武田薬品工業とノイルイミューン・バイオテック(Noile-Immune Biotech)は9月4日、次世代型キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T)療法に関する提携契約を締結したと発表した。
武田薬品は100%子会社であるMillennium Pharmaceuticals, Inc.を通じ、ノイルイミューンと契約を締結した。
CAR-T細胞はがん細胞表面抗原を認識する一本鎖抗体とT細胞の活性化を誘導する分子の細胞内シグナル伝達領域を融合させたキメラ抗原受容体(Chimeric Antigen Receptor: CAR)をT細胞に遺伝子導入し作成する。CAR-T細胞は、がん細胞を特異的に認識し活性化・増殖してがん細胞を殺傷する。
CAR-T療法については下記の Kite PharmaとNovartisの記事を参照
2017/9/1 米Gilead Sciences、がん治療のバイオテク企業 Kite Pharma を119億ドルで買収
この次世代型CAR-T細胞療法技術は、山口大学玉田耕治教授により開発され、ノイルイミューンが独占的に権利を有する基盤技術で、サイトカイン、ケモカイン等を産生する機構を有しており、がん治療の効果を高めるため固形がん組織の微小環境に影響をあたえる、または変化させることが期待され ている。
本契約により、武田薬品とノイルイミューンは、幅広い種類のがんの治療に向け、この技術を活用した新たなCAR-T細胞免疫療法の研究開発を行う 。
武田薬品とノイルイミューンは、CAR-T細胞免疫療法の研究開発を加速するための共同研究を実施 する。
ノイルイミューンの研究チームは、最先端の研究施設である武田の湘南研究所で、武田の研究員とともに活動する。武田薬品は、本共同研究の実施に必要なリソースの提供に加え、ノイルイミューンへの技術アクセス料の支払い、株式投資を行 う。
武田薬品は、本提携により共同研究される複数のパイプラインに加え、ノイルイミューンの一部パイプラインの開発および販売権を独占的に獲得するオプション権を有 する。
武田薬品では、「当社の重点領域の一つであるがん領域における画期的な治療薬を創出するにあたり、次世代型CAR-T細胞療法技術は大きな可能性を有していると考えてい る」としている。
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ノイルイミューン・バイオテックは、山口大学医学部免疫学教室の玉田耕治博士が開発した次世代CAR-T細胞を中心としたがん免疫療法に特化して日本発の画期的ながん免疫治療薬の開発を目指す国立がん研究センターおよび山口大学発ベンチャーで、玉田耕治博士は同社の創業者であり 、取締役CSMOでもある。
Noileの 社名は次の考えから出来た。"No illness" 「がんという病を根絶させたい」
"No immunity, No life" 「免疫なくして生命は成り立たず」
固形がんに対するノイルイミューン・バイオテックのCAR-T開発戦略 は次の通り。
- 固形がんにおいて有効性を発揮するCAR-Tプラットフォームの確立
- がん組織により多く集積し、高い生存・増殖能と持続性を有する次世代型のCAR-T細胞
- 自殺遺伝子導入によるCAR-T細胞のシャットダウンシステム(安全性の担保)
主作用が暴走すると重篤なサイトカイン放出症候群を引き起こすため、これを抑える「安全装置」の開発が成功のカギとされている。 - 2015年10月1日 山口大学と独占実施許諾契約を締結
2. 製薬企業とのアライアンスによる新規CAR-T細胞療法の共同開発
- 製薬企業の保有する抗体と細胞機能調節型CAR-Tプラットフォームを有効活用した固形がんへの治療戦略の探索
3. CAR-T細胞療法の標的抗原の探索
4. CAR-T細胞製剤の安定供給と低コスト化を目指した製法開発
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