Ronald Trump は2016年10月下旬に、大統領に選ばれた場合の公約 "Donald Trump's Contract With The American Voter" を発表している。
「アメリカを再び偉大にする」ための100日間のアクションプランである。
2016/11/11 トランプの公約
Trump大統領は、1月20日の就任時に早速、エネルギー計画、America First の外交、雇用と成長、軍の再建、治安、通商政策の6項目の政策方針を発表した。
また、同日、オバマケアの撤廃に向け、各省庁に現行制度による経済的負担を軽減するよう指示 する最初の大統領令を発表した。
2017年1月21日 トランプ新政権の最初の政策方針
その後、次々に大統領令(Executive Orders、Presidential Memoranda)を発表し、コメントなどを含めると、1月中の11日間で大半を実行した。当然、大統領に決まってから準備を進めたと思われるが、まさかと思ったことまで実行したのには驚く。
もっとも、すべてが実行できる訳ではなく、議会で法案として成立したり、議会が予算を認めたりする必要があるものもあり、また裁判所が執行を認めないものも出る可能性がある。
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「アメリカを再び偉大にする」ための100日間のアクションプラン と、大統領の対応は次の通り。
1.大統領就任の1日目に、Washington, DCの不正と特定利益の共謀をクリーンアップするため次ぎの6項目を実施する。
1) 上下両院議員の再任を制限する憲法改正を提案 未実施
2) 連邦職員削減のための雇用凍結(military, public safety, and public healthは除く)
Presidential Memorandum on January 23, 2017
Presidential Memorandum Regarding the Hiring Freeze
3) 連邦規則1つの新設の場合には既存の2つの規則をなくす。
Executive Order on January 30, 2017
Presidential Executive Order on Reducing Regulation and Controlling Regulatory Costs
4) White Houseと議会の職員が退職後5年間はロビイストになることを禁止
5) White House職員が外国政府のロビイストになることを永久禁止
4) 5)については採用時に誓約書を提出させる。
Executive Order on January 28, 2017
Executive Order: ETHICS COMMITMENTS BY EXECUTIVE BRANCH APPOINTEES
6) 外国のロビイストが米国の選挙のために資金を集めることを完全禁止 未実施
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2.大統領就任の1日目に、米国の労働者保護のため、7つのアクションを行う。
就任直後のTwitter
"We will follow two simple rules: BUY AMERICAN & HIRE AMERICAN! "
"We will bring back our jobs. We will bring back our borders. We will bring back our wealth - and we will bring back our dreams! "
1) 米・加・メキシコの北米自由貿易協定(NAFTA) の再交渉又は撤退の意思を発表
1月22日 大統領、メキシコ、カナダとそれぞれ開く首脳会談で北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を始めると表明。
2) TPPからの撤退を宣言
Presidential Memorandum on January 23, 2017
Presidential Memorandum Regarding Withdrawal of the United States from the Trans-Pacific Partnership Negotiations and Agreement・TPPから永久に離脱する。(再交渉の可能性も明確に否定)
・米国の産業を振興し、労働者を保護し、賃金を上昇させる 2国間貿易交渉を始める。TPPの発効には、2013年の参加12カ国の名目GDPの85%以上の6か国の批准が必要。
15%以上の日米両国の批准は必須なため、米国が離脱することで、TPP発効は不可能に。米通商代表部(USTR)は1月30日、TPPからの離脱を参加各国に書簡で正式に伝達した。
3) 財務長官に命じ、中国を為替操作国に指定
これ自体は未実施だが、大統領は何度も「中国の為替操作」を非難している。
1月31日の製薬業界との会談では、中国と日本をやり玉に挙げた。「他国は通貨切り下げに依存している。中国がなにをやっているか、日本が何年も何をやってきたか。彼らは為替市場に介入し、通貨の切り下げをしているが、我々はぼーっとしているだけだ」
4) 商務長官と通商代表に命じ、米国の労働者に不当な影響を与える全ての外国の貿易阻害行為を明らかにし、それらを直ちにやめさせるよう、あらゆる手段を使う。
未実施だが、上記の「為替操作」非難が今後、影響を与える可能性あり。
大統領は、今後推進する二国間FTAに「為替条項」を導入することを示唆している。
なお、Ford MotorのCEOは1月24日の大統領との会談で、「すべての貿易障壁の根源は為替操作にあると繰り返し伝え」、ドル高の是正を要請した。
5) シェール、原油、天然ガス、クリーンな石炭など50兆ドルものエネルギーの開発への制限を取り除く。
Executive Order on January 24, 2017 インフラ計画への制限の排除
Executive Order Expediting Environmental Reviews and Approvals For High Priority Infrastructure Projects
Presidential Memorandum on January 24, 2017 製造業への制限の排除
Presidential Memorandum Streamlining Permitting and Reducing Regulatory Burdens for Domestic Manufacturin
6) Obama-Clinton が停めた Keystone Pipelineなどのエネルギー関係のインフラ計画を進める。
オバマ大統領が却下したKeystone XL pipelineの建設指示
アメリカ陸軍省が2016年12月4日に認可しないと発表した Dakota Access pipelineの建設指示Presidential Memorandum on January 24, 2017
Presidential Memorandum Regarding Construction of the Keystone XL Pipeline
Presidential Memorandum on January 24, 2017
Presidential Memorandum Regarding Construction of the Dakota Access Pipeline
これらのパイプライン計画には米国の鉄の使用(" BUY AMERICAN & HIRE AMERICAN! "への動き)Presidential Memorandum on January 24, 2017
Presidential Memorandum Regarding Construction of American Pipeline
Twitter:
"Signing orders to move forward with the construction of the Keystone XL and Dakota Access pipelines in the Oval Office."2017/1/26 Trump大統領、原油パイプライン建設へ大統領令
7) 国連の気候変動計画への数十億ドルの支払を取り止め、その資金を米国の水と環境のインフラの補強に使用する。 未実施
(続く)
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