
これに対し、キイトルーダは肺癌患者に対して最初の抗癌剤として使える点が利点となる。

キイトルーダ の薬価は、今回薬価が50%引き下げられたオプジーボの薬価を基準に決められる。同水準になると思われる。
(キイトルーダは9月に悪性黒色腫への使用が承認されたが、
非小細胞肺がんへの拡大を視野に入れ、オプジーボの新しい薬価が決まるのを待つため、薬価収載申請を見送っていた。)

2016/11/17 オプジーボ 50%値下げ 

オプジーボの類似薬となる癌免疫薬は他に、中外製薬、AstraZeneca、独 Merck/米Pfizer連合がそれぞれ 国内で開発している。
来年以降、日本市場に登場する可能性があり、癌免疫薬を巡る競争はさらに激しくなりそうだ。

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これらの癌免疫薬は免疫チェックポイント阻害薬とよばれる。
(他に、自分のリンパ球を取り出し培養したうえで、活性化したリンパ球だけ、特にナチュラル・キラー細胞を戻すNK細胞投与がある。)

癌細胞には、免疫細胞攻撃を防止する「免疫チェックポイント」という仕組みがある。

1) 癌細胞は、免疫細胞からの攻撃を逃れるために、PD-L1 というタンパク質を出し、これが免疫細胞のPD-1 に結合すると、免疫細胞の働きが抑制される。

2) 免疫細胞は、抗原提示細胞である樹状細胞から癌抗原の提示を受けると働きが活発になり、それを目印に癌細胞を攻撃するが、抗原提示を受ける際、免疫細胞のCTLA-4 に樹状細胞のB7というタンパク質が結合すると、逆に免疫細胞の働きが抑制され、癌細胞を攻撃できなくなる。


これらの「免疫チェックポイント」を阻害して、免疫細胞に癌細胞を攻撃させるのが、免疫チェックポイント阻害薬である。

機能 承認 開発中
抗PD-1抗体 免疫細胞のPD-1に結合し、PD-1と癌細胞のPD-L1の結合を防止 オプジーボ(小野薬品/BMS)
キイトルーダ(米Merck)
抗PD-L1抗体 癌細胞のPD-L1に結合し、PD-1とPD-L1の結合を防止 Roche/中外製薬
AstraZeneca
独Merck
/Pfyzer
抗CTLA-4抗体 免疫細胞のCTLA-4に結合し、CTLA-4と樹状細胞のB7の結合を防止 ヤーボイ(BMS/小野薬品)
AstraZeneca

                                   BMS=Bristol-Myers Squibb


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