本の紹介 「日本人ビジネスマン、アフリカで蚊帳を売る: なぜ、日本企業の防虫蚊帳がケニアでトップシェアをとれたのか? 」
東洋経済新報社 (2015/7/17) 右上の本の紹介参照
住友化学のOlyset Net はピレスロイド系殺虫剤を練り込んだポリエチレンで作った長期残効型防虫蚊帳で、マラリア対策用にWHOからも使用を推奨されている。
本書は第1部でオリセットの開発とWHOなどの国際機関の援助資金による販売、第2部でレーマンショックによる援助資金減少を受けてのアフリカでの小売事業への進出を扱っている。後半が本書の中心である。
第1部 オリセットの誕生と躍進
第1章 オリセット誕生前夜
第2章 動き始めたオリセット・ビジネス
第2部 小売への参入ー消費者マーケティングへの挑戦
第3章 競争と変革への備え
第4章 新たな事業を「始める」
第5章 BOP市場へのマーケティング
(BOPとは「Bottom Of Pyramid」の略で、経済的に社会の底辺の貧困層)
筆者は外部コンサルタントだが、実質的にヘッドとなって小売事業を推進した。
日本でも小売をしていない住友化学が、アフリカで小売事業を行う。考えられないことがどうして出来たのか。
本書は、筆者以外は全て実名で、ストーリー仕立てで解説している。
ーーー
以下の話も紹介されている。
2005年1月のダボス会議で米倉弘昌社長(当時)がこの蚊帳を紹介した。
タンザニア大統領が各国にODAの増額を訴えたが、反応はあまりなかった。
ムカベ大統領やBill Gatesなどが壇上に並び、国連の貧困対策運動を率いるJeffrey Sachs 教授が話している最中に、女優のSharon Stoneが客席から突如立ち上がり、「私はシャロン・ストーンと申します。マラリアを運ぶ蚊からアフリカ人の子供を保護するために、ムカパ大統領に1万ドル寄付します。 私に賛同する人、立ってください」と叫んだ。
会場は騒然となり、5分間で100万ドルの寄付が集まった。英国のブレア首相は後日、8500万ドルを寄付することを発表した。
2007年からは JBIC(国際協力銀行)の資金提供を受け、A to Z 社と合弁で Vector Health Internationalを設立、年間670万張の生産を始めた。
2008年に当時のブッシュ大統領夫妻がA to Z社を訪問した。工場見学後にBushは、「なぜ、このような工場がアメリカの企業ではなく日本の企業に、先に成し遂げられているのか? 本音ではうらやましく感じる」と述べた。
2013/6/8 住友化学のOlyset Net
参考 2014/12/20 WHOの"World Malaria Report 2014"
2015/8/22 「世界モスキート・デー」
2017/7/18 BASF、マラリア対策の長期残効型の防虫処理蚊帳を開発
付記
外資系企業から途中入社し、この事業部門のトップとなった水野達男氏は現在 NPOのMalaria No More Japan の専務理事をしているが、自身の経験から
「人生の折り返し地点で、僕は少しだけ世界を変えたいと思った。――第2の人生 マラリアに挑む 」(英治出版 2016/1/22) を書いている。
コメントする